第17話 オーク軍団襲来
「様子を見に行ってくる、その間にリリは弓の準備だ」
「わかったよ」
「リュウジは俺に付いてこい」
「は、はいっ」
エプロンを投げ捨て、ルリジオンはそう叫ぶと玄関を破るような勢いで家を出て行く。
その後ろを追いながら俺は背中に向かって謝罪を口にする。
「ごめんなさい。俺、知らなかったんです」
「そんなこたぁわかってる。謝罪は後でどれだけでも聞いてやっから後にしろ」
開拓村をぐるりと囲む丸太で出来た壁。
音が響いてくるのは俺がたどり着いた場所から見ると左側面あたりだろう。
「とにかく何匹いるか見てみねぇと作戦もたてらんねぇからな」
壁には何カ所か見張り台となる
そして音がする場所に一番近い
俺は小さく頷き返し、その後に続いた。
「……」
一足先に上ったルリジオンが、
そして絶え間なく続く衝撃音の正体が見えたとき、俺は自分の口から飛び出そうになった悲鳴を両手で口を抑えることで止めた。
丸太で組まれた壁に向かって、俺の体ほどもある腕を何度も振り下ろしているのは、昨日俺が倒したヤツよりも一回りデカいオークだった。
それだけでは無い。
「あいつぁお前が倒したオークの旦那と子供達だろうな」
五メートル以上はありそうな巨体のオークの足下。
そこには三体の子オークが雄叫びを上げながら手にした得物を振り上げている。
それぞれ二メートルほどはありそうな姿は、とても子供とは思えない。
「あれで子供なんですか?」
「生まれて一年も経ってねぇガキだな。まぁそれでも俺たちからすればバケモノにゃぁかわりねぇが」
「ど、どうしたら。あんなのに勝てる気がしませんよ」
「どうするってお前、こうなったら倒すしかねぇだろ」
何を当たり前なことを言っているんだという風にルリジオンが呆れた様に応える。
「あの魔石を返せば――」
「今更遅えよ。もう彼奴らは自分の家族を殺した犯人がここにいるってわかってんだから」
「そう……ですよね」
「もちろんお前にも戦って貰うからな」
ルリジオンはそう言って俺の胸を軽く拳で叩く。
そうだ、俺のせいでオーク達が襲ってきているのだから俺がなんとかしないといけない。
だけど……。
俺はあることに気がついてミストルティンのステータス画面を呼び出す。
『
ミストルティン
レベル:4
EXP:261 NEXT 350
形 態:デフォルト
モード:アドソープションモード
《アイテムスロット》
1:ノコギリ 2:金鎚(ランクA) 3:かんな
《スキル》
アドソープション・使用法理解・経験取得・性能回復・鑑定
』
わかってはいたけれどあの時俺がオークを倒すことが出来た短剣の名前はそこにはなく。
武器になりそうなのはノコギリと金鎚の二つだけだ。
しかしこの二つはあくまでも大工道具。
もちろん魔物と戦った
となるとルリジオンの武器をアドソープションさせてもらうことになるだろう。
「ルリ! 持って来たよ!」
オークが壁を殴る強烈な音が鳴り響く中、音と音の間を狙って
「来たか。おいリュウジ、急いでリリから弓と矢を貰ってきてくれ」
「はいっ」
俺は急いで階段を滑るように下ると下で待っていたリリエールから弓と矢筒を受け取る。
「ありがとうリリ」
「がんばってね」
「ああ、絶対にこの場所は守ってみせるよ」
俺はリリエールに心配掛けまいと不安を顔に出さない様に精一杯の笑顔で応える。
そして胸からミストルティンを取り出すと、早速受け取った弓に枝先を当て――
「アドソープション!」
オーク達と戦う力を得るための新たな力を
『アドソープションするために必要なスロットが足りません。アイテムを入れ替えるスロットを選択してください』
しかし慌てていたせいで俺は必要な前準備を忘れていたことをミストルティンの声に指摘された。
俺は声と同時に表示されたステータス画面のアイテムスロット欄に目をむける。
『
ミストルティン
レベル:4
EXP:261 NEXT 350
形 態:デフォルト
モード:アドソープションモード
《アイテムスロット》
1:ノコギリ 2:金鎚(ランクA) 3:かんな
《スキル》
アドソープション・使用法理解・経験取得・性能回復・鑑定
』
現状戦闘に使えないのは『かんな』だろう。
俺は急いで『かんな』の文字を指先で触れて削除と念じた。
同時に頭の中にミストルティンの声がまた響く。
『アイテム:複合弓 アドソープション完了――EXPを80獲得――得られた知識と経験をマスターに転送いたします』
どうやらこの弓は複合弓という名前らしい。
とにかくこれで武器は手に入った。
「リュウジ! 早くしねぇと壁が持たねぇぞ!」
激しい音にかき消されそうになりながら、
「今行きます!」
俺はそう返事をすると矢筒を肩に掛け、弓を片手に梯子を登り始めた。
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