第10話 蒼太はイケナイ恋をした
……望月 蒼太。茶髪のチャラ男。そしてイカした容姿を持つ彼だが、内面はとても真面目で心優しい。そのため周囲からの信頼も厚く、スポーツや勉学も得意と、器用な一面も持ち合わせている。
そんな彼には1つの隠し事があった。
──それは、“幼なじみ”に恋をしているということ。
補足で言っておくが、幼なじみとは東雲 愛葉のことではない。そもそも東雲とは幼なじみでもなく、ただ利害の一致と情報交換の為に一緒にいる友達なだけだ。
つまり蒼太は”一宮 白”という男にイケナイ恋をしていて……友達以上、幼なじみ以上の深い関係を望んでいるのである。
☆☆☆
蒼太は昔は運動が出来ず、勉強も出来ない。ただの落ちこぼれ……という今の蒼太と比べると信じられない程のちっぽけな存在だった。
まぁ、そもそも物事全てにやる気や活力というものが無く、親の無理やり通わされる習い事をただダルそうにやっていた。
例えばスイミングやピアノ、サッカー、空手、剣道、書道……などなど、様々なジャンルに手を出していた。家がまぁまぁ裕福だったせいもあり、無駄に多くの習い事を兼部させられていたのだ。
ハッキリ言おう。“クソだりぃ”という感情しか湧かないものばかりだった。年頃的にゲームもしたいし、家でゆっくりもしていたい。だけどその時間のほとんどは習い事で消える。やる気や活力が無くなるのはしょうがの無いことなのである。
まぁ、この多くの習い事のおかげで今の万能な人間になれたのだけど。それに、この習い事のおかげで運命の人に出会えたのだけど。
そんなつまらない日々を淡々と過ごす蒼太。
だが……転機は突然、訪れた。
それは蒼太が小学校高学年になった頃、蒼太も通う近所のスポーツスクールに1人の同学年男子が入団して来たのである。
真っ白な日焼けの無いすべすべな肌と華奢な身体のその男子は別にスポーツに向いている体型とかでは無く、天才でも無い、センスも無い。ごく普通の一般人であった。
だが、蒼太と同じく様々な習い事に手を出している“苦労人”ということがすぐに分かった。なぜなら彼は蒼太と同じ習い事に顔を出し始めたからだ。
あぁ、コイツも親に無理やりやらされてる苦労人なんだな!
……そう思った。共感した。そして、仲間だと思った。自分から進んでこんなにも多くのダルい習い事をするなんてハッキリ言ってバカなんじゃねーの?というのが蒼太の考えだからだ。
だが、すぐに蒼太はその考えを破棄することになる。なぜなら、彼は1