第12話 サラサ・ガルレオン


【アイリス視点】


 ふぅー、ガルレオン族の方々は強いと聞いていましたが大したことはありませんね。


 この目の前で倒れている方、確かに力は強い。ですが、こんなに遅い動きでは本気を出すまでもありません。


 アイリスは周りを囲っているガルレオン族を睨みながら見渡す。


 さて、他の方はどうでしょうか?


 次に彼女はエリシアをチラリと見た。エリシアは目が合うといつもの優しい微笑みで頷く。


 約50年ぶりの訪問ということもあって、お祖母様を知る人も少ないのでしょう。

 お祖母様はわたしの戦闘を何も言わずに見ていました。ということはお祖母様はガルレオン族の戦力を把握したいのでしょうか?


 それは今回の訪問の主旨に沿います。


「他に闘いたい方がおりましたら、わたしが相手になりますよ!」


 アイリスは周り睨みながら短剣を構える。


「なッ!なめやがって!」

「いくぞッ!」



【ジョージ視点】


 アイリスさんとガルレオンの男達がぶつかろうとしている。

 一人やっつけちゃったしな。くそ、話し合いはもう無理か。

 俺も一緒に戦う覚悟を決めた。


 しかし戦闘開始寸前、女性が一人、俺達を包囲していた人だかりをジャンプで飛び越え、アイリスさんと男達の間に着地した。


 女性?いや少女か?胸があり、鋭い眼光だから大人っぽく見えるが、顔や肌には幼さがある。

 そして、他の村民と大きく違うのは髪の色だ。彼女は銀色の長い髪をなびかせている。


「……サラサ?」


 俺の真横にいたエリシアさんが呟き、少女の耳がピクリと動く。


 んっ?サラサ?髪がサラサラってことか?

 アイリスさんはサラサラだけど、あの少女はどらかと言えばボサボサだが……。


 銀髪の少女はエリシアさんに向かって、


「おい、お前。なぜオレの名前を知っている?」


「ちょっ、あなた。お祖母様に向かってお前だなんて。訂正してください!」


 少女がエリシアさんを睨みながら尋ねると、尽かさずアイリスさんが少女を睨み、食い下がる。


「お祖母様ぁ?なに言っている。どう見てもお前の姉か妹だろう?」


 そうだね。姉妹にしか見えないよね!俺もそう思ったよ、最初は!


「サラサというお名前なのですね。……そうですか」


「つかガルレオン語使えたんかーいッ!」


 流暢なガルレオン語を話すエリシアさんに思わず突っ込みを入れてしまった。

 当たり前か。アイリスさんができるのにエリシアさんができない訳がない。


「ふふふ」


 相変わらずの微笑みだが、何故だろうか、どこか悲壮感があるような気がする。


「答えになってないな。――それより、お前強そうだな?オレとやろう?」


 少女、サラサさんはアイリスさんに向かって槍を構えた。そして口元がニヤリと笑う。


「訂正してくれないのですね?いいでしょう。相手になります」


 短剣を構えたアイリスさんはまるでゴミ虫を見るような目でサラサさんを見ている。


 アイリスさん、まじで恐い顔するな。エリシアさんをバカにするのだけはやめよう。


「オレの槍を躱さるかな!?ガッ!」


「なっ?」


 突きを横に飛んで躱そうとしたが、槍の軌道がアイリスさんの避けた方向に曲がって、脇腹を掠めた。脇の服が裂け、擦り傷を負う。


 不思議な攻撃だ。あれは反応が良いとかではない。

 アイリスさんが躱す方向を予め分かっていたような、そんな感じだった。


「お前、早いな」


 ニヤりと笑うサラサさん。

 アイリスさんとサラサさんは再び武器を構える。


「ふふふ。あの歳で」


 横にいたエリシアさんが呟いた。それから、


「アイリスっ!本気でやりなさい。でなければ、その子の槍は躱せませんよ」


「はい!お祖母様ッ!」


 アイリスさんは後ろに飛んでサラサさんから距離を取った。




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