第三章 高校という新たなステージ
第1話 諸々の準備
あれから、俺は努力を続けた。……それはもう“思い出すだけで血反吐を吐くくらい”とだけは言っておきたい。それぐらいの努力を続けたと自分自身思うからだ。
俺には引きこもっていたという、取り返しのつかない程の最悪な遅れがある。まずはそれを取り戻すのに相当な時間を費やした。
特に、乱れた生活習慣は高校生を目指す為には致命的だ。なので、母が付きっきりでサポートに回ってくれ、半ば無理やりに乱れた生活習慣を正した。
そうして、生活週間を正したら……次に俺がこれからでも行ける高校を探した。本来ならば通信制という甘い脇道もあったが、流石にこれ以上は逃げたくない。俺の覚悟はとうに固まっていたのだ。
俺には様々な選択肢があった。男子校、女子校、工業高校、商業高校、農業高校、高専……etc。だがその中でも、進学校は流石に無理だ。だって、そういうものに挑むには毎日コツコツと準備をし、学校生活を頑張り、自分を磨き続けた者がチャレンジすることの出来るステージだと俺は思うからだ。
俺にはその資格は無かった。驕りは無い、謙遜も無い。当然の事実である。
まぁ、取り敢えず。俺が求める高校の条件は……男子校でもなく、女子校でもない。ただ幼なじみの2人と一緒に行けるような共学の高校が条件だ。それだけあれば後は何でも構わない。
簡単な条件だ。直ぐに高校は出てくるだろう……そう思っていた。だが、出てくるのは2次試験の案内ばかり。
……そう。とっくに入学希望の願書提出期間は過ぎていたのだ。
だから、好条件の高校もダメで……ダメで……
やっぱり俺には無理なんだとさえ、感じた。やる気になるのがどう考えても遅すぎたのだ。
──でも、他に何かあるだろう!どこか別の高校がっ!
諦めきれる訳がない俺たちはめげずに高校を探し……そうして、見つけた。俺の提示した条件をクリアし、今からでも間に合う高校が。
その高校の名は『青空学園』という。この高校は男女共学の県立高校。家から少し距離はあるが、通えない距離ではない。更に俺でも目指せられる希望のある高校だった。
もうここを目指すしか無い!そう思った。
俺はすぐに家族会議を開き、行く高校を家族に話した。
母、父は嬉しそうに許可をくれたが……何やら姉は反対気味のようだった。高校が気に入らないらしい。
何故!?(。´-д-)と、理由を聞こうとしたが……謎に愛葉に阻まれ、上手く聞き出すことは出来なかった。
まぁ、姉のことだ。同じ高校じゃなくて寂しいんだろう。でも、姉が通っているのはゴリゴリの進学校。愛葉や蒼太ならまだしも……俺が行けるはずも無い。だから申し訳ないけど、諦めて欲しい。
☆☆☆
後はひたすらに勉学に励んだ。
俺の今の学力は中一の後半程で途切れており、今までの怠惰な生活の影響もあり、その記憶さえも曖昧になっていた。
──つまり、結局は1から勉強し直さなければならないということだ。
高校受験まで残り2ヶ月を切っているというのに……今から?( ᐙ )絶対に無理である。そう、“一人”でやるのならば……
だけど。俺には最高の
中学のテストでは常に1、2を争い、全国模試でもえげつない結果を残した愛葉と蒼太なら……こんな落ちこぼれの俺を高校受験のステージまで上り詰めさせてくれるはずだ。
☆☆☆
もう後戻りなんて甘ったれなことは出来ない。俺は愛葉と蒼太と共にその高校へ行くことに決めた。家族を通じて、中学の担任ともコンタクトを取り、色々と進学への準備を進めた。
そして、その間。父が国と連絡を取り、正式に性転換の手続きをした。俺は病院で様々な精密検査を受け……正真正銘“女”であると認められ、男から女へ性転換をした人間として国に登録された。
これで、俺は女の子になった。白は消え、茉白となった。実感は……無い、だけどようやく第2の人生が幕を上げたような……そんな気がした。
全ての準備は整った。後は単純な努力のみ。
俺は家庭教師の愛葉と蒼太にがっちり挟まれながら必死に、必死に勉強した。
途中、逃げたくなることも、投げ出したくなる時もあった。
──だが、決して勉強を中断することは無かった。
俺は白の分も、楽しく、人生を謳歌するのだ。その心持ちがあったのだ。
1月の中旬から俺の高校受験への努力は始まり、2月は怒涛の勉強三昧。朝早くに起き、夜遅くまで机に向かった。
──そして、俺は運命の日……高校受験当日を迎えた。
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