第2話
私はかおりと解散して家に帰る事にした。
母親は再婚したばかりで狭いアパートに三人で住んでいる。
もちろん私の部屋などなく、あるのは窓際の角にあるスペースだけ。
そこに荷物を積み上げている。
まだ寝静まっている静かな部屋にギーっという玄関の開く音が響く。
私はなるべく音をたてないようにしたいが古いアパートだ、どうしても音がする。
そっと鍵をかけると、忍足で自分のスペースに向かう。
床のギシギシいう場所を避けながら、私は窓際につくと、そのまま荷物の山にもたれかかり眠る。
ガラガラというドアを開ける音がし、母親が言った。
「あんたいい加減にしなさいよ、何時だと思ってるの」
私は寝たフリを続けた。
家にいるのが嫌だった私はいつも友達の家を点々としては時々家に帰っていた。
朝は起きるとまずメイクをする、そして制服に着替えて、朝ごはんが用意されていれば食べるし無ければそのまま学校に行く。
もちろん勉強をしに行っているわけではない、友達に会う為だけに行っている。
学校の中庭や駐輪場、保健室などが私たちの溜まり場だ。
教室に居場所はない。
暇になれば近くのコンビニやショッピングモールに移動したり、他校の友達と合流して公園などで過ごす。
夜になれば、昼間は仕事をしている友達に迎えにきてもらい、自分たちだけでは行けないような所に連れて行ってもらったりして遊んでいた。
家に帰るのはよっぽどする事がなくなった時だけだ。
そんな生活を続けている時出会ったのがこうきだ。
正直男友達は沢山いたし、呼んだらすぐ来てくれる人ばかりだったが、私はこうきと出会ってからは、どうにか好かれようとダイエットをしてみたり、流行りのメイクを研究したり、普通に女子力を磨いていた。
ある時、かおりとしんじ私とこうきの4人で遊んでいる時、好奇心でラブホテルに行こうと言う話になってみんなで行く事になった。
一つのダブルベットで4人並んで寝ようとしたが流石に狭く、こうきはマッサージ機に腰掛けていた。
かおりとしんじはすぐに爆睡してしまった。こうきは風呂入ってくると言い行ってしまい、1人で起きておくのが急に怖くなった私はバスルームに向かった。
こうきはすでにシャワーをしていたようで、脱衣所から私が声をかける。
「うちも入っていい?」
「えっ?一緒に?」
「うん、ダメ?」
「えっあぁ、いいけど」
「電気だけ暗くしていい?」
「いいよ」
私は電気を消し、服を脱ぎ扉を開ける。
こうきは湯船に浸かっていたが、向こうを向いていた。
「よく入れるね」
「だって1人で起きとくの怖かったんだもん」
私はシャワーで体を洗い湯船に浸かる。
流石にこちらを向くこうき。
「暗くて全然見えないでしょ?」
「そうだね、てかビックリしたわ、急に入っていいって」
「嫌だった?」
「俺は嫌じゃないけど、れいちゃん恥ずかしくないの?」
「見えないなら恥ずかしくないよ」
「すごいな」
湯船の中でこうきの膝と私の膝が当たる。私は好きだったから、正直そうなってもいいと思っていた。
しかし、長湯をする事もなくこうきはそそくさと上がってしまった。
私は、引かれちゃったかな?なんて思って少し落ち込んでいた。
着替えて部屋に戻ると、こうきはマッサージ機にまた座っていた。
私は仕方なく寝ようと、ベットの空いているスペースを探すと丁度しんじの横が空いていたので、そこで寝る事にした。
しばらく目を瞑っていると、ゴソゴソとベットが沈んだ。
なんだろうと目を開けると、こうきが私としんじの間に無理やり入ってきた。
「そこ狭くない?」
「別に?狭くないよ」
そう言って、私の方を向いて転んだ。
もしかして、私の事を気にしてくれてる?
でも、すごく密着しているのにもかかわらず、キス一つしてこないし、脈がないのか?
さっきだって普通一緒にお風呂入れば何かしらあると思っていたのに何もなかったし。
かと思えばこうやってしんじと私が密着しないように気にしてくれていると思うし。
ただ真面目なだけなのかな?私はそんな事を考えながら気付いたら眠っていた。
外が完全に朝になる前に私たちはかおりの家まで送ってもらい、私は自転車で家まで帰る。
いつものようにそーっと家に入り、眠気が限界だったのもありすぐに爆睡した。
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