子猫を助けたら茶髪美少女が陰キャの俺の部屋に泊まりに来た→こ、これは童貞卒業の予感がするっっ!!

雲川はるさめ

第1話



現在高2の俺。名前は山吹シンジ。

夏のある日のことだった。

千曲川の河川敷をすげー勢いでママチャリを漕いでたら、

俺は、黒と白のハチワレ猫で

毛並み最悪な汚い感じの子猫が、川で溺れかけているのを目撃したんだ。


「お、おい、なんだ、あれ...」


最初はただ、猫のぬいぐるみかなんかが、ゆっくりと

川を流れているもんだと思っていたが違った。


生きた子猫だったんだ。


視力は2.0の俺。



少しだが、子猫顔が上下に動いていた。


俺はチャリを急いで止めて河原に降りる階段を駆け下りた。


こけそうになりながら、大慌て、

川岸まで走り、スニーカーと靴下を脱いだ。

制服のズボンの丈も出来る限り折って

川の中に入ったんだ。


「間に合うか...!?」


俺はジャブジャブと川の中に入り、

流されている子猫を目指していた時だった。背後から女の声が聞こえてきた。


「は、早く、助けてあげて...!!」


この綺麗な声...!

クラスメイトで俺の好きな女子の声だ...。

振り返りたいのは山々だったが、それどころじゃなかった。

俺は大慌て、子猫に駆け寄り、

抱き上げて、河原に戻ったんだ。


はぁ、はぁ、と息を切らせつつも、


とん、と静かに子猫を石のうえに置くと、


「子猫ちゃん、良かった」と美少女の

安堵のため息が聞こえた。

彼女の顔をよくよく見ると、目に涙を溜めていた。





学年1真面目で。






清楚で。

地毛で茶髪の美少女、林ユーコ。

高嶺の花、と男子みんなは陰で呼んでいた。





それから。


高嶺の花の美少女が俺の前で涙を見せた。その顔が滅茶苦茶きれいだと思った。

俺のクラスメイトで学年一のモテ女でもある

林ユーコ。

子猫は無事で、


林ユーコが色々と教えてくれた。


「ね、ねぇ、その子猫なんだけどさ、

私が元々拾って保護してたんだけど、

親に勝手に捨てられちゃってさ...」


「私が昨日河原で拾ったの、そしたら親が、

私が寝てる間に今朝、河原に戻しに行ったよって言ってさ。心配で見に来たら、川で溺れかけてるのを見て、いてもたってもいられなくなって...」


「でも、山吹くんが助けてくれた!」


それから、彼女はシュンとなって。


「本当はそのコ、飼いたいの!でも、うちはマンションだから

飼えないんだよね...」


「名前、もう、付けてあるの。

白黒のハチワレ猫だから、ハチ、なんだ」



ハチ、この言葉に反応したのか、

その目の鋭い猫は、

「ニヤァオオオオオ」とイケボな掠れ声で鳴いた。


鳴き声も、顔も。


あんまし、可愛いとは言えない猫だが。


どこか、愛着が持てる猫だった。



「俺、この猫、飼おうかな...」


「え」


「実はさ、俺の住んでるマンション、ペット飼ってもオッケーなんだよね。

それに、今、両親は海外出張中で、

家に一人だから、自由がきくんだ」


「そ、そーなんだ!」


この日、俺は。


学校に向かっていたが、ハチを連れて家までUターンした。


林ユーコも、

「ハチが、心配だから、山吹くん家に行く!」


と言ったけど、

真面目な女子生徒が学校をサボるのはよくないよ、と諭して、ぶーたれる彼女と別れたんだ。








この日、俺は。


とりあえず

ハチに餌をあげようと思った。

お腹を空かせているみたいでぐったりしてるし。

もしかしたら、喉も乾いているのかもしれないし。


ハチは可愛くない顔した猫だが。

俺の買ってきたキャットフードを美味しそうに

食べた。


その姿は中々に可愛かった。



ニャアオオ!


