第13話 ランクAの拾いもの
「それじゃあ早速だがここにある道具全部やってくれるか?」
昨日と同じごちゃ混ぜスープでの朝食を終えた後、俺はルリジオンに連れられて村の納屋へ向かった。
そこにはかつての開拓民が置いていったという農具や開拓のために必要な器具が入っているらしい。
「これを全部……ですか?」
「出来るんだろ?」
ルリジオンは納屋の中からいくつかの道具を引っ張り出すと地面に並べ、俺にその全てをアドソープションするように言った。
「実は一日に覚えさせられるのは今のところ二つまでっぽいんですよね」
「二つ? 昨日聞いたときは何でも覚えさせられるって言ってたじゃないか」
「何でもとは言ってませんよ!」
どうやらルリジオンは半分眠りながら人の話を聞いていた様だ。
俺も疲れでうとうとしながら話していたから、もしかすると俺が適当に返事をしたのかも知れないが。
「レベルアップすればもっとスロットも一日にアドソープション出来る数も増えるかも知れませんけど、今のところは二つまでです」
「なるほどね。で、レベルアップするにはどっちにしろその枝に覚えさせる必要があるんだろ?」
ルリジオンと話していてわかったことだが、元の世界の単語は自動的にこの世界の似た言葉に翻訳されて伝わるようで。
一々レベルの意味とかを説明しなくて良いのは助かる。
「そうですね。一応経験を沢山積んだものや凄い道具ほどもらえる経験値は高くなるらしいんですが」
最初にアドソープションを使ったとき、頭に流れ込んできたミストルティンの説明。
その中にあった説明だとそういうことらしい。
「伝説の剣とか凄い人の使った道具とか無いですかね?」
「そんなもん、こんな所にあるわけねーだろ」
「ですよねぇ」
俺はとりあえずルリジオンが並べた器具を一つ一つ見ながら考える。
全てかなり使い込まれているものばかりで新しいものは一つも無い。
この開拓村が捨てられてからどれくらい経っているのかはわからないが、見かけだけならそれほど酷いものは無さそうだ。
たぶんどれをアドソープションしてもそれなりの経験値は得られるだろう。
「とりあえず今のところ一日二個までなんで、今日使う予定の道具があるならそれにしましょう」
「しゃーねーな」
ルリジオンはボサボサの頭をがりがりと掻きながら、器具の山から二つのものを引きずり出した。
一つはノコギリ。
もう一つは大きめの金鎚で、どちらも古びてはいるが綺麗に錆は落とされている。
「今日は兄ちゃんのベッドを作ろうと思ってんだよ」
「なるほど。それじゃあ早速やりますね」
俺は胸ポケットからミストルティンを取り出すと、まずはステータス画面を表示する。
『
ミストルティン
レベル:2
EXP:19 NEXT 20
形 態:デフォルト
モード:アドソープションモード
《アイテムスロット》
1:魔法灯 2:古びた短剣
《スキル》
アドソープション・使用法理解・経験取得
』
そしてアイテムスロットに並ぶ二つのアイテムを順番に指で触りながら「クリア」と頭の中で念じる。
これでアイテムスロットは両方とも「なし」に戻った。
「いちいち空けないといけないのは面倒だけど勝手に入れ替わられても困るしね」
次に俺はノコギリにミストルティンの先端を当ててスキルを発動させる。
「アドソープション!」
発動と同時に脳内に聞き慣れた声が響く。
『アイテム:ノコギリ アドソープション完了――EXPを9獲得――得られた知識と経験をマスターに転送いたします』
思ったより多いの経験値が得られたことに少し驚く。
同時に流れ込んできた経験によると、この開拓村に新品で持ち込まれてからこのノコギリは余り使われてなかったようで。
それなのに例の短剣よりも多い経験値が得られた理由は簡単だ。
「経験取得のスキルのおかげだな」
どうも『経験取得スキル』はアドソープションしたものの経験を得るだけでなく、同時にそれを経験値にプラスしてくれるらしい。
正直、かなり経験を積んでいた短剣で8しか経験値がもらえなかったことで先が思いやられたが、この先必要経験値が上がってもなんとかなりそうになってホッとしている。
早速おれはもう一度ステータスを確認してみることにした。
『
ミストルティン
レベル:2
EXP:19 NEXT 20
形 態:デフォルト
モード:アドソープションモード
《アイテムスロット》
1:ノコギリ 2:なし
《スキル》
アドソープション・使用法理解・経験取得
』
次のレベルまで残り1。
今度のレベルアップではどんな能力が追加されるのだろうか。
「次、行きます! アドソープション!」
俺は期待に胸膨らませながら、古びた何の変哲も無い金鎚をアドソープションし――
『アイテム:金鎚(ランクA) アドソープション完了――EXPを200獲得――レベルが上がりました。新しく『性能回復』が追加されました――レベルが上がりました。新しく『鑑定』が追加されました。スロットが追加されました。得られた知識と経験をマスターに転送いたします』
頭に響いたそんなメッセージに、俺は一瞬何が起こったのか理解出来なくなったのだった。
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