モモ子とヶ島のオッニ
ひなみ
本文
両親のように
だけど、そうは言ってもモモ子は年端もいかない、かよわい細腕の女子なわけだから、そこである考えにたどりついたわけ。ひとまずもので釣れば、家来なんていくらでもついてくるんじゃないかなって。
正直それはどうかと思うんだけど、それ以外にやりようがなかったみたいなんだよね。
そういえば、バッバから渡されていたきびだんごはとっくに腐ってた。守ろう賞味期限。それを
渡りに船とはこの事だなぁって、モモ子はそれはそれはいい笑顔を浮かべていたんだけど、すれ違う人たちからは不審者だと思われていたらしいよ。
そのあとイッヌ、サッル、キッジを大間のマグロのように一本釣りして、いよいよ小船で出発しようとしてたその時にね。そこに何者かが飛び込んで来ちゃった。
「あなたは……う~~~~わ! かーわいい!」
「飛び入りにて御免。
「連れてく連れてく! はいこれどうぞ!」
「おやこれは。かたじけない」
こうしてモモ子たちは荒波もなんのその、
そして決戦を控えたその夜。すでに皆は先に眠っていて、一人になったモモ子はちょっとだけホームシックになってたみたい。
そんな気持ちのまま、目がさえて海岸沿いを歩いていたモモ子は、たそがれるようなある姿を見つけたの。
「あなたも眠れないの?」
「いいえ。一つよろしいですかモモ殿。……この中に裏切り者がいます」
「うそ。そんなわけないでしょ! 皆に平等にきびチロルを分け与えてるのに!」
「それでも、
言い終えるとネッコは、他のメンバーが雑魚寝をしている焚き火へと戻っていくの。
「それはどういうこと? ねえ、待ってよ!」
モモ子のその声に振り向きもせずにね。
決戦当日。
そこそこの激しい戦いをしてオッニの
その二人のもとへと駆け寄ったモモ子は、涙を浮かべながら手を下した者の方を
「ひどい、なんてことを……あなた裏切ったの、イッヌ!?」
「モモ子よぉ……きびチロル、ネッコにだけ一個多くやっただろ。元はと言えば先に裏切ったのはお前だろうがよ!」
「な、なにいってるのかなぁ~? わたし知らない。知らなーい!」
ぷすーぷすーと、明らかにスカスカの口笛がモモ子から鳴る。あ、これやってんな?
「フン、まあここまで来たらどうだっていい。オッニさんこちらです」
それを合図にオッニが岩陰から姿を現してしまったわけ。
「ご苦労だったなイッヌ。さあて、モモ子よ、ここがお前の墓場と知れぇい!」
大地が大きく震えたよ。
その者は、明らかに殺傷能力の高そうな棍棒をドシンと叩きつけたからね。
「オッニ、あんただけは……許さないんだから!」
「だったらどうなるって言うんだ、己の手を汚さぬ卑怯者がっ! ちなみに俺を倒すと、もれなくこの島の全員がぶっ倒れるぜぇ!」
「やっちゃえ、ネッコ!」
「うおおおおおおおお、またたび神拳!!!!!」
もしゃもしゃもしゃもしゃもしゃあ。
「あっそれやめて。痛くはないけど何かつらい! あれ……ちょっと聞いてる? その葉の部分でもしゃってするやつ往復しないで! いやマジで聞けよネッコ貴様あああああ!」
何かよくわからないんだけどね、圧倒的な力で心に潜む悪を
それからモモ子は、改心したイッヌとオッニを含む全員を自宅に招いて、仲直りと称してどんちゃんのパーリーをストゼロでオールナイトロングしたみたい。あらあら、ゆうべはお楽しみでしたね。
「「「「「飲み明けのラーメン最高~! おかわり!!」」」」」
「いや、そろそろ帰って?」
その数年後、成人したモモ子は独立して飲み屋をオープンしたとかなんとか。
めでたしめでたし。
モモ子とヶ島のオッニ ひなみ @hinami_yut
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