第41話 仁くんとのデート




 それは、仕事を終え、私が部屋で趣味の編み物をしている時だった。


『ピロリン』


 最近買い換えた新しいスマホに連絡が来た時の通知音が静かな自室に響いた。

 誰だろうか。さっき返事を返した同僚かな。光るスマホの画面を編み物をしながら覗き込む。

 そこには、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


仁:お久しぶりです恵令奈さん。連絡遅くなってすみません。唐突なんですけど今度の日曜日どっか遊びに行きません?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 という、文字の羅列が映し出されていた。予想していた同僚からの返信ではないみたいだ。ないみたいなんだけど……。


「……」


 仁?

 仁……仁……前原?


「……あっ!」


 私がかなり前にナンパした超絶美少年だ。あまりにも綺麗だったから衝動的にやっちゃったんだよね。しかもなんかスポ男に載ってたし。初めて目にした時と合わせて二回彼には驚かされた。


 それにしても、連絡遅くないかな。

 遊びのお誘いをしてから返信中々なかったし、私もうとっくに諦めてたよ。ナンパした次の日くらいに私連絡したよ。


「……」


 いや、さすがに遅すぎるよね。まさか、忘れてたのだろうか。

 もしそうなのだとしたら、すこーしだけ、ほんのすこーしだけショックだけど、こうして向こうからお誘いしてくれたんだし、無効にしてあげましょう。

 私は返信を返す。


「デートのお誘い……ふふっ」


 男性と遊んだ経験はたくさんあるけれど、あれだけの美少年と遊ぶのはさすがの私でも初めての経験だ。しかも、今話題の希代の美少年弓士。これは、かなりの数の女から嫉妬されるだろうな。


 編み物をする手を止めて私はついついニヤニヤと笑みを浮かべてしまう。久しぶりに心が沸き立つ感覚。武者震いとは、正にこれをいうのだろう。


 日曜日、何をして遊ぼうか。

 私は来たるデートに想いを馳せるのだった。



* * *



 そしてあっという間に訪れた日曜日。


 今日のデートにはドライブのプランも組み込んであるため駅まで車で向かう。

 動悸が少しだけ激しくなりつつあるのが分かる。緊張してるみたいだ。ダメダメ、女の私がエスコートしないといけないんだから。初デートは本当に大切だ。これをしくじってしまうと、以後デートの誘いに応じてくれない可能性が高い。


 男の子を待たせる訳にはいかないからと早め早めに準備を行った結果、1時間前に到着してしまった。まあ早い分にはなんの問題もないだろう。


「……よし」


 今日のデートは絶対に成功させてみせる。

 今までの男の子は……あまり好みの性格ではなかったけど。でもあの子なら、きっと。


 そんな想いを抱きながら駅の駐車場へ車を停める。この車は、正直言ってかなり無理をして購入した自信の一品だ。男とデートするために買ったと言ってもいい。


「さて」


 仁くんが来るまで、いつも通りベンチに座ってデートプランの再確認でも行いますか。入念に記憶しておかないと、グダってしまうと目も当てられない。


 車のカギをクルクルと指で回しながら時計塔の下へ向かう。


「……ん〜?」


 しかし何やら時計塔の辺りが少し騒がしい、というか色めき立っていると表現した方がいいだろうか。

 その一帯だけ僅かに人口密度が高くなっており、足を止めて何かを見つめる人もいる。


 なに?


