第3話【久し振りに出て来た。】

2021年11月14日(日)夜。

美由が、久し振りに表に出て来た。


「ごめんね。迷惑ばかりかけて…」そう言う彼女の目に、覇気(はき)は感じられなかった。



「まだ…家族の前にも出られそうにないのか?」

「うん。出来るなら、一生出たくないかな…」

「そうか──」

もう彼女は、家族にさえ会いたくはないようだった。



「また前みたいに、何年も深い眠りにつけたら良いのに…」

「そんな寂しい事言うなよ。ゆっくりで良いから、前みたいな明るい美由に戻ってくれよ」

「多分、もうムリ。離婚だって母親や律が居る限り平行線のままだし。一人暮らしだってムリそうだしね──」

「美由…」

「また寝るね。おやすみなさい」

そう言って、美由は再び身体の奥深くに閉じこもってしまった。



「美由ちゃん、出て来る気は無さそうね」

AYAが話しかけてきた。

「ああ、そうだな」

「やっぱり…。私達で何とかしないといけないのね──」



どうやら、当分の間AYAとオレで頑張っていくしかなさそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る