第3章ー⑧

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スキル「ウォーキングLv24」

効果「どんなに歩いても疲れない(一歩歩くごとに経験値1取得)」

経験値カウンター 38432/210000

スキルポイント 12


習得スキル

【鑑定Lv 7】【鑑定阻害Lv 2】【身体強化Lv 7】【魔力操作Lv 5】【生活魔法Lv 5】【気配察知Lv 7】【剣術Lv 6】【空間魔法Lv 3】【並列思考Lv 3】【自然回復向上Lv 2】

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 改めてスキルを確認する。

 スキルポイントに余裕が出来たが鑑定阻害には振らずにキープしておくことにした。

 護衛の依頼で一緒に行動する間は新しいスキルは必要ないと思うが、問題は一人になった時。だから準備は必要。

 方針としてはソロで活動する。護衛任務が終わったら、事情を話してルリカたちについていくのも手かと考えたが、気配察知のレベルが上がったことで色々と分かったことがある。だから一緒に行くのはやっぱり危険だと判断した。


 では、それを踏まえてどうすればいいか……習得可能スキルを確認して決めた。


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NEW

【気配遮断Lv 1】【錬金術Lv 1】

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 気配遮断は気配を消して相手がこちらを認識出来ないようにする。相手の力量により効果が出ない時がある。

 錬金術は素材を使用してアイテムを作成する。MPを多く消費することで品質を上げることが出来る。

 ポーション目的で習得したが、他にもナイフや魔法のつえ、ランタンも作れるのか。出来ることは多いようだが、それには素材を集める必要があるみたいだ。色々な場所に素材集めに行くのも悪くないか。むしろ今後のことを考えたら、俺の目的にも合っているような気がする。


 ひとまずはこれぐらいかな、と思い、重要なスキルを忘れていたことに気付いた。

 料理は素材を使用して美味しい料理が作れるようになる。アシスト機能あり?

 戦闘には向かないし、覚えたからといってそれでお金が稼げるわけじゃない。

 けど、だが、しかし。自分で料理して、美味しいものが食べられるようになったら、生活レベルの向上につながるのでは? と思わずにはいられない。それにこれを覚えたら、次の護衛任務で役立つかもしれない。戦闘で活躍出来るかは分からないが、これなら確実に貢献出来るはずだ。

 向こうでも料理をしていたのである程度は出来るかもと思っていたが、材料と調味料の壁を前に思うようにいかなかった。材料は未知の食材が多いし、調味料も豊富にあるわけじゃない。けどアシスト機能があれば、それを補ってくれるような気がする。ルリカから合格点はもらえたが、甘い採点だったような気もするし。

 三〇分ほど悩んだ末、料理を覚えることにした。そもそも魔王を倒すわけでもないし、この世界で死なないように生きて、それなりに楽しく生活出来ればいい。

 それなら快適な生活を送るためのスキルを取ってもいいんじゃないか。と、自分に言い聞かせた。


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NEW

【料理Lv 1】

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 明日は錬金術と料理のスキルを使うために、薬草採取に行くのもいいかもしれないな。



 翌日は薬草の採取依頼を受けて、初めての薬草採取の時に行ったあの森に向かった。

 ギルドに納品する分の薬草を採取出来たら、次は錬金術で使う薬草の採取を行う。最初は上手くいかないかもしれないし、ポーションを作っても売り物になるか分からない。自分で消費すればいいと思うが、回復ポーションのお世話にそんなになりたいとは思わない。

 マナポーションやスタミナポーションなら、スキルを使うことで消費するから自分でも使いそうだけど。

 一応練習用の薬草も保存袋に詰めて、ダミーのバッグ経由で収納魔法(アイテムボックスと名付けるか)の中に入れる。これで幾分か劣化が防げると思うが、それでも早めに使うに越したことはないと思う。一応幾つかに分けてあるから、劣化具合の検証もしていきたいと思う。



「さて、食事にするか」


 お昼になったので、休憩を兼ねて料理を作る。その言葉に精霊が飛んできて、ジッと作業を見守っている。

 まずは簡単なところでスープから。解体用ナイフであらかじめ買っておいたお肉に野菜をカットして煮込む。あとは調味料を加えながら味を調えていけば完成だ。

 それとは別に豚肉を買ってきたので、ベーコンに挑戦する。ウルフ肉もあるからそれも使う。穴を掘って土を盛って簡単な囲いを作ると、料理スキルの補助機能に従い下ごしらえをしておいた二種の肉を用意し、あとはもらってきた薪に火を付ける。煙が逃げないようにすればいいのか?


