いつの時代においても物流こそが要である。

月乃兎姫

第1話

 インターネットという、今の時代には決して欠かすことのできないインフラである。しかし、非常に便利なツールと言えども、現実を動かす一つの手段にすぎない。


 ECサイト……一般的には通販サイトと呼んでも差し支えない、新たな商売が今や国家をも上回るほど人々の生活に影響を及ぼしている。だが、それも物資のやり取りを円滑にするという意味合いでしかない。


 実際には小売店と運送業者とが物を受け取り配送し、我々の手元に届いている。これは20世紀初頭のパレット革命やコンテナ輸送に次ぐ、第三革命の巨大インフラを構築していた。


 日本国内においても、物流量は過去最大となり、業界全体が景気に沸いていると思われるだろうが、現実はそこまで甘くはない。……というのも、実は1個運ぶごとに重さや輸送距離、大きさなどにより輸送価格というものが決められているのだが、今やそれも世界規模の小売りを支配する企業が単価すらも勝手に決めてしまっているのが現状である。


 例えば、これまで個人事業主に1個あたり150円で運ばせ、1日あたり100個ほどの荷物をお客の元へ届け、売り上げで言えば1万5千円ほど。しかしそれも業者の囲い込みという手段で1日あたり定額2万円を支給し、毎日200個の品物を運ばせている。


 一見すると手取りが増えているように思えるが、よくよく計算すればこれまで3万円得られていたものが2万へと減額され、尚且つ輸送する手段(車両本体)や運搬費(ガソリン代その他)を考えれば、荷物1個あたりの単価は100円を遥かに下回ってしまう。


 これでは労働資本を買い叩かれているにすぎない。


 そうした中で人件費高騰の煽りを受けた運送業は、猫の手も借りたいほど忙しい状況下であるものの、猫の手を借りた結果は自らの存在意義をも苦しめているにほかならない。


 労働の対価である賃金を得てなお、人々は現代版奴隷労働を課せられているのだろうか?

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いつの時代においても物流こそが要である。 月乃兎姫 @scarlet2200

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