猫のワルツ

一色 サラ

第1話

 犬は猫に言った。


『そこにある。僕のご飯をとってくれ』


『いやよ。』 

 猫は、棚の上から犬を見下ろしながら、言った。猫に断れて、犬は困ってしまった。どうしても、食べてたい。


『君のシッポで、落とせるだろう』


『昼寝を邪魔しないで。』

 犬は猫にそう言われても、食べたい。犬は棚の上を見つめる。猫の隣に置かれているドックフードの入っている袋をじーと見つめて、どうやって下に落とすかを考える。


『そんなに食べたいのかい?』

猫は、呆れたように言った。


『食べたい!!』


『じゃあ、走って取って来ておいで』

 猫はシッポで袋を叩いて、一粒だけ出て来て、犬の後頭部を越えて行って、落ちた。それを走って、パクっと食べた。


また、袋を叩いて1粒が棚のすぐ近くに落ちた。それを、また犬は走って行って食べる。


『走りなさいよ』

 猫はワルツを奏でるように、リズミカルに袋を叩いていく。何粒もドックフードが部屋中に散らばっていく。犬はジャンプして、落ちそうな1粒を食べて、また違う所に落ちた粒を食べに行く。


 部屋中に、ドックフードまみれになって、犬は嬉しくなって、ソファの隙間やカーテンの下。テーブルの下にもぐって、パクパクと隠れているドックフードを食べに行く。いつの間にか夢中になって食べていた。



「ただいま」

ご主人が帰ってた。犬は慌ててしまった。食べたのがバレたら怒られる。


「なんで、ドックフードまみれになってるんだ。」

 ドックフードの袋が棚から床に落ちていた。もう棚には、猫の姿はなかった。


「チロ、何してるの?ダメでしょう。こんなに散らかして。」

 犬だけが怒られる結果となった。

 

 犬は猫の手を借りたことで、ご主人にすごく怒られてしまって、もう猫には何も頼まないと決めた。

 

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猫のワルツ 一色 サラ @Saku89make

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