送信

 午前五時ぴったり。

 突然、ベッドで眼が醒めました。

 いつも横を向いて寝る自分がちょうど真上を向いて迎えた早朝。

 眠気なんかまるでない、あまりにもスッキリしすぎた眼醒め。

 私はあまりもの唐突さに「これは何かあるぞ!」と確信しました。

 すぐに家の電話が鳴りました。

 父が電話をとり、私達は祖父が入院している病院へ車で向かいました。

 祖父は病院で亡くなっていました。

 私は「ああ、これなんだ」と思いました。祖父が自分の死を私に伝えたのだと。

 それから何年か後、新聞で、知人の死に対するある有名人のインタビュー記事を読みました。

 有名人が亡くしたその友は生前「死というものは、自分の知人にFAXを一斉送信をする様なものだ」と言ったらしいのです。

 ちょっと解りにくい言葉かもしれませんが、私はそれに大いに共感しました。

 祖父は自分の死の間際に、自分は死んだというFAXを一斉送信し、私は確かにそれを受け取ったのだと。

 偶然の一致から始まる連想にすぎないかもしれませんが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る