 ひょこっと背伸びして軽い人垣の上から視線が集中する場所を確認してみる。

 これ程の注目を集める存在は何なのか。幸い仁くんとの待ち合わせ時間まではまだ大分あるし野次馬の1人になってみよう。

 私はそう結論付けた。


 しかし其処に居たのは。



「……」



 居心地が悪そうに目を伏せてソワソワと肩を揺らす、見覚えのある、そう、とても見覚えのある美少年だった。


 10人とすれ違えば15人は振り向く程の美貌。もはや母数など関係がない、正に世の理から外れたような水準の存在感。

 また、庇護欲をそそられるあの何とも言えない立ち居振る舞いは世の女性達が放っておくなどあり得ない。

 一言で言うならば、天使。これに尽きる。


 ……。


 まあつまり、長々と何を説明したのかというと、仁くんである。

 本日私がデートする予定である仁くんが其処にいたのである。


「……なんで!?」


 早いよ仁くん。まだ1時間前だよ。

 もしかして私が時間を間違えたのかと、スマホを取り出し焦りながら確認するものの、やはりまだ紛う事なく1時間前。まさか、女より早い男の子が存在するとは。


 うーん……なんでこんなに早く来てるのかは分からないけど、今にも泣きそうなくらい居心地悪そうにしてるし助けてあげるとしますか。


 私は野次馬の外周を回り、仁くんの背後にそっと移動する。


「……ふふふ」


 別に普通に声を掛けても一向に構わないんだけど、なんとなく意趣返しをしたくなった。そう、私との約束を忘れていた(であろう)件である。

 お返しに少し驚かせてやろう。黒い笑みを携えつつ私は悪戯を決行しようとする。


 と、その時。



「……恵令奈さーん」



 ―――!?


 私の心拍が1度だけ桁外れに強くなった。胸が跳ね上がったかと錯覚するほどに。未だに余韻でドクドクと血液を全身に懸命に送っている。なんとなく火照ってきた気がする。


 ……びっくりした。

 今、私の名前呼んだよね?しかもなんて甘い声で呟くのこの子は。


「……」


 ヤバイ、無茶苦茶嬉しい。私の事考えてくれてたってことだよね。口元が緩んでしまう。


 驚愕と喜悦という感情が身体中を駆け巡って、体が震えるという現象をもって私に働きかけてくる。


 しっかりしろ私。

 こんな些事で、大きく動揺していたらこの子と釣り合うことなんて夢のまた夢。真摯に、直向きに。私はただ私を全うすればいい。

 ただ、それだけでいいんだから。


「だ〜れだっ」


「うわっ!?」


 そう言いながら私は背後からガバッと仁くんの目を覆う。


 この行為には悪戯をするという目的と、今の赤くなっている顔を見られたくないという目的の2つがある。可愛い反応をしてくれてる所悪いけど、ちょっと時間を頂戴。

 その時間で私は平常心を取り戻してみせる。……美少年に触れてしまった。


「恵令奈さん……ですか?」


「おっピンポンピンポーン!!」


 未だ僅かに心に残る動揺を吹き飛ばすように私は殊更明るく振る舞う。

 同時にすんなりと手を放す。あんまりやるとしつこい女って思われちゃうしね。ただでさえ女に触れられることが嫌いな男も多いっていうのに。今の私の行為は特例中の特例。仁くんだから、やったのだ。


 振り返る仁くんは、やはりこの上なく綺麗な顔をしている。このレベルは、国中探してもそうお目にかかれないだろうな。


 またちょっと胸がドキドキしてきてしまった。抑えろ私。頑張れ私。フレフレ私。


 私の内面の葛藤を仁くんに知られるわけにはいかない。仮面を被るように、意識してニヤニヤとした顔付きにする。


「恵令奈さーん……だっけー?」


 先程の仁くんのつぶやきを少し真似ながらからかうように言ってみた。本当に嬉しかったから。どうしても、真意を聞き出したい。


「……それは、違うんです。周囲の視線が多くてですね……。変な意味じゃ、ないんですよ?」


 すると、拗ねたような表情になりつつ、頬を僅かに赤らめる仁くん。弁明をする健気さと相まって、もう、ものすごく頭ナデナデしたい。困ってるみたいだし、この辺りで許してあげたい。

