第10話 学校

 

 電車で無事(?)痴姦を受けた俺は、意気揚々と学校に向かって歩を進めていた。


 それにしてもさっきの痴姦の女の子も可愛かったなあ。制服は春蘭高校だったし、そのうち学校で会うこともあるかもしれない。……少し恥ずかしいな。



 それにしても、やはり注目される。視線が痛い。物理的な力を伴っているような錯覚を覚えるほどの量だ。なんと言っても道行く人ほぼ全てが俺の顔を穴が開くほど見つめてくるのだ。


「えっ?ちょ、あんな子うちの高校にいた!?」「いや、見たことないよ……」「あれはきっと天使よ!普段から頑張ってる私へのご褒美に天界から舞い降りてきてくれたに違いないわ!!」


 そんな声が聞こえてくる。とりあえず愛想笑いでもしておくか。冷たい人だとは思われたくないしな。


『ニコッ』


「「!!」」


「み、見た今の!?わ、私に!私に微笑んでくれた!」「はあ!?あんたにじゃないわよ!私によ!私に!」「天使の微笑みエンジェルスマイルや……。素晴らしいやないかい……」



 この世界の女の子はみんな面白いなあ。


 そんな騒ぎの中、学校へと続く桜並木道を進み、校門に辿り着いた。


 うーん、おっきいなあ。校舎も真っ白。貴族が通うような雰囲気を醸し出してる。

 さて、学校からは着いたらまず職員室に寄るように言われてるし行きましょうか。

 ……うん、場所がわからん。校舎内の地図とかはなさそうだしな〜。よし、持ち前のコミュ力を活かして……あの校門前にいる数人の女子達に聞いてみるか。


 俺は歩いて女子グループに近付く。見た目じゃ何年生か分からないな。先輩か後輩かも分からない。

 ……いや、確か胸元のリボンの色で学年が分かるようになってるんだっけ?チラッとそんな話を聞いた気がする。しまったな、何色が何年生か全く知らない。


「あの、すみません」


「はい?どうしまし……」


 3人いる女子のうちの茶髪ポニーテールの子が返事をしてくれたのだが、振り向き俺の顔を見た瞬間固まってしまった。あとの2人も同様だ。


「あ、あの〜……」


「はっ!?あ、あぁすみません。ど、どうされましたか?」


 もう一度声を掛けたら、どうやら再起動してくれたようだ。よかった。まぁ正直こういう反応は予想していた。


「実は今日初めて学校に来たのですが、職員室の場所が分からなくて……。できれば教えてもらえませんか?」


「今日初めてって……て、転校生ですか?」


「いえ、1年生なのですが、諸事情で入学が遅れてしまったんです」


「あ、そ、そうなんだ。私は2年生の片岡すみれだよ。よ、よろしくね!」


 そう言って、茶髪ポニーテールの片岡先輩は自己紹介してくれた。それに続いて、あとの2人の女子も自己紹介してくれた。茶髪ミディアムのおっとりした顔の、胸に夢と希望がたくさん詰まっているような大きさの人が中川楓なかがわかえで先輩。金髪ショートの少し目がつりあがってる勝ち気が強そうな人が田島奈々たじまなな先輩。どちらも2年生だそうだ。


「あ、申し訳ございません。自己紹介が遅れました、前原仁と申します。宜しくお願いします、先輩方」


「うん!あ、職員室の場所だったね。そ、そこの玄関入って右に向かって突き当たりを左に曲がったところにあるから」


 片岡先輩が教えてくれた。


「ありがとうございます!では失礼します!」


 笑顔でそう言ってお礼を告げ、その場を去る。先輩達は、去っていく俺をしばし呆然と眺めているようだった。


 俺は片岡先輩に教わった通りに移動し、職員室に辿り着く。廊下を移動している最中も他生徒からの注目は免れなかった。


『コンコンコンッ』


「失礼します」


 ノックをしてからそう言い、扉を開け職員室に入る。この職員室に入る前の独特な緊張感は懐かしい。


 一斉に視線が俺に集まる。見事に女性の教師ばかりだ。いや、2人ほど男性教師がいるみたいだ。どちらも壮年の人だけど。


「あ、あのおはようございます。1年の前原仁です。福岡先生はいらっしゃいますか?」


 担任である福岡先生をとりあえず呼んでみる。


「お、おはよう。待っていたわよ前原くん。写真では見ていたけど実物がまさかこんなに美少年だなんて……」


 黒髪のいかにも仕事できますって感じの美人さんが来た。この人が俺の担任の先生か。後半の独り言は聞かなかったことにしておきます。俺はできる生徒なのだ。


「じゃあついてきてくれるかしら?前原くんのクラスの1年1組に案内するわ」


 福岡先生について行く。

 1組はどうやら1番奥にあるらしい。クラスは全部で8つ。1学年で250人ちょっとと言ったところか。前世の俺が通っていた高校と似たり寄ったりだな。この男女比でよくこんな人口を保っているものだ。


「ついたわよ。ちょっとクラスのみんなに説明するから、少しここで待っていてくれる?」


 福岡先生だけ先に教室に入って、俺はドアの前の廊下で待つ。

 緊張する。前世では転校したことなかったからこういう体験は初めてだ。深呼吸だ。ヒッヒッフー。ってバカ違うこれはラマーズ法だ。


『ザワッ』


 教室が少しざわついたのが分かった。遅れてくる生徒が男性であると説明したのか。はたまた記憶喪失のことを話したからだろうか。ちなみに、俺が記憶喪失であることは学校側に説明し、クラスのみんなにも伝えることになっている。


「では、入ってもらいます。前原くん、どうぞ」


 お呼びの声がかかった。

 よし、しまっていこう、俺。


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