第2話【もう、出られない。】
年が明け、2022年が始まった。
しかし、美由はあまり出ては来なかった。
そのため、相変わらずAYAとオレでこの身体をまわしていた。
元々オレ達は対人関係をまわすのが苦手な人格者だったため、周りと口喧嘩になる事も多かった。
特に酷(ひど)かったのが、美由の母親との関係だった。
彼女の母親はあまり家事をせず、この身体に任せるばかりしていた。律が休みの日には、オレ達に昼食作りを全て任せ、自分は律と一緒にランチに出掛けていた。
「これって、『ネグレクト』じゃないの?」とAYAがよく言っていた。
そんなある日。とうとう我慢ができなくなり、オレたちは美由の母親に怒りをぶつけた。
1月10日(月)の成人の日だった。
昼前になっても昼食の用意をしようとしなかった美由の母親に対し、AYAが「昼食の用意くらいしてよ!」と言った。すると美由の母親が、「あなた(美由)がやってよ」と言ってきたので「はぁ!?」と言い返すと、「いつも家に居るんだから」と一言。
「こっちだって居たくて居る訳じゃないわよ!『家を出たい』って前から言ってるでしょ!!」と言い返すと、「じゃあ出て行けば!?」と言われた。
そこに美由の父親も入って来て一時は『生活保護を貰(もら)いながら一人暮らしをさせてもらえる』ところまで話が進んだのだが、オレが昼食を作り終えた頃には『やっぱり一人暮らしはダメだ。お前(美由)には一人暮らしはムリだ』という話になってしまっていた。
そういえば…高校卒業時もそうだった──。
「一人暮らしをさせてあげる」と言われてアヤと拓也はとても喜んでいたが、結局は『専門学校の寮での暮らし』という話だった。しかも拓也達の入学した年は県外からの入学者がとても多かったため、その人達が優先的に寮に入ってしまったため、彼達は家から学校に通う羽目になってしまった。そのため、結局一人暮らしは叶(かな)わなかった。
就職後も何度も「一人暮らしをしたい」と彼らは両親に申し出たが、「家から通いなさい」と言われ続け、結局結婚するまで一人暮らしは出来なかった。
昨年正人さんに寺田家を追い出された際もそのまま実家に帰ってきてしまったため、一人暮らしをした事は一度も無い。
入院が唯一家族から離れられる手段だろうが、この家でははっきりと「入院はさせられない」と言われている。
今回、はっきり分かった。
オレ達はこれから先、一人暮らしをする事は一生叶わないという事が──。
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