第7話 頬を赤く染めた天使
「──うっ……緊張するなぁ( ̄▽ ̄;)」
俺は久しぶりに我がクラス、“3年2組”の教室の前に立った。
俺が中学校に来たのは本当に久しぶりのことで、既に学年は1つ上がり俺の使っていた教室ではなく3年生の教室に変わっていた。一応、メンツは2年生の頃と変わらないが皆は俺の知らない1年間の内に大きく変わったのだろう。人間として成長したのだろう。
──実際、愛葉と蒼太は随分と変わった訳だしな。
「ふぅ……ふぅ……っ」
何度か呼吸を整えようとするが結局上手くいかず、この強い圧迫感と緊張感は高校受験の時と近い。それ程までに俺の心はドキドキしているのだろう。
今日は人目を気にして遅めに来た為、既にクラスメイト達は教室に集まって卒業式の準備をしている頃だろう。
そんな中入るのかぁ……ちょっと、楽しいムードを壊しそうで怖いけど。まぁ、愛葉と蒼太もいるし何とかなりそうだけど。
まだ、愛葉と蒼太という2人の存在が居たため、若干だが心のゆとりはあった。
だけど……(;ω;)
「──じゃあ、私たちは先に教室に行くね」
「は?」
「──大丈夫だ、クラスメイトたちを信じてやってくれ。
……待ってるからな」
「は?」
え、あ、はっ!?( ´°∀°` )?
何を……言ってるんだ?
「あ、ちょ……愛葉、蒼太!?」
そう軽く言い残した2人は俺を廊下に置き去りにしたまま、そそくさと教室へ入って行った。
すぐに教室の空気がどっと変わり、明るく楽しい雰囲気になった。それほど愛葉と蒼太という幼なじみの存在はデカい様だった。
「えーっ……」
1人、廊下に取り残されてしまった俺。
今までの若干のゆとりも、この一瞬で消え去り、現実と言う名で突き付けられた“絶望”が俺を襲った。
こんな明るい雰囲気の中、暗い雰囲気を常に纏う俺なんかで入ったら折角湧いた空気が冷めてしまわないだろうか?むしろ、入らない方が最適なのでは無いのだろうか?
でも、こんな所でグズグズしてたってどちらにしろ入らなければならないことは確定している。
だって既に中学校まで来てしまったのだから。様々な準備を決行してしまっているのだから。ここで逃げてもなんの意味のないことだって知ってるから。幼なじみに少しでも感謝の気持ちを示さなければならないから。
大丈夫……どんなことを言われたって、変な目で見られたって。俺は俺。一宮 茉白なんだ。
皆も変わったけど、俺だって変わったんだ。
「っ、………………………よし」
俺は両頬を叩いて喝を入れつつ、タイミングを見計い──ゆっくりと慎重に教室の扉に手を掛けた。
☆☆☆
「──ねぇ、白くんって今日本当に来るのかな……?」
「──違うだろ?今は茉白って言うんだろ?」
まだ茉白、愛葉、蒼太が中学校に到着して居ない頃。
クラスメイトの1人の呟きに、もう1人が言葉を返した。
他のクラスは卒業式ムード一色。……当たり前である。
だが、この3年2組では少し独特な空気感で満ち溢れていた。
どうしてこんな空気感なのかと言うと、遡ること2日前。愛葉さんと蒼太くんは中学最後の卒業式に今までずっと引きこもっていた白くんが参加すると突然言ってきたのだ。
もちろんクラスメイトは驚きつつも、彼の復帰を喜んだ。
元から彼は嫌われてなんていなかったし、目標に向かって必死に頑張る彼をほとんどの人が尊敬をしていたからだ。彼とは1度も話したことは無かったけれど、彼が寡黙な人だと言うことは皆周知の事実であった。
……そして白くんの事情を聞いた。
だが、それはあまりにも現実離れした話で今でも信じられないと考えるクラスメイトも多い。私も本当に変わったのかは実物を見てみないと確実には信じられない。
だからそんな言葉が零れるのも仕方の無いことである。
でも、あまりにも真剣で冗談とは感じられなかったクラスメイト達は、愛葉さんと蒼太くんの言うことを一旦信じてみることにした。
──そんなこんなで、クラスメイト達は様々な感情を持ちつつ卒業式当日を向かえた。
3人以外のクラスメイトは謎の緊張感からか予定の時間よりも早く集まり、白くん達が来るのを待っていた。
……そして時間ギリギリのタイミングで、白くんの幼なじみである愛葉さんと蒼太くんが教室に元気に入って来た。そのテンションはいつもよりも遥かに高く、クラスメイト達は少々驚いた。だけどそのテンション感に驚くよりも、もう1人の……白くんを探すことに集中を欠いた。
「あれ……?」
だが、教室へ入って来たのは結局2人だけ。肝心の白くんはどこにも居なかった。
もしや、性転換して、美少女になったとか……そういうものよりも。そもそも来ていないのか?と、さえ考え、クラスメイト達はすぐに2人に事情を聞こうとした。
「!?」
だが、その前に愛葉さんと蒼太くんの2人は両手のジェスチャーで何となく“外に居る”ということを伝えて来た。
なるほど……と、すぐに皆は察し、静かに教室の扉が開くのを待った。──強い期待に胸を躍らせて。
そんな静寂から数10秒後、ガラガラ……と情けないように静かに。教室の少し古い扉が開いた。
そして……1人の小さな女の子が入って来た。
「「「「「──っ!?」」」」」
この子が……彼……!?
いや、彼女が……茉白ちゃんなの?
明らかに中学生とは見られないような背丈の子の登場に一瞬場が驚くが……それよりも、彼女の容姿を見た瞬間──場は完全に固まった。
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ(゚ロ゚)(゚ロ゚)!?」」」」
少しの間の後。クラスメイトの全員が全員……目を見開いた状態で彼女見ていた。1度見た瞬間に虜になり、彼女に……彼女だけに釘付けになったからだ。
なぜなら。
そこには慣れない制服姿の銀髪の“天使”が恥ずかしそうに頬を赤く染めつつ、立っていたからだ。それはあまりにも美しく、可愛く、そして堪らなかった。
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