猫パンツ
華川とうふ
第1話
クラスメイトの市川鈴音は半分猫である。
まあ、厳密には半分ではないのだけれど。
猫耳にしっぽに、もふもふの手。
最初にみたときは、ものすごい美少女がコスプレでもしているのかと思った。
だけれど、教師たちは誰も注意しない。
噂によると、市川鈴音のご先祖が忙しくて猫の手を借りたらこうなったらしい。
忙しいと猫の手も借りたいというけれど、市川のご先祖の場合、猫が手伝ってくれるのではなく猫が本当に手を――ついでにしっぽと耳も――貸してくれたらしい。
猫の手のおかげでお店は大繁盛したが、猫に手を返そうとしたところ再び猫にであうことはなかったらしい。
以来、本家の長女は猫の手(としっぽと耳)をもって生まれてくるという話だ。
市川の家は県内でも有名なお菓子屋を営んでいる。
中でも一番の人気商品は猫の手の模様のはいった焼き菓子であるから、猫の手の噂は一族ぐるみの商売のための嘘なのか、本当に猫の手をもって生まれたのか判断に困る。
でも、市川の猫の手が本物であっても偽物であっても、たぶん市川鈴音は苦労している。
学生というのは普通であることが何よりも大事なのだ。
周りから浮かない。
これは学校生活で生き抜く基本ルールだ。
だけれど、市川鈴音は最初からその基本ルールからはみ出している。
整った可愛らしい顔立ちも、無駄にするくらい、普通という枠からはみ出ている。
たとえ、猫の手が本物でもそれは本当に異質なことを意味するし。
もし、偽物ならばヤバイやつとして扱われる。
市川鈴音は普通じゃない。
もし、平穏な学生生活を送りたいのならば彼女とかかわることはおすすめしない。
だけれど、僕はどうしても我慢できなかったんだ。
「あの、市川さん。市川さんのてのひら……いや、肉球って全部ピンク色なの?」
――バシッ!!――
僕が言い終わるかどうかの瞬間、市川鈴音は僕に猫パンチをおみまいしていた。
確かに、ちょっとパンツの色を聞く変態っぽかったけれど……だけれど、市川の手の肉球はピンクだけじゃなくて部分的に黒もあってとってもかわいかった。
猫パンツ 華川とうふ @hayakawa5
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