第4話 神秘の池
「本当にありがとうございました」
行儀のよい
「母上も起き上がれるようになったので、来週から学校に通うことにします」
「よっしゃ。俺待っているからな‼」
「お礼と言ってはなんですが、今日は泊まっていってください。大したおもてなしはできせんが、明日、神秘の池をご案内します」
「やったー! なぁいいだろ? 月鈴。父に言っとくから」
「本当? じゃあお言葉に甘えようかな」
夜は、一つの部屋に布団を敷いて寝ることになった。
***
霧がかかった翌朝、森の奥深く。月鈴は起き、朝餉をとったあと、
「水の色が青い池ね」
池の周辺は手つかず自然のままだ。月鈴と
「水がキレイね。飲めるのかしら」
「はい。ボクの家もこの水を引いているのです。美味しいですよ。この水を飲んで母は元気になったと思っています」
「これすごく美味しい! 天籟さま、この池きっと気に入ると思うわ。心配なのが虫とか飛んでいたら嫌いそう」
「やばっ!!! 月鈴! 陛下がここにくるのか?」
「そうよ。案内してあげてね。護衛も引き連れてきたからこの場所は把握できたし、迷わず来れそうね。よかった」
「
子涵の家の方から女人の声がした。
「姉上、お久しぶりでございます」
拱手して、喜んで家の方に走って行ったので、後から月鈴も家に向かった。
「ああ! かわいい子涵、いい子にしていた? 母のお見舞いにちょっと寄ったの。これ薬草、母に飲ませてあげてね」
「ありがとうございます。姉上はあの……自慢ばかりする鼻持ちならない諸侯の家に出入りしていましたよね。今、客人が――」
弟の話をさえぎるように美玉が堰を切ったようにしゃべり出した。
「そうよ! それ! 聞いてー。昨日はなんと、陛下が来たらしいのよ~。生きた伝説の美貌の皇帝、素敵だったぁ~って、知り合いの侍女に聞いた……。でもさぁ諸侯の娘の豊かな胸を見てデレデレしていたって話よ。……あれ? 月鈴じゃん!」
「
美玉は同じ学校の月鈴の一個上の先輩だ。
「月鈴、いや
「……どうして陛下がもう隠ノ領に滞在しているのでしょうか? それより今の話は何でしょう説明していただけますか? 美玉さん」
鷹より鋭い目で睨み、明らかに怒っている月鈴。
「え、えーとぉー……?」
沐辰と子涵が手を繋いで怯えた。
***
……陰謀うごめく後宮で独り闘っていた天籟さま。
あの下弦の月の日——。泣いているように見えた。そっと背中に触れ気がついたわたしの気持ち。
だけど、その想いを気のせいだと振り払い、自分は隠ノ領の自然を取り戻したい目的があったから気持ちに蓋をした。その後、何がなんだかよくわかんないけど天籟さまも同じ気持ちだった。
そうして妃になったけれどほとんど会えないし、結局、天籟さまの気持ちがわからなくなっちゃった。しかも、わたしの故郷で女遊び? もう信じられない‼
けれど夫でありながら国を統べる国民の天子だ。―—
『陛下のやさしさに甘んじることなく、相応しい人間になっていただきます』
娟々さんから毎日、五十項目以上ある正妃の心得を習っている。
『良妻賢母』
『婦服なり』
『男は陽であり、女は陰』
『御戯れに目を瞑る』
『常に穏やかに接する』等々……。
どれもできていないし、なのに
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