 でも、それでも。


「そんなに私に会いたかったのかな?ねえ仁くん?」


 許してあげない。


 私の心の安寧を保つため、そして私が仁くんに釣り合うような女になるために攻めを緩める訳にはいかない。

 仁くんの魅力は異常の一言だ、気を抜くとすぐに取り込まれてしまう。女の私がそれじゃダメだ。私が取り込んでやるんだ、頑張るぞ。


「んん〜?」


 しかし、余りにも攻めすぎると『なにこいつうざい』って思われる危険性があるし、本当に加減が難しい。ギリギリのラインを見極めるんだ。


「……い、いや、そういうのじゃなくてですね」


「じゃあどういうことなのかな?」


「えっと、周囲の視線に耐えられなかったので、早く来てくれないかなって……」


 ふむ、なるほどそういうことだったか。確かにあの状況じゃ、誰か知人に駆けつけて欲しくなるよね。

 でもその答えじゃ甘いよ仁くん。逃がしてあげない。


「なるほどなるほど。つまり、私を求めていたということだね?」


 物は言いようだ。

 ふふん、仁くんは、年上のお姉さん相手に口勝負で勝てるかな。年の功というやつだ。


 仁くんはしばらく何か逡巡していたようだが、やがて観念したように言った。


「……そういう、ことです」


 よし、勝った!

 年下相手に何をムキになっているんだと自分を嗜めたい気持ちもあるけど、こんな美少年に勝って、尚且つ求められていたということがどうしようもなく嬉しい。


「そっか!……ふふ、そっかそっか」


 仁くんが私を求めていた。

 この事実は私の口角を緩ませるのには十分過ぎる事実で、自然と笑顔になってしまった。


「ほ、ほら周りの人に注目されちゃってますし行きましょう?」


 仁くんが焦ったように私を急かす。

 しかしこの理由は建前だろう。本音は私の攻めに臆してしまい、この場をリセットしたかったに違いない。


 そんな姿も、本当に可愛い。


「ん、そうだね行こっか。……ふふ」


 年上の威厳というものを垣間見せることが出来たと自負した私は余裕たっぷりにそう返し、考えたプラン通り、レストランへ歩き始めようとする。



「じゃあ、デートなんで手でも繋ぎましょうか。はい、どうぞ」



 しかし、予想だにしない仁くんの強烈なカウンターが私を襲う。さも当然のように手を私の方に差し出してきたのだ。デートで男と手を繋ぐという行為は、選ばれし女しか成せない偉業の一つに数えられる。それほど価値の高いものなのだ。


 ―――!?


 えっ!!い、いいんですか!?ボディタッチOK!?

 ヤバイ私手汗大丈夫?手汚くない?遊んだことはあっても、男の子と手握ったことなんて一回も無いよ!!!