夢中で餌を食べてるハチ。

俺が頭を撫でてやると、


まるで、ありがとよ、と言わんばかりに鳴いたんだ。


「どういたしまして」


俺は取り敢えず、猫と会話した。

ま、最も、ハチの奴は、

どういたしましての意味は分からないと思うがな。


学校はサボっちまったが、その代わり、

俺はハチの世話は一通りしたんだ。

猫用のシャンプーもキャットフードとともに

量販店で買い、ハチ用のトイレも室内に準備してあげた。


やがて夜になり。


俺が自室で寝ようとしてたら、ハチが、ニャアーオ!とあゆみ寄ってきて、


布団の中に入れろ、と言いたげにしていた。


寂しいのか?、それとも布団の中があったかくていいのか、よく分からないが今、季節は、肌寒い秋で。

俺はハチを布団の中に入れてあげることにした。



ハチはオス猫。


男と寝てるみたいだったが、ま、いいか、

湯たんぽ代わりだ、と思って一緒に寝た。

子猫を保護した

この翌朝。


下駄箱のとこで、


林ユーコが意外にも俺を待ち伏せしてた。


「おはよ!待ってたよ、山吹くん!」


「ハチ、元気?」


「うん、昨日の夜、一緒に寝たよ」


「そーなんだぁ!あのさ、今日、山吹くん家、

遊びに行ってもいい?」


「え」


「ハチのこと気になるし...」


「あ、えーっと。部屋汚いし。ちょっとそれは...」


色々とまずい。俺、家の中に女の子入れたことないし。


まして、高嶺の花が来訪するなんて

ビビるだろ、さすがにっ!


「やった!じゃあさ、住所教えてよ。

私、一旦、家に帰って色々準備してから行くからさ!」


「あ、う、うん」


俺はメモ用紙にさらさらと自宅住所を書いて

彼女に渡した。


学校が終わって、大急ぎ家に帰って、

部屋の掃除に明け暮れた。


掃除機をかけ、ごちゃついた

リビングを片した。

とりあえず、彼女が足を踏み入れるであろうリビングだけはきれいにしたんだ。


やがて。


ピンポン!


と呼び鈴が鳴って。


俺は玄関に走った。


ドアを開けると。


「え、なに、その荷物??」


キャリーバッグを引いてた。


「あーのー、ね、今日から一週間泊まることにする!


「え、泊まる?」


「そ。私、ハチを勝手に捨てられて頭にきててさ!家飛び出してきちゃった。

あ、でも大丈夫。ちゃんと置き手紙してきたよ!

一週間したらちゃんと戻ってくるって書いてある」


「ええええええ」


奥から。


ハチが走って来た。


そして、ピョン!とジャンプして、

林ユーコの胸の中に飛び込んだんだ。


このとき、俺は思った。


いいなぁ、猫は。


いくらでも胸のなかに遠慮なく飛び込めるからさ。そのとき。


彼女が膝を落として屈み込んだ瞬間。

スカートのなかがチラッと見えた。


何だかいけないものを見た気がしたが、

俺がピンク色のショーツを見ちゃったことはバレてないみたいで、

林ユーコは平然として言ったんだ。


「お邪魔しまーす」


彼女はハチを抱き抱え、

部屋へと上がったんだ。



それから。


俺の家に泊まる、と宣言した彼女を

なんとかして、ただ単にハチ見たさに遊びに来たってことにして、暗くなったら帰ってもらおうと思ってた。


しかし。


突然のスコールで。


バシャバシャ雨が降って来た。



ベランダから見える、バケツをひっくり返したような大粒の雨。


「家に帰った方がいいよ。

林さんのお父さんお母さん、心配すると

思うし」


と言ったけど、

完璧に無視された。


「嫌よ。こんな雨の中、帰りたくない。

折り畳み傘も一応もってきたけど、

これだけ、強い降りだったら、びしょ濡れ必至だし!

今日は金曜日で、明日は学校休み。

悪いけど泊めてもらうから」


「パジャマも、バスタオルも、一週間分の着替えも、学校の制服も持ってきてんだから、大丈夫よ!」


「それで、今夜から私、ハチと一緒に寝るの!」



「えええええ」


やがて、夕飯の時間になり、彼女が

腕を奮ってくれた。


オムライスとかシーザーサラダとか作ってくれた。


びっくりするくらい、美味しかった。


それから。


彼女は、


「シャワー借りるわね!」


と意気揚々と浴室に消えた。


その後。


とんでもない展開が待っていた。


パジャマに着替えて、お互い寝なきゃいけない時間になったとき。


俺はそこそこ綺麗な和室に

来客用の布団を敷いてあげたんだけど。

しばらくは、

彼女もハチもそこで寝てた。


だけど。

雷が鳴り響き、

ハチが、和室を脱走して、

俺の部屋に来てしまったんだ。


布団に入れろ、と、

ニャアニャア言い出したんだ。


寝ぼけ眼で電気をつけると、


枕を抱えた美少女がドアのところに立っていた。



「雷が鳴っていてひとりで寝るの怖いじゃない!

それに!ハチが何故か、

山吹くんの寝るベッドに潜り込むとかどーゆーこと?」


「さ、さあ?」


「俺のベッドが気に入っちまった、とか?」


「じゃあ!私も一緒に寝る!」




「ええええ、、」


こーして。

半ば強引に三人、いや二人プラス一匹で寝た。


野良猫を助けたら、

茶髪の美少女と一緒に寝ることになるなんて。


俺は想像もしなかったんだ。




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