にゃにゃにゃ? にゃんにゃん!

ぬまちゃん

ほんま、猫の手ぇも、借りたいわぁ

 しもぅた!

 先週から先生に頼まれてた準備室の整理整頓すんの忘れてたわー。

 ついつい、明日、明日、て延ばしてたら、期限が来てしもた。こんなん今日中に終わらないやん。どないしょ?


 そーや!

 こない時こそ『猫の手』ぇ借りればええんちゃう? 確か魔法少女の魔法の中にネコを使役するのがあったと思うたんやけど。


 * * *


 あー、今日もいい天気だにゃぁ。


 校舎一階の南側に面した教室からグラウンドに出るためのコンクリート製の『たたき』は、暖かい日差しを遮る物もなく、学校周辺を縄張りにしている猫のクロにとってはお気に入りの場所だった。


「にゃーん、にゃにゃにゃーん」


 うん、なんだにゃ。人間の建物の中からお仲間の鳴き声が聞こえて来るにゃ。俺様のにゃわばりに出張って来るにゃんて、他所よそもにょネコかにゃ?


 ──と思ったら、扉が開いて人間のメスが出て来て俺様を見てるにゃ。もしかしたら、さっきの鳴き声ねこごはあの人間が喋ってるにょか?

 なんだにゃ、いきなり俺様の前に腰を下ろして俺様の頭を撫でようとするにゃ。

 しかもスカートの隙間からパンツ見えてるにゃ。もう少し恥じらいを持つのにゃ人間よ、お前もメスにゃろう!


「にゃにゃ、にゃにゃ、にゃーん」


 にゃに、にゃに……猫の手を貸してくれ?

 にゃに言ってるんだこの人間は。俺様の手だけ身体から外して貸せるわけにゃいだろう。この人間はアホちゃうのかにゃ?


「にゃー! にゃん。にゃんにゃー」


 にゃに、そーじゃにゃくて。身体を貸せ。手伝えってことにゃって? そんにゃらそうと、最初からそう言えにゃ。まったく最近の女子高生にょしこうせいというヤツは語彙力が無いにゃぁ。

 でも俺様、猫は自由気ままに生きるにょが信条にゃから、オマエの指図は受け無いにゃ!


「にゃにゃ! にゃーん。にゃんにゃか、にゃんやにょ」


 にゃんだ、美味しい餌を奢ってくれるのかにゃ。まあ、そんにゃら、協力してやってもいいにゃ。んで、にゃにをするんにゃ?


 * * *


「ミャー、ミャミャ?」


 そーやそーや、その荷物をコッチに持って行ってーな。それからコッチの荷物はアッチや。ちゃうー、そっちやなくてアッチやねん! もー、ちゃんと話聞いとるん?


「ミギャー、ミャミャ!」


 なんよ、もう疲れたからエサよこせやて? まや、そないに働いておらへんやない!


「ミャァー、ミャァミャァ」


 えー、猫は自由気ままに生きるのが当たり前やから細かい指示すんにゃって。そないなこと言わんといて、手伝ってぇや。


「ミギャ!」


 ちょー待ってえなぁー。逃げんといてー。


 せっかく見つけて、魔法少女の魔法で手懐けて、貴重な戦力になるハズだった『猫の手』は、結局は中途半端に準備室を散らかして、彼女の挫折感と大量の抜け毛を残して……去って行った。


 どーしょう。こんなん絶対に今日中には終わらへん。もういっそばっくれてもーか……


 * * *


「魔美さん、どう? お片付け終わった」


 魔美が途方に暮れていると、様子を見に彼女のクラスメートである野辺良が準備室を訪れた。


「野辺良さん、ええところに来てくれたわー。もう大変なことになってもーたわ」

「魔美さん、何これ! もうメチャクチャじゃないの。まるで猫が部屋中を荒らしまわった見たい……」


 野辺良は口に手を当てて驚きを隠せない。


「えへへ、チョット色々あったんよ。猫の手を借りたらこんなんになってもーて」

「え? 猫の手? ああ誰かお手伝いしてくれる人がいたのね。でも、その人はお掃除途中で逃げちゃったのか。そーいう事ね。分かったわ、ワタシも手伝ってあげるから!」


 魔美の言葉を途中でさえぎって勝手に納得した野辺良は、準備室に入ると制服の袖をぐいいとまくり、ムフッと鼻息荒く仁王立ちする。


「あれ、野辺良さん達どうしたの? うわぁ、ここの準備室って凄い惨状だね。俺、今日は暇だからさ。力仕事だったら手伝おうか」


 そこに同じくクラスメートの角川も現れて制服の上着を脱ぎ出した。


 * * *


 準備室の外ではサッサと逃げ出した猫が美味しそうに餌を食べていた。そんな姿を見て、疲れた身体に鞭打って掃除を始めた魔美は、フッとつぶやいた。


 あーあ、次は自由気ままな猫の手じゃなくて、飼い主の言ったことをちゃんと聞いてくれる犬の手を借りちゃおう。

(いやいや、魔美さん。反省するのはそこじゃないでしょう? もっと計画的に整理整頓をやりましょうね。作者より……)


(了)

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にゃにゃにゃ? にゃんにゃん! ぬまちゃん @numachan

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