 しかもこんな美少年と?こ、鼓動が……胸が苦しい。張り裂ける。


「ん?あ、そうだね。はい」


 しかしそんな内心もなんのその。私は見事なポーカーフェイスっぷりを遺憾無く発揮する。

 私がそう返答した時、仁くんは一瞬惚けた顔を晒した。向こうからしても私の反応は予想外だったのかもしれない。亀の甲より年の功ってね。


 それにしても、力加減が分からない。

 そっと包み込む感じだろうか。それとも力強く握りしめればいいのだろうか。右も左も分からない若輩者のため、挙動不審に陥ってしまいそうだ。


 数秒悩んだ結果私は柔らかく包み込む方針に決め、サッと仁くんの手を取り、歩き始める。


 マズイ、今私の顔赤いかもしれない。


 仁くんは今どんな顔をしていて、私はどんな表情を浮かべているのだろう。

 上手く手を握れているのだろうか。

 仁くんは何も言わない。

 という事は大丈夫なのだろう。本当に心臓に悪い。寿命が縮んでそうだ。


「……ふぅ」


 こっそり、私以外には聞こえないであろう強さで息を一つ吐く。熱も、焦りも、喜びも、今は息に乗せて体外へ排出する。今必要なのは、冷静さだ。それ以外は、いらない。


 よし、落ち着いた。大丈夫、大丈夫。


 平静を取り戻した私だったが、突然仁くんが恋人繋ぎと言われる指をお互い絡ませ合うエロい……じゃなくて、素敵な繋ぎ方に変えてきた。


「……ひっ」


 やばい、吃驚して一瞬声が漏れ出そうになった。

 さらに、恋人繋ぎだけでも胸が張り裂けそうな程心臓が暴れ回っているのに、仁くんはそのまま私に寄り添うように体をくっ付けてきた。


「……」


 鼻血出そう。誰か私に鼻栓して。


「どこに向かってるんですか、恵令奈さん?お昼前だから昼食ですか?」


 この子は天然なのか策士なのか。

 

 天然ならば恐ろしい歩く災害指定生物だし、策士であったとしてもやはり危険な歩く災害指定生物だ。要するにこの子は歩く災害だ。自分で何を言っているのかよく分からない。

 この子と接しているだけで、本能がこの子を襲って子種を授かれと訴えかけている気がする。

 このままでは埋もれてしまう。この子の魅力はあり得ない練度で私の心を取りに来てる。魅力に、埋もれてしまう。


 気を……気を確かに持たなければ。


 デート中にあるまじき行為ではあるんだけど、申し訳ないがスマホを見させてもらう。

 昨日見ていた動画投稿サイトの『うちの猫ちゃんの1日』という動画を見て心を鎮める。 そう、今私が手をつないで寄り添っているのは可愛い可愛い猫ちゃんだ。断じて美少年ではない。肉球、肉球。


 私は辛うじて理性を取り戻すことに成功した。


「そうそうお昼ご飯食べに行こうと思ってね。あ、此処の先に美味しいレストランがあるみたい。そこにいこっか」


 本当は事前にレストラン『ミュート』に行く計画に決めていたが、スマホを見ていた違和感を無くすため、あたかも今見つけたように私は提案する。

 うん、いいよ、落ち着いてきたよ私。心臓が暴れたおかげで脳に血液が回っている。


「……」


 折角お昼ご飯の提案をしたのに、何故か仁くんは可愛いお顔で此方を睨んでくる。


 私何かしたかな?もしかして、スマホ見てたこと怒ってる?……でも、そういうのじゃないと思うんだよね。うーん、わからない。


 それに、全然怖くない。顔が可愛すぎるからかな。小動物が軽く噛み付いてきたみたい。なでなでしたい。


「……どしたの?そんな可愛い顔して」


 ついついからかってしまう。許せ仁くん。

 案の定仁くんは、ぷいっと顔をそらしてしまった。


 怒らせちゃったかな?


 そう心配した私だったけど、仁くんはその後も体を擦り擦りと甘えるように擦り付けてきたり、私の肩に頭を乗せたりと爆弾行動を色々とかましてくれたので恐らく大丈夫だろう。


 あと、道すがらの気遣いがとても嬉しかった。歩道を2人で歩いていた時のことである。ヒールを履いてきている私は、点字ブロックの上を歩くという行動が実はとても辛い。それを察してくれて、さりげなく場所を交代してくれたのだ。

 偶然かとも一瞬思ったんだけど、チラッと私の足元と点字ブロックを見ていたから、意識したんだと思う。

 そんな心遣いができる男の子は本当に珍しい。いないと断言しても良いくらいだ。


 それだけで、この子が外見だけじゃなくて中身も素敵なんだと分かった。

 ますます、ものにしたくなった。



* * *



 その後、私たちはレストラン『ミュート』に着き、昼食を共にした。

 途中仁くんが元気なさげだったため心配したんだけど、その後は明るく元気いっぱいだったので問題はなかったと思う。無理してる感じではなかったしね。


 プラン通り、次はドライブに移行した。

 私自慢のオープンカーを披露してあげた時は仁くんはまるで子供みたいにはしゃいでくれてとても嬉しかった。あれだけ興奮を剥き出しにしてくれれば、私も頑張った甲斐があったというもの。


