第6話 エリシアとアイリス



 巨大な鳩に乗った二人はムーミ○のス○フキンの様な緑を基調とした旅人然といった格好だ。

 一人は緑の三角帽を目元まで被り、もう一人は金色の髪を背中まで伸ばしている。


 二人の華奢な肩が女性であることを思わせ、現在俺は全裸なのだが、そんなことは気にしてはいられない。

 あの鳩が行ってしまえば、また一人になってしまう。


「おーい! おーい!」


 片手で股間を隠しながら、手を振り駆け出すと、


 ヒュッ!――「うおッ!」


 俺に向かって矢が放たれ、それをギリギリで避けた。金髪の方が弓を構えている。


「わたしの矢をかわすとは……」


 まだまだ距離はあるが声が聞こえた。聞いたことのない言葉だが、何故か日本語を聴いているように理解できる。


 彼女はすぐに二の矢を放とうと構える。


「わー!わー!待って下さーい!俺は敵ではありませーん!」


 彼女が使った言語で大声で呼び掛けた。


 もう股間は丸出しで、両手を振って敵意がないことを示す。

 無意識に言葉を使えたのはリザさんのおかげだ。


 彼女は俺を鋭い視線で睨み付ける。

 そして、その視線がチラリと俺の股間に向かい。みるみる顔が赤くなった。


 その反応を見て、俺は空笑いを浮かべながら、両手で股間を隠した。


「えっと、服は今乾かしてて……。だから変態じゃないんですぅーッ!」


「わたしは風族のアイリス・フォリス!敵でないと言うのなら、聞きたいことがあります!でも、変態ではないと言うのは――、信じられませんッ!!」


 美しくよく通った声で、金髪の彼女は顔を真っ赤にして言い放った。





「ふふふ、アイリス、弓をしまってください」


「……分かりました」


「こんにちは。私はエリシア・フォリスと申します。人族の方、お話しする前に先ずは服を着られてはいかがでしょうか?」


 帽子の方のエリシアさんはにこにこしていて優しい口調だ。


「急いで着てきますのでっ! 信じてくれて感謝します!」


「信じてませんからッ!」


 アイリスさんには否定されたが、話は聞いてもらえそうだ。俺は服を干した方へ駆け出した。


「まぁまぁ。ポッポルもご飯に夢中ですから、私達も食事にしましょう」


「はい。お祖母様」


 巨鳩ポッポルは一連の間、夢中になって熊を食べていた。





 服を着て戻ると二人は草むらで何かをしている。


「料理ですか?」


「ええ、食事の準備をしております」


 近くに来て気付いた。アイリスさんとエリシアさんはエルフだ。二人とも伸びて先の尖った少し長い耳をしている。


 そして今、エリシアさんの横にいるが、彼女は物凄く美人だった。きめ細かい白い肌に、華奢な体、美しい金髪を三つ編みにしている。


 おっとりとした優しい雰囲気で目を閉じて、にこにこしていた。と言うか、目を閉じて熊肉を小さく切っり、山菜を小さくむしって煮えた鍋に入れている。


 見えているのか?


「摘んできました」


「たくさん取れましたね。どれ?」


 アイリスさんが篭に草を入れて持ってきた。それをエリシアさんが品定めしている。


「質の良いものばかりですね。短期間でよく覚えました。偉いですよアイリス」


「えへへへへ」


 誉められたアイリスさんは嬉しそうにしている。アイリスさんも凄く美人で笑うと超可愛い。長い金の睫毛と宝石のように美しいエメラルドグリーンの瞳には目を奪われる。


 エリシアさんは草を鍋に入れて、それからカレー粉みたいな物とチーズみたいな物を鍋に入れていた。


「さあできました。人族の方も良かったら一緒にたべませんか?」


「さっきからずっと食べたそうな顔をしていましたね」


 とジト目のアイリスさん。


「えっと、俺も貰っていいんですか?」


「ええ、それに貴方様が仕留めたお肉ですからね」


「えっ??本当ですかお祖母様っ?」


「おっ、お、お祖母様ぁ??」


「ふふふ、まぁまぁ冷めない内に食事にしましょう」


 ということで食事になった。




 俺はクチャクチャと咀嚼音を出しながら、


「いやぁーこれマジうまいっすねー!あっ、すみません。遅くなりましたが、俺はジョージ・ミナミという者です。ところでお祖母様ってどういうことですか?」


「エリシア様はわたしのお祖母様なんですよ」


「ええ、アイリスは私の可愛い孫です」


 エリシアさんは凄くにこにこしてる。


 てっ、嘘だろ!!どう見ても姉妹にしか見えないんですけども!




 食事をしながら、転移から始まりこれまでの事を全て話した。


「遭難ですか?……ソウナンですか」


「ぷっ、くくく、ふふふふ」


 エリシアさんがギャグを言ったのか、アイリスさんがウケている。


「えっ?ええ、食べる物もなくて本当に困っていました」


「くくく……。(キリッ)しかし俄には信じ難いですね。転移なんて」


 笑いをこらえたアイリスさんが真面目な表情に切り替え、疑り深い視線を俺に向ける。


「それで今朝、肉を取られたと?」

 とエリシアさん


「えっ、そこっすか?そこはどうでもいいですけど」


 そんことよりも転移だろ?と俺は思った。


 ここでエリシアさんは何かを考えているような真面目な顔をする。


「なるほど……。朝食を取られてと言う訳ですね!ふふふ」


「ええ?……まぁ、はい?」


 いやいや上手いこと言ってるけども!

 ちょっと突っ込んでよアイリスさん!と彼女の方を見ると口を抑えて笑いを堪えている。


「私滑っちゃいましたか?」


「いえっ!凄く面白かったです。お祖母様っ!」


 涙目のアイリスさんは真面目な顔でエリシアさんをフォローする。


 二人は俺を見た。お前はどうなんだ?と言いたいのだろう!


「いやぁー、はい、まぁ、面白かったです。あははは……はは……」


 俺は曖昧な笑顔で答えた。






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