一〇〇円玉
子供だった頃の昭和の時代。
大勢の友達と普段は行かない、初めての街へ遊びに行った時の話。
友達と街を歩いていた私は、ふと通りかかったある店先に出ていた一つの店頭電話が気になりました。
電話には下の方に蓋が閉まった釣銭口があるのですが、何故か突然、ここがひどく気になったのです。
(ここに一〇〇円玉がある!)
中が見えない釣銭口に私はそんな思いを抱いたのです。
「一〇〇円玉がある気がする」という憶測ではなく「一〇〇円玉がなくてはおかしい!」という確信。
立ち止まった私の周りに友達が戻ってきました。
私がその確信を皆に伝えると、そんな馬鹿なと笑われました。
そのはずです。この頃の公衆電話や店頭電話は一〇円玉しか使えません。希に一〇〇円玉を使える電話もありましたがそれはお釣りが出なかったのです。
つまり、もし、ここに釣銭の硬貨が残っていたとしてもそれは連続投入していた余りの一〇円玉のはず。一〇〇円玉があるはずはない。
私は友達が見ている前で釣銭口に指を突っ込みました。
そこにあったのは……、一〇〇円玉。
皆が見ている前でのこの不思議な出来事は、しばらく語り草になりました。
でも一〇〇円玉を投入した客が電話をかける寸前に思い直して、一〇〇円玉を取り忘れて去ったという可能性はありますね、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます