第6話 エリシアとアイリス
巨大な鳩に乗った二人はムーミ○のス○フキンの様な緑を基調とした旅人然といった格好だ。
一人は緑の三角帽を目元まで被り、もう一人は金色の髪を背中まで伸ばしている。
二人の華奢な肩が女性であることを思わせ、現在俺は全裸なのだが、そんなことは気にしてはいられない。
あの鳩が行ってしまえば、また一人になってしまう。
「おーい! おーい!」
片手で股間を隠しながら、手を振り駆け出すと、
ヒュッ!――「うおッ!」
俺に向かって矢が放たれ、それをギリギリで避けた。金髪の方が弓を構えている。
「わたしの矢をかわすとは……」
まだまだ距離はあるが声が聞こえた。聞いたことのない言葉だが、何故か日本語を聴いているように理解できる。
彼女はすぐに二の矢を放とうと構える。
「わー!わー!待って下さーい!俺は敵ではありませーん!」
彼女が使った言語で大声で呼び掛けた。
もう股間は丸出しで、両手を振って敵意がないことを示す。
無意識に言葉を使えたのはリザさんのおかげだ。
彼女は俺を鋭い視線で睨み付ける。
そして、その視線がチラリと俺の股間に向かい。みるみる顔が赤くなった。
その反応を見て、俺は空笑いを浮かべながら、両手で股間を隠した。
「えっと、服は今乾かしてて……。だから変態じゃないんですぅーッ!」
「わたしは風族のアイリス・フォリス!敵でないと言うのなら、聞きたいことがあります!でも、変態ではないと言うのは――、信じられませんッ!!」
美しくよく通った声で、金髪の彼女は顔を真っ赤にして言い放った。
◇
「ふふふ、アイリス、弓をしまってください」
「……分かりました」
「こんにちは。私はエリシア・フォリスと申します。人族の方、お話しする前に先ずは服を着られてはいかがでしょうか?」
帽子の方のエリシアさんはにこにこしていて優しい口調だ。
「急いで着てきますのでっ! 信じてくれて感謝します!」
「信じてませんからッ!」
アイリスさんには否定されたが、話は聞いてもらえそうだ。俺は服を干した方へ駆け出した。
「まぁまぁ。ポッポルもご飯に夢中ですから、私達も食事にしましょう」
「はい。お祖母様」
◇
服を着て戻ると二人は草むらで何かをしている。
「料理ですか?」
「ええ、食事の準備をしております」
近くに来て気付いた。アイリスさんとエリシアさんはエルフだ。二人とも伸びて先の尖った少し長い耳をしている。
そして今、エリシアさんの横にいるが、彼女は物凄く美人だった。きめ細かい白い肌に、華奢な体、美しい金髪を三つ編みにしている。
おっとりとした優しい雰囲気で目を閉じて、にこにこしていた。と言うか、目を閉じて熊肉を小さく切っり、山菜を小さくむしって煮えた鍋に入れている。
見えているのか?
「摘んできました」
「たくさん取れましたね。どれ?」
アイリスさんが篭に草を入れて持ってきた。それをエリシアさんが品定めしている。
「質の良いものばかりですね。短期間でよく覚えました。偉いですよアイリス」
「えへへへへ」
誉められたアイリスさんは嬉しそうにしている。アイリスさんも凄く美人で笑うと超可愛い。長い金の睫毛と宝石のように美しいエメラルドグリーンの瞳には目を奪われる。
エリシアさんは草を鍋に入れて、それからカレー粉みたいな物とチーズみたいな物を鍋に入れていた。
「さあできました。人族の方も良かったら一緒にたべませんか?」
「さっきからずっと食べたそうな顔をしていましたね」
とジト目のアイリスさん。
「えっと、俺も貰っていいんですか?」
「ええ、それに貴方様が仕留めたお肉ですからね」
「えっ??本当ですかお祖母様っ?」
「おっ、お、お祖母様ぁ??」
「ふふふ、まぁまぁ冷めない内に食事にしましょう」
ということで食事になった。
◇
俺はクチャクチャと咀嚼音を出しながら、
「いやぁーこれマジうまいっすねー!あっ、すみません。遅くなりましたが、俺はジョージ・ミナミという者です。ところでお祖母様ってどういうことですか?」
「エリシア様はわたしのお祖母様なんですよ」
「ええ、アイリスは私の可愛い孫です」
エリシアさんは凄くにこにこしてる。
てっ、嘘だろ!!どう見ても姉妹にしか見えないんですけども!
◇
食事をしながら、転移から始まりこれまでの事を全て話した。
「遭難ですか?……ソウナンですか」
「ぷっ、くくく、ふふふふ」
エリシアさんがギャグを言ったのか、アイリスさんがウケている。
「えっ?ええ、食べる物もなくて本当に困っていました」
「くくく……。(キリッ)しかし俄には信じ難いですね。転移なんて」
笑いをこらえたアイリスさんが真面目な表情に切り替え、疑り深い視線を俺に向ける。
「それで今朝、肉を取られたと?」
とエリシアさん
「えっ、そこっすか?そこはどうでもいいですけど」
そんことよりも転移だろ?と俺は思った。
ここでエリシアさんは何かを考えているような真面目な顔をする。
「なるほど……。朝食を取られて超ショックと言う訳ですね!ふふふ」
「ええ?……まぁ、はい?」
いやいや上手いこと言ってるけども!
ちょっと突っ込んでよアイリスさん!と彼女の方を見ると口を抑えて笑いを堪えている。
「私滑っちゃいましたか?」
「いえっ!凄く面白かったです。お祖母様っ!」
涙目のアイリスさんは真面目な顔でエリシアさんをフォローする。
二人は俺を見た。お前はどうなんだ?と言いたいのだろう!
「いやぁー、はい、まぁ、面白かったです。あははは……はは……」
俺は曖昧な笑顔で答えた。
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