第1章ー③
スキルポイントを使用して覚えますか? との問いにハイと答える。もちろん心の中でだ。
そのスキルを使用すれば、
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【ウルフ肉の串焼き】 食用の魔物肉。品質・良
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と吹き出しのように文章が見えた。
これがスキル!?
一部気になる単語はあったが、金縛りにあっていた手が動いた。
「……美味い」
肉は見た目に反して柔らかく、
「お、兄ちゃん分かるか?」
思わず出た言葉に、おっさんが一転して
「ああ、初めて食べたけど美味しい。何の肉なんだ?」
分かっていたが確認のため尋ねた。
「これはウルフの肉だな。普通に動物の肉でもいいんだけどよ。魔物の肉は質がちょっと違う。あとはやっぱうちのタレだな。このタレがウルフ肉に一番合うって話だ」
ちょっと質問しただけなのに自慢が始まった。ここは黙って聞きながら食事をしよう。
上機嫌になったところで、お金について詳しく聞いてみることにした。
最初驚いた表情を浮かべ、上から下まで俺を見て、何か勝手に納得して話し始めた。
この世界のお金に関しては、銭貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨とある。
銭貨一〇枚で銅貨一枚
銅貨一〇〇枚で銀貨一枚
銀貨一〇〇枚で金貨一枚
金貨一〇〇〇枚で白金貨一枚
白金貨は王侯貴族や大商人が扱うもので、一般の人が見ることはないだろうと言う。
屋台のおっちゃん(名をグレイと言う)は、金貨も俺たち庶民は滅多にお目にかかれないけどな、と言っていた。
「こんなに美味いのに安いんだな」
「うちは安くて美味いが売りだからな。っていうか、屋台やっている奴らは皆そうさ。それより兄ちゃん見かけない顔だけど、何処から来たんだ」
「……遠いところからかな? 馬車に乗って近くまで来たんだが」
「ふ〜ん、良いとこの子か? あとはその容姿、もしかして外国から来たのか? って変な
「えっ、そうなのか?」
「ああ、世の中悪い奴はいるからな。ここがたとえ王都で、王様のお
「どうすればいい?」
「服屋行って普通の服を買うのが一番だな。銀貨があるんだったら、一通り
詳しく服屋の場所を聞いて、お礼を言って別れた。串焼き一本なのにお腹が膨れた。
結果。服を買いにいったのに、何故か所持金が増えた。簡単に説明するなら俺が着ていた制服の手触り具合に感動した店主が、それを買い取ったからだ。何処産と聞かれても答えようがない。
最終的に金貨三枚を渡されたが、交渉に戸惑っていたら売るのを嫌がっていると勝手に判断したようで、そこまで料金が引き上げられた。もっともそれが高いのか安いのか、今の俺に判断することが出来なかったが。グレイの話を信じるなら大金か。
今の俺の出で立ちは何処からどう見ても町人Aだ。ただ黒髪黒目は珍しいのか、というか、まだ街では見たことがないな。
服屋でいくつかの宿屋の話を聞き、予算と評判を
◇◇◇
気が付いたら朝だった。
どうやら考え事をしていてそのまま寝落ちしたようだ。環境の変化に、思っていた以上に疲労が蓄積していたらしい。精神的な意味で。
窓の傍に近寄り改めて街を眺める。
「……夢じゃなかったか……」
心の何処かで寝て目覚めたら……と思っていた自分がいたのは、否定しない。
けどこれは現実。間違いなく現実。
あいつらの言葉を信じるなら魔王を倒さないと帰れないことになるが、けどあの物言い、あの態度、到底信じられるものじゃない。
ならいっそ帰る手段はないと考えて、これからの行動を決めた方が良い。
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【魔導ランプ】 魔石を消費して灯りを付ける魔道具。使用時間の制限あり。
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ランプのようなものを鑑定したら、説明が吹き出しのように出てきた。
スキル。向こうの世界にない
それに歩いても疲れないなら、その気になれば何処にだって行けそうだ。
街中だって景色がこれだけ違うんだ。それなら街の外には、今まで見たことも体験したこともない何かがあるかもしれない。
「そうだよな。勝手に呼ばれて来た異世界だけど、せっかくだからこの世界を見て回るのも良いかもしれないよな」
改めて窓の外に目を向ける。
エレージア王国の王都は、王城を中心に円状に街が広がっている。
中央に近付くにつれて高く、立派な建造物が多く、外周部に近付くにつれて低い家ばかりになっていく。
まだ薄暗い空には雲が浮かび、ゆっくりと流れていっている。
昨夜見上げた空には月が二つ浮かんでいて、ここが異世界だと改めて実感させられた。
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