第13話 初戦闘
【エリシア視点】
ジョージやアイリスがガルレオン族と睨み合い、喧騒に包まれるなか、エリシアはずっとずっと昔の記憶を思い出していた。
現在150歳の彼女が、まだ20代だった頃の記憶――。
金色の瞳、銀色の髪、褐色の肌、まだ3歳の幼いガルレオン族の少女がエリシアを呼ぶ、
――「ねぇ、エィシア」
その少女が5歳になり、悲しそうな顔で、エリシアを呼ぶ、
――「ねぇ、エリシア」
12歳になり少し生意気になった少女がエリシアを呼んだ、
――「ねぇえ、エリシアっ!」
大人になり、結婚した少女がエリシアに、
――「ありがとう……、母さん」
サラサ……、ふふふ、懐かしいですねぇ………。
【ジョージ視点】
「ねぇ、エリシアさん!」
「えっ?」
「ボーっとしてる場合じゃないですよ!どうするんですか?この状況」
「そ、そうですね……、やっつけちゃってください。ふふふっ」
と朗らかに言うエリシアさん。
「いや、喧嘩とかしたことないんですよ、俺」
「あっ、でも殺しちゃダメですよ」
エリシアさんは可愛く人差し指を立てる。
「安心して下さい。殺されるのは俺の方ですから!って人の話し聞いてますか?」
「ジョージさんなら大丈夫ですよ!」
「……」
大丈夫なわけねーだろうがッ!ガルレオン族の人達、皆身長は2メートル超えてるし、マッチョだし、槍持ってんだぞッ!
しかも皆さん褐色の肌に赤い刺青入ってて、まぁ強そうッ!
エリシアさんも強いのかな?アイリスさんがヤベーのは分かったけど、エリシアさんは歳だし動けなさそうだよな。
くっそッ!……もうやるしかないじゃないか!
「かかってこいやーッ!」
「ふふふ」
俺は叫び、エリシアさんは笑った。
そして――、槍を持った男達が俺を囲み突いてくる。槍の躱し方なんて知らない俺は――、
「ガッ!」――ボフッ!
「痛いっ!」
「ガッ!」――ズボッ!
「やめてっ」
ゴンッ!
「いってっ!」
ほぼ全ての槍が俺に命中した。
「こいつ、かてーぞ!槍が通らねぇッ!」
「俺が殺るっ!おらッ!ガッ!」――バキッ!
「いぎゃあ゛ッ!」
「全然効いてねーな?」
いやいや、滅茶苦茶痛いから!何言ってのコイツ!バッカじゃないのッ!?
「めっちゃ効いてますよ!ほらっ!ここっ!ここ血が出てますよッ!見てくださいよッ!」
俺は服を捲って脇腹を見せた。
強化された俺の体には、石だか骨だか分からないが、この槍は刺さらない。
「んだよ!かすり傷じゃねーかッ!」
そう言われて俺はブチ切れた!
「これは立派な犯罪だッ!覚悟しとけよッ!傷害罪で訴えてやるからなッ!」
「こいつ何言ってやがる!皆で一気にかかるぞっ」
「「「おおおおおッ!」」」
どうしてこうなったッ!?
