落雷

「実話です。お祓いしていません。事故にはお気をつけください。」キャプションにはそれだけが書かれていました。

 私はあるオカルト小説大賞の公示された応募作の一編に興味を持ちました。

 その夜はとても気持ちのいい夜でした。

 昨日、日本の近辺を大型台風が通っていったばかりで、台風一過で昼から天気がよく、暖かなさわやかな夜気を風がはらんでいました。

 怪談を読む雰囲気ではありませんが、私はその小説を読み始めました。

 実話、だという短い投稿は気味が悪いとは思ったものの、私にとっては怖いというまでには気持ちが届きません。

 と、外の遠くで雷鳴。

 不思議です。それまで雷が聞こえ始める様な予兆はなかったのに。夜でも外は晴天。天気予報でも何も変わった事は言ってません。

 読み進める。

 不気味な雷鳴はどんどん迫ってきました。

 物語を終盤まで読み進めた頃には、雷雲は激しい落雷の音を連続させながらほぼ家の頭上に迫っていました。

 ガラス窓の外で夜景が光る。

 すぐ近所にある煙突にも落雷が直撃。

 雨は降っていません。

 ただ頭上で大きな爆発するかの如き雷鳴と、時折、落雷。

 竜の巣。私は映画『天空の城ラピュタ』の言葉を連想しました。

 連続する落雷の不気味な臨場感の中で、くだんの短編小説を読み終わりました。

 何とも言えない読後感。

 私自身には何も起こっていません。

 外はあっという間に雷音が遠ざかっていきました。

 しばらくすると夜の静寂はあっけなく戻ってきました。

「大した事はなかったな」

 雷雲は偶然。私はスリリングな体験を味わったのをそう結論づけ、PCのブラウザを切り替えました。

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オカルト懐疑派の不思議な実話 田中ざくれろ @devodevo

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