「悪くない、な?」


 完成したスープを飲んだが、普通に美味しく出来たと思う。これが料理スキルの効果か? 精霊を見たら、空になった容器を前にしてこちらを見上げている。

 お代わりですか? 容器に追加のスープを注げば、満足して口を付けている。

 ベーコンの完成まではまだ時間がかかるようなので、錬金術を使ってみようと思った。

 まずは右見て左見て、気配察知を使って周囲の確認……特に反応はないな。


「つ、ついにこの時が!」


 いよいよ錬金術を試す段階になって、興奮してつい漏れた声に、ビクリと精霊が震えた。食後のお昼寝に入っていたようだった。起こしてすまない。

 まずは薬草を用意。ポーション一本に対して必要なのが五枚。『ポーション作成』と念じると、手の中の薬草が光に包まれて、一瞬の後、瓶に入ったポーションになった。


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【ポーション】傷を癒いやしてくれる。飲んで良し、かけて良し。回復効果・微。品質・低

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 鑑定した結果がこれだ。道具屋で売っていたものに比べて、色が少し薄い気がする。

 それから何度も作った結果。最終的にレベルが上がり、回復効果・小。品質・低のものが出来た。色は最初に出来たものに比べて濃くなっているような気がする。

 ……どんな味がするんだろう?

 好奇心には勝てなかった。一番最初に作ったポーションを手に取り、飲もうとしたら視線を感じた。見ると精霊がジッとこちらを見ている。飲みたいのかな? けどこれジュースじゃないからな。

 その視線にひるむことなく口を付けてむせた。思わず顔がゆがむ。


「苦い……」


 そっとポーションを差し出したら、プイッと顔を背けられた。

 うん、負傷しないようにしよう、と強い誓いを立てた。ちなみに品質は同じだが回復効果の高い色の濃いポーションを試飲したら、そこまで酷い味ではなかった。もしかしたら品質で味が違うのかもしれないな。



 ポーション作成をしていたら時間が経っていたようで、燻製くんせいしたベーコンが完成していた。

 良い香りだ。匂いに釣られたのか、精霊が近寄ってくる。さっきと態度が違うじゃないか。責めるような目で見たが動じた様子は一切なかった。


「食べるか?」


 と聞いたら力強くうなずかれた。


「初めてだから味の保証は出来ないがいいか?」


 少しの逡巡しゆんじゆんの後、強い意志を持ったひとみで見詰められた。

 そこまでの決心があるなら反対はしない。自己責任だ。それぞれの燻製肉を切り分けてお皿に盛る。何故か精霊と頷き合い、豚肉の方から同時に食べる。死ぬ時は一緒だ! 的なノリ?

 ……悪くはないな。サイの村で食べた味にはさすがに劣るが。精霊を見るとみしめているみたいだ。ウルフ肉の方も食べたが、こちらは微妙か? 好みの問題かもだけど、少し硬い気がする。


「どっちが美味い?」


 と尋ねたら、器用に耳でウルフ肉の方を指した。やっぱ好みの問題か。

 その後調理場を整地して、もう少しだけ薬草採取をしてから気配遮断を使いながら街に戻った。

 気配遮断は息を潜めて気配を消すイメージ。それを常に使いながら熟練度を上げていく。まだ集中しないと上手く発動出来ないので、自然に使えるようになるのが理想だ。



 宿で夕食を食べた後は、部屋に戻り追加で採取してきた薬草で熟練度を上げる。

 しかし錬金術のスキルを発動させてポーションを作ると、用意した素材は薬草だけなのに瓶に入ったポーションが完成するのは不思議だ。瓶は何処からきた? と思うが、それで不都合が生じるわけじゃないから良しとしよう。スキルなんて、深く考えても分からないことが多いんだし。

 またポーションを作っていて気付いたことは、錬金術を使う時に意識してMPを多く流してスキルを発動すると質の良いものが出来た。あ、これは説明文にもあったか。他には薬草自体の品質が、出来るポーションの質に影響していることも分かった。状態が悪いものだとどんなにMPを多く使って作っても質の良いポーションを作ることは出来なかった。


 新しく覚えたスキルの確認も無事終えて、次に考えたのは職業について。

 鑑定のレベルが上がったことによって、職業を選択した時に表示される文字が読めるようになってきた。何のスキルを覚えたらこの職業に就くことが出来る等々。例えば錬金術士なら、鑑定と錬金術のスキルがあれば就けるようになるようだ。ただまだ一部読めないところがあるため、完全に判読出来るようになってから選択することにした。

 職業もとっかえひっかえ出来るならいいが、一度選んだら変えられないなんてことになったら後悔しそう。それともこの世界にも、某ゲームのように転職出来る神殿がどっかにあるのだろうか?


   ◇◇◇


 それから配達依頼を二日間こなし、いよいよ迫った出発の前日。荷物の最終確認で集まった時に、料理の話になってベーコン作りを街の外に出ておこなった。肉の処理から始めたため時間がかかってしまったが、味に関しては一度目よりも向上していた気がする。

 護衛依頼では依頼人が食事の準備をしてくれるようだが、自分たちで持ち込んでもいいことになっている。その多くの理由は、依頼人が用意する量が、体を資本とする冒険者には足りないことが多いためだ。


「これはどれぐらい保存がきくの? 美味しいし、出来れば多めに持っていきたいな」


 一口食べたルリカは、一応の合格点をくれた。クリスもこの味ならと言ってくれたから大丈夫だろう。精霊がそれを見てうらやましそうにしていたが、ここは我慢してくれ。


「本当は冷やしておきたいところだけど、保存袋とアイテムボックスに入れてどれぐらい保てるか調べる必要があるかな。一応食べられるか食べられないかの区別は付くから、その点は安心してくれていいよ」


 鑑定すれば、そのあたりの判断に間違いはないだろうから。

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