 あと、助手席で楽しそうに風を受ける仁くんは、眩しいくらいに綺麗だった。気持ち良さそうに目を細めて、楽しそうに騒いでいるのだ。その時は、すぐに力いっぱい抱き締めたかった。

 オープンカーは風を諸に受けると思われがちだけど、実はそれは後部座席のみだったりする。運転席と助手席にはそれ程強風は入ってこない。だから、ちょうど良い気持ちの良い風を感じることができるのだ。


 本当に純粋で、無垢で穢れを感じさせないその姿は、世俗にまみれていない天使のように見えた。

 ああ、私はもうこの子から離れられないんだろうなということはぼんやりと自覚できた。なんてことはない、私はもうとっくに彼の魅力に埋もれてしまっていたのだ。

 どんなに虜にしようと足掻いても、絶対に虜にされてしまう。それくらい、仁くんは特別な存在だ。


 私が今まで男性と付き合って来なかったのは、単純にしっくり来なかったからだ。男の子と遊ぶのは楽しいし、好きだ。でも何か満たされない。私が求めているのはそうじゃなかった。


 でも、今日仁くんとデートしていて分かった。

 これだ、と。


 仁くんは私にエスコートされっぱなしではなく、時には私を気遣い、引っ張ってくれた。

 先程の点字ブロック上のヒールを気にかけてくれたことを筆頭に、2人で並び歩く時は絶対に車道側に居てくれるし、車のドアの開け閉めも率先してやってくれた。行動の節々に此方を思いやる配慮が見え隠れするのだ。


 今までそういったものは私が全てやる側だった。男性が不快な思いをしないように、楽に行動出来るように、常に細心の注意を払い気を張り続けていたのだ。男性も男性側でそれを当たり前のように享受する人が大半で、此方に遠慮するなんて一欠片もない。ずっと与え続ける関係なんて、そんなんじゃ満たされないに決まっている。


 けれど仁くんは違った。全部、全部違った。可愛くて、かっこよくて、気配りをしてくれて。この子は唯一無二で、今逃したら一生後悔すると確信した。


 それなのに、彼を引き留めるための私の魅力が圧倒的に足りていない。関係性の接着剤の役割を果たすのは、お互いの魅力である。仁くんの魅力は圧巻の一言。じゃあ私の魅力は?そう考えた時、自信のある要素が思い浮かばないのだ。

 その焦りがデート中の私を常に襲っていた。そして、決定打がうてないままデートが終了してしまった。



* * *



 時が経ち、私は今仁くんを自宅に送り、別れるところである。

 名残惜しいけど、仕方ない。私はまだ彼には釣り合えない。今回のデートは、成功したとは言い難いだろう。何度もシュミレーションしたんだけどね。

 本当に、残念だ。


 悲鳴を上げる内面を、軽口を交わしながら必死に抑え込む。仁くんには悪いけど、早く一人になりたい。一人で、ちゃんと落ち込みたいから。そうじゃないと、好きな人に情けない姿を見せる羽目になってしまう。私は年上のお姉さんだ、間違っても今失態は犯さない。

 でも、我慢すればするほど心が荒れて、胸中が痛む。


 そう気分を落ち込ませていた私だったが。


「恵玲奈さん」


「ん、どしたの?」



「……また、遊んでくれますか?」



 ―――。


 一瞬、ほんの一瞬だけ泣きそうになった。 溜め込んでいた何かが決壊しそうだった。いや、目に見えない形ではあるけど、確実に決壊してしまっていた。


 楽しかったのは私だけじゃなかったんだって。そう仁くんが教えてくれたみたいで。最後の最後まで、頭を撫でて抱き締めたくなった。



「ふふ!いいよ〜。こんな美少年にお願いされちゃ断れないよね!」



 本当に、本当に嬉しくて、私は心の底からそう伝えた。

 まだまだ仁くんには遠い女かもしれないけど、いつか絶対追い付いてものにしてみせる。相応しい女になるから。



 待ってて仁くん。

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