第2話
私達は仕事が終わると一目散に家に帰る。
「美紀ちゃん、みんなうちらのこと、どう思てるやろな?」
「さあな、お気楽なアラサー女子やと思われてるやろけど。」
「ハハハ……どこがお気楽なもんか……」
「ほんまに……うちらの苦労も知らんとからに……」
私と良美ちゃんの家は、昔から地域にある特定郵便局で、父親が局長をしている。その関係で、二人とも郵便局に勤めて十年以上になる。私は三人姉妹の末っ子で、良美ちゃんには兄が二人いる。上の二人が、郵便局勤めを嫌って家を出てしまい、私達は、要領の悪さか、意志の弱さか、はたまた、妙なところで親孝行なのか、現在の仕事をしているというわけだ。
「うちら、三世代同居のなかで大きなって、お母ちゃんの苦労を見てるやん。はたから見たら無邪気な末っ子かもしれんけど、家のなかが明るうなるように、気を遣いながら育ってるんや。おかげで、結婚願望のかけらもないわ。初めておうた時、良美ちゃんは、なんやかんや、かかえている人とちゃうやろかと思ったけど、やっぱり当たりやった。」
「美紀ちゃん、人間て、まとうてる雰囲気みたいなもんがあって、似たもん同士て、きっと、何も言わんでもお互いわかるんよ。うちのお母ちゃんは、どっちかいうたら、繊細なんやけど、その代わり、爆発したら半端ないわ。現在、冷戦状態、家庭内別居中や。こういう時、昔ながらの大きい家って考えものやな。うちのお母ちゃんの困ったとこは、怒ってるわけがはっきりせえへんことや。多分、何かの拍子に、昔の嫌なこと、思い出すんやわ。フラッシュバックて言うのかな?些細なことから、何十年分、さかのぼるみたい。美紀ちゃんとこは原因がわかっているんやし、大変やろけど、修復できるんとちゃうかな?。」
「せやろか。また、今日も、郵便局にいるパパをピックアップして、家に帰るわ。」
「なんや、お父さん、一人で家に入られへんのかいな。」
「ええ大人が、手えかかるやろ。」
「ほんまに……けど、美紀ちゃんのお父さん、かわいいなあ。うちのお父ちゃんにもそういうとこ、ほしいな。何を怒ってるんや、何が不満なんやて、理づめでお母ちゃんを問い詰めても解決せえへんわ。」
私達がまっすぐに家に帰るのは、思春期の中高生より、難しい年頃の両親のためなのだ。ほうっておけばいいという考え方もあるかもしれないが、私達は、それが出来ないたちなのだ。
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