俺は後ろを振り返った。
「ジョージさーんっ、頑張れーっ!」
エリシアさんが嬉しそうに応援している。
「……くそ」
ここで逃げる訳にはいかない。
俺が逃げれば次に殺られるのはエリシアさんだ。集中しろっ!とにかくよく見て躱すんだ。
【アイリス視点】
アイリスは距離を取り、全身に魔力を纏う。これで先程よりも数段早く動けるようになった。
目に魔力を集中させ、相手を見ると、サラサがかなりの量の魔力を纏っていることがわかった。
アイリスは思考を巡らせる。
あの目の魔力量、尋常ではありません。おそらくあれが未来を見る力――。
ガルレオン族の〈千視界〉なのでしょう。
「へぇー、お前も魔力を纏えるんだな。けどその程度じゃオレには勝てないぜ。ほらっ、ぶっとばしてやるからかかってこいよ」
サラサは片手を前に出し指をクイクイと動かしアイリスを挑発した。
「それはどうでしょうか?勝てないのはあなたの方ですっ!」
もう怒りました。ここはレベル4翠風の攻撃魔法で一気にかたを付けたいところだけど、……それでは周りの建物を壊してしていまいますね。
なので、使う魔法はレベル3。
「我に眠る風の精霊よ その力を解き放て
――烈風
サラサを中心に回る土埃が発生したと思った瞬間、それは辻風へと変わる。暴風と砂塵がサラサを襲い、彼女の体が宙に投げ出された。
「こんなもん! 効くかッ!」
サラサの纏う魔力が膨れ上がった。魔力で防御力を上げているのだ。
アイリスはすぐに間合いを詰める。
わたしが一つの詠唱で放てるのは魔法二つまで。『塵旋』の効果が終わり、宙に飛ばされたこの子の落下に合わせて……。
「――烈風
アイリスがカ○ハメハの格好をすると、手から風の砲弾が飛び出した。
サラサは空中で槍を横にし、防御の体勢を取る。
「このっ!」
「その程度では防げませんよ?」
そこに砲弾が着弾。サラサが吹き飛んだ。
吹き飛ばされたサラサが槍を地面に突き立てて立ち上がった。
「くっ……、ぃってぇー」
……頑丈な方ですね。
「これで分かったでしょう?わたしの方が強いんですから!お祖母様に言ったことを訂正してください」
「ちっ、変な技を使いやがって。勝負はまだこれからだろっ!」
「ふぅー、困った人ですね。いいでしょう。負けを認めるまで相手になりますよ」
【ジョージ視点】
目を開けてよく見る。足を使ってとにかく動く。もっとよく見ろ。槍だけじゃなく、相手の動作や視線もよく見て、槍の軌道を予測する。
「ガッ!」――サッ!
「おらッ!」――サササッ!
「あいつまた躱したぞっ!」
「さっきまでとは別人の動きだ!」
いける!躱せるぞ!
相手は数人で連携して連続の突きを繰り出すが、見える!こうなったらひたすら躱してやる!
ガサガサ ガサガサ ガサガサ
「こいつかなり素早い。黒い昆虫のような動きだッ!」
「けど、なんで反撃してこねーんだ?」
何で反撃しないのか、だとう!?そんなの殴って良いのか分からないからだ。
流石に裁判になれば正当防衛が成立すると思うが、些細なことで渡航者を貶める国もある。ここは手を出さない方が……、
「こっちの女は俺がやる!ガッ!」
回り込んでいた男がエリシアさんを槍で突こうとしている。
「のやろぉおおおッ!」――ボフッ
「ぶべっ!」
全力のダッシュで駆け寄って、脇腹に飛び蹴りを食らわせてやった。
男は数メートふっ飛び悶絶している。
……俺やっちゃったぁーッ!!
くそ!もうどうにでもなれッ!
「かかってこいやーッ!」
俺は叫び、エリシアさんはニコニコ笑っていた。
そして、再び戦闘を始めようとしたその時――。
「ガァアアアアアアアアッ!」
大気を揺らす獣の咆哮。その場にいた誰もが動きを止めた。
人だかりが割れて数人の男達がこちらに向かって歩いてくる。そいつらは他のガルレオン族と比べて体がでかい。
身長もそうだが、全身が筋肉で膨れ上がり横幅も普通じゃない。
終わった。こんなやつら勝てる訳がない。
先頭を歩いてたのは初老の男。身長は約250センチ、超マッチョ。俺5人分くらいの質量はある。
男は俺達の前で止まると、片膝を地面に付き
そして禿げ散らかした頭をこちらに向けて下げる。
「お久しぶりです、エリシア様。我々ガルレオンの村へご足労いただき、ありがとうございます」
「堅苦しい挨拶はやめてください。久しぶりですね。ジン」
し、知り合いきた、これッ!!
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