猫の手も借りたいってお願いされたから【家のタマ】を貸したら

るるかチャンネル

それじゃ家のタマちゃん(猫)貸してあげるよ

家の三軒隣が定食屋【清水しみず】をやっている。


子供の頃からやってるこの定食屋【清水】は、近所ではずっと評判が良くて、俺も子供の頃から月に数回は食べに行っていた。


子供の頃からこの定食屋で俺はいつも【カツ丼】を食べてる。


何回か子供ながらに背伸びして違うメニューに走ったこともあったけど、やっぱ何だかんだで【カツ丼】に戻っちゃうんだよな。


そんな定食屋【清水】の前を通ると同級生で幼馴染の【清水 愛】がお客さんに対して対応していた。


まだ高校2年生で両親からはお店の手伝いはしないで良いって言われてるのに、愛は自らお店の手伝いをしている。


それにしてもどうしちゃったんだ?


確かに地元ではそれなりに人気のお店で、夜のピーク時とかはそれなりに待つこともあるけど。


そんなレベルでは無い。お店の前に行列が出来ている。


何でこんな事になってるのか聞きたいが、どう考えても忙しそうな状態で聞けるはずも無く大人しく家に帰る。


夜22時…。定食屋【清水】は営業時間が20時45分までなので、流石にもう落ち着いただろうとLINEを送る。


「今日お店すごい事になってたけど何かあったの?」


ポロ〜ん。返事が返って来た。


「マジで疲れたよ」

「まだお店の片付けしてる」


何と閉店後1時間以上経過してるのに、まだ片付けをしていた。


「お疲れ様」

「それで何があったの?」


再びあの大行列の理由を聞いてみた。


ポロ〜ん。


「有名なYouTuberがウチの【カツ丼】が安くてうま過ぎるって紹介したみたい」


「そのYouTubeを見た人達が今日一斉に来た見たいよ」


なるほど、有名YouTuberが紹介した商品はバカ売れするってテレビで見た事があるけど、その現象が定食屋【清水】でも起きてるわけか!!


「しかも、他のお客様の邪魔になるから手元以外の撮影は禁止って言ってるのに」


「私にお店紹介してとか言ってくる客までいて…本当疲れた」


まぁ〜愛はかなり可愛いので、動画の再生数アップの為にも撮りたくなる気持ちは何か分かるな。


そんな感じで愚痴を聞いてると、愛の口からある一言が出た。


「本当猫の手も借りたい気分だよ」


忙しい時の定番の言葉。


ちなみに我が家では愛猫【タマちゃん】を飼っている。


「それなら家のタマちゃん貸してやろうか?」


そして、この時ノリで言ったこの言葉で後々大変な事になるとは、この時は全く予想も出来なかった。


「マジで!!タマちゃん貸してくれるの?」


あれ?ノリで言っただけなのに、凄い乗り気な愛!!


まぁ〜タマちゃんは人懐こいし、基本お気に入りのクッションがあれば何処でもお昼寝しちゃう子なので、問題は無いと思うけど。


「飲食店に猫とかまずいだろ?」


「どうなんだろうね。」


「別にお店の中を走り回るとかしなければ良い気がするけど」


「お父さんに聞いてみるね」


そして数分後。ポロ〜ん。


「お父さんが貸して貰いなって」


愛父本当に良いのか?愛の父は見た目はイカついけど、家のタマちゃんを発見すると赤ちゃん言葉で話し掛けているのを俺は知っている。


この機会に乗っ掛って来たな!!


「マジか!!俺から言い出した事だし。」


「それじゃ〜俺が帰って来てから2時間だけ、タマちゃんを助っ人で貸すよ」


翌日相変わらず定食屋【清水】は混み合っていた。


俺は裏口から声を掛ける。


かえでです。ウチのタマちゃん連れて来ました」


そう俺の手にはウチのタマちゃんがお気に入りのクッションと共に抱っこされていた。


「楓君ありがとね」

「ウチの旦那、タマちゃんのファンだから、この機会にタマちゃんと仲良くなるんだって」

「あのイカつい顔で楽しみにしてるのよ。困っちゃうわ」


愛母からお礼と愛父の計画が伝えられた。やはり愛父が一番乗り気のようだ。


そしてこの日から、タマちゃんの定食屋での手伝いが始まった。


手伝いと言っても、レジ横のソファーにお気に入りのクッションを置いて貰って、そこで寝ているだけだ。


そして猫好きのお客さんが来ると、可愛いねって言われながら度々撫でられる。それだけ。


タマちゃんの貸し出してから1週間…。


あのやばい人数の行列は流石に無くなっていた。


ウチのタマちゃんと言えば、すっかりお店の人気者へ。


何とタマちゃんのお気に入りクッションの横には、タマちゃん貯金箱が設置されて。


貯金箱には【タマちゃんのおやつ代入れ】と書かれていた。


太っ腹の常連や金持ちのYouTuberがネタで札を入れてくれる事もあって、タマちゃんは俺より金持ちになっていた。


そして事件が起きた…。タマちゃんを貸して10日目。


今日は土曜って事で夕方近くまで寝て、ここ最近の日課…。


タマちゃんを定食屋に連れて行こうと家を出ると。


定食屋【清水】の店前が前回の行列どころでは無い、人で埋め尽くされていた!!


タマちゃんを連れて人混みを分けてお店に行くのは不可能と判断。


「お店どうしたんだ?前回も凄かったけど、今回は前回よりやば過ぎるだろ」


あまりの事態に驚きながらLINEで愛に連絡すると。


ポロ〜ん。連絡が返って来た。


「どうしよう。大変な事になっちゃった」


「またYouTubeで紹介された見たい」


「しかも今回は、あの超〜〜〜有名なブンブンおじさん」


マジか!!俺でも知ってる超有名 YouTuberじゃん。


「そのブンブンおじさんが、インスタに上がってた【タマちゃん】が気になってお店にお忍びで来たらしいの」


「その時にSNSにアップして大丈夫ですか?ってしっかり聞いてくれたようなんだけど。」


「タマちゃんに関しては可愛く撮ってくれれば、自由に撮影してアップしていいですよって言っちゃって…。父がね…。」


「昨日の夜YouTubeで夕方から2時間しか会えない激カワ猫ちゃんとして紹介された見たい」


「そしたら夕方営業前からお店の前が大変な事になってるの」


恐るべし YouTuber!!これは今日はタマちゃん連れてくのは無理そうだ。


「今日はタマちゃん連れてくの無理そうだな」


愛に再度LINEを送ると速攻で返事が。


「いやいや…。今お店の前に居る人達はタマちゃん目当てで来てるんだよ」


「これでタマちゃん見れなかったら、ガチで暴動起きる勢いだからね」


「暴動でお店潰れたら一生楓のこと恨むからね」


何か怖い。怖過ぎる。


この後、お店が暴動で潰されない為に。タマちゃんを無事にお店に届ける為の作戦会議が行われた。


我が家のタマちゃんを貸したら、猫の手も借りたいって言ってた時以上に忙しくなるなんて、売れない小説のネタみたいな話し。

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