猫の手を借りてハマった

ゆりえる

まさか、こんなにも......

 男がするイメージはあまり無いかも知れないが、俺は在宅で部品組み立ての内職をしている。


 昨日は、3月だっていうのに、積もるくらいの積雪が有り、昨日届く予定だった部品は今日届いた。

 それならば、納品も1日ずらしてくれたらいいものだが、会社も時間的な余裕が無いらしく、予定通り明日の納品。


 そんなの寝ないでやったとしても、無理そうに思えて来る。


「ピンポーン」


 こんな時に、誰だ?


「おじさん、今日も遊ぼうよ~!」


 昨日は、部品が届かなかったから、思いがけず暇が出来て、近所の子供達とゲームで遊んでた。

 子供達は学校から戻ったら毎日暇かも知れないが、俺は、昨日の仕事量も今日の分に上乗せされている。


「無理だ~!今日は、猫の手も借りたいほど忙しいからな!」


 さっさと子供達を追い払ったつもりだったが、しばらくすると、またベルが鳴った。


「おじさんが、猫の手も借りたいって言ってたから、猫を捕まえて来てあげたよ。これで、仕事が早く終わったら遊ぼう!」


 俺の言葉通りに受け取って、野良猫を捕まえて来た子供達。


「三毛猫か、スゴイな~!ありがとう......」


 子供好きだし、せっかくの好意を無下にして、子供達を傷付けたくなかったから、野良猫を受け取って抱き抱えておいたが......


 野良猫をいきなり渡されても、家の中で暴れ出して、部品がグチャグチャになったら一大事。

 後から子供達には逃げられたって言い訳をする事にして、今のうちに野良猫を逃がしてしまおう。

 ドアを開けて、さっきの子供達の姿が周りにいないのを確認し、野良猫を逃がそうとした瞬間......


「あっ......」


 不意に、猫の手というか足というか、とにかくその裏側に触れてしまった。


 そうだった!

 俺は、ずっと、猫の肉球というものがどういう感触なのか、興味が有ったんだ!

 

 開けたドアを閉めて、猫が大人しくしているのをいい事に、その手の裏の肉球を触ってみた。


 あ~、なんとも新触感!

 これは、たまらない~!


 猫の肉球を触った満足感なのか、猫のハンドパワーなのか知らないが、仕事がはかどる捗る!

 気付くと、予想していた時間の半分も経過しないうちに、納品できる状態になっていた。

 

 このお猫さんは、俺の守り神だ~!


 名前も付けてあげねばな。

 三毛猫だから、そのままミケだ!


 製品の納品後は、3日ぶりに彼女が家に来る予定だったが、俺は急用が入ったと言い断った。


 ミケとの時間を邪魔されたくない。

 今まで、肉球の快感を知らないで生きて損して来た分をこれからたっぷりと取り戻さねば!


          【 完 】

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