サキュバスは何処にでもいる
凛音と共に小清水家に向かった翆だが、そこで遭遇した名も知らないサキュバスのことは結局璃々夢に任せることになった。
まあその前に色々とひと悶着あったのだが……沙希亜たちサキュバスのことを受け入れているからこそ、あの女性の泣き顔はかなり心に来るモノがあった。
『翆君、ちょっとこっちに来てくれる?』
『あ、はい』
璃々夢に呼ばれて近づくと、彼女は優しく翆の下半身を触り始めたのだ。
ズボンの上からでも触れられるとその刺激によって気分が昂るのは当然だが、男が興奮するとそれは近くにサキュバスに対して媚薬のような効果を齎す。
『あ……あぁ♪』
目の色を変えたサキュバスだったが、当然のように翆が彼女に対して何かをするわけではなかった。
『何もしないわよ? あなたの目の前でするのもそれはそれでいいかもしれないけれど、この匂いを嗅ぎながら寸止め地獄をしてあげる』
『いやああああああああああっ!?!?!?』
っとまあそんなことがあったわけだ。
翆としては少し可哀そうだと思ったが、彼女がそもそもサキュバスの協定ようなものを破ったのが原因とのことで翆は何も気にしなくていいとのことだ。
「……まさか本当にサキュバスを吸い寄せるなんて思わなかった」
そう、彼女を引き寄せたのは翆らしかった。
沙希亜と凛音との触れ合いによって雄としての何かが刺激されたのか、サキュバスを誘い出すフェロモンのようなものが僅かながら漏れているらしい。
翆自身まさかとは思ったが、沙希亜と凛音が頷いていたので間違いはないらしい。
「まあでも一時らしいし安心かな」
璃々夢の話ではそれも落ち着くとのことだ。
まあだが、なんにせよ新たなサキュバスとの出会いは驚きだったのは言うまでもなく、人ならざる人外の美しさもやはり当たり前だった。
「……サキュバスってみんな美人なのかな。まあ男を誘惑するのに長けた種族なら美人だよなそりゃ」
現に璃々夢がお仕置きしたサキュバスもかなりに美人だった。
胸は大きく腰はくびれがあり……大よそ男を興奮させる全ての要素がこれでもかと詰まっていた。
しかも彼女は前述したようにお仕置きの真っ最中で……まあエッチな拷問を受けていたわけだ。
『それじゃあ帰るよ』
『あ、待って翆君。そのままだと辛いでしょ、慰めてあげる』
帰り際に沙希亜にしてもらったがそれくらい興奮は当たり前だった。
名前も知らず会ったばかりのサキュバスでさえ男を興奮させるのだから、これで彼女たちの故郷に行った時に平常を保てるのかどうか本当に不安だ。
「ただいま~」
「おかえりなさい」
家に帰ると既に両親は帰宅していた。
「彼女さんのところか?」
「あぁ。今度父さんにも会わせたいな」
「楽しみにしてるぞ」
「あなた、翆の彼女さんとてつもない美人よ? 見惚れないようにね」
「……そこまでなのか?」
そこまでなんだよなと翆は笑った。
もちろん沙希亜だけでなく凛音も凄まじいほどの美人で、きっと父も見惚れるんだろうなとは思う。
まあ自分の彼女に見惚れる父の姿は見たくないが、それでもおかしくないほどにサキュバスの魅力はレベルが違うのだ。
「風呂行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
それから風呂に向かい、体を流して湯船に浸かった。
色々あったなと思い返していると、ぼんやりと目の前が歪んで沙希亜が全裸の状態で現れた。
「こんばんは翆君。さっきぶりね?」
「あぁ沙希亜か……疲れてんのかな」
浴室に彼女が居るわけがないので疲れているのかと目を擦る。
しかし翆は忘れているのだろうか、以前これは夢だと判断して沙希亜と思う存分致してしまったことを。
つまり、彼女は紛れもなく本物だ。
「……相変わらず綺麗な体してるなぁ」
「ふふ、ありがとう」
「おいで沙希亜」
「えぇ!」
沙希亜は思いっきり翆に抱き着いた。
二人が湯船に入ったことでお湯が溢れていくが、二人は一切気にせずに抱きしめ合っている。
「こうして誰かとお風呂に入るのは幸せなことね。ポカポカしてくるもの」
「確かにな。こんな場面を見られたら大変だけど」
流石に両親には見せられないなと翆は苦笑した。
寝る前にひょっこり部屋に現れることには慣れていたが、こうして浴室に現れたのは初めてだ。
おそらく彼女たちは何処に居ても翆の近くに出てくることが出来るのは彼に逃げ場がないことを意味している。
「ま、それも良いか」
「翆君?」
目の前に極上の女が居るが、翆の心はとてつもなく落ち着いている。
お湯に浸かっているということで最大限にリラックスをしている証でもあり、ただただのんびりしたいから体の方も引っ張られているみたいだ。
「あの人はどうなったんだ?」
「あ~……そのね。たぶんまだ寸止め地獄を味わってるんじゃないかしら。母さん凄くノリノリでイジメてるから」
「へ、へぇ……」
「逆に見てるこっちが可哀想になってくるわね。あれ、私が逆の立場なら発狂して死んでしまいたいって思うくらいよ」
「そこまでなのか」
まあサキュバスの一番好きな行為を拷問に使われるようなものだし……翆は女じゃないので分からないが、かなり辛いんだろうなとは理解できる。
「あぁ……良いお湯ね」
「そうだなぁ……しかもいい匂いだ」
濡れた髪が肌に張り付き、色気が数倍増している沙希亜から良い香りが漂っているのだが、翆はさっきからずっとその香りを嗅いでいる。
沙希亜は一時も離れようとせずにジッとしているので、翆もそんな彼女を離したりはしなかった。
「?」
「あら?」
そんな時、ガチャッと脱衣所のドアが開いた。
どうやら洗濯物をタンスに仕舞っているようだが、浴室に沙希亜が居ることには気付いていない。
「湯加減はどう?」
「気持ち良いよ」
「そう、しっかり温まりなさいね」
「あいよ」
碧はそれだけ言って出て行った。
話しかけられた段階では少しドキッとしたものの、無事に沙希亜が居ることに気付かれることはなく安心した。
「ねえ翆君、今の私たちを見られたらどんな反応をするのかしら」
「まあビックリするだろうな。突然ここに沙希亜が居るんだから」
「そうよね。まずはそこに驚くわよね」
もしかしたら驚きすぎて倒れるかもしれないが。
さて、こうして体が温まってきたが翆はあっと声を出してあることを提案した。
「なあ沙希亜、尻尾とか出せるか?」
「え? うん大丈夫よ」
「帰りにしてもらったけど、俺もお返しにさ」
「あ♪」
にゅるりと尻尾が生えた。
それから沙希亜にしてもらったことのお返しをするように、翆は優しく尻尾や他の色んな部分に刺激を与えていくのだった。
数分もすれば沙希亜は表情を蕩かせてしまい、とても満足した様子で帰っていくのだった。
「……ほんと、贅沢な日々を送ってるよなぁ」
これも全て沙希亜たちと出会ってからだ。
あの時、こうして沙希亜の秘密を知らなければこのような関係になることもなかったらだろうしサキュバスのことも一生知ることはなかったかもしれない。
それはそれで平和な日々が続く証かもしれないのだが、今となっては沙希亜や凛音と出会わない世界はあまりにもつまらなさすぎると思えてしまう。
「俺も二人に染められたようなもんだよな」
つくづくそう思うと翆は頷くのだった。
後数週間もすればサキュバスの故郷へ向かうことになっているが、その前に友人たち含め沙希亜と遊ぶことになっている。
あまり心配はしていないが、無事に時間が過ぎるのを祈るしかない。
「……流石にみんなが居る傍で悪戯とかしないよな?」
いや、やっぱり微妙に心配になる翆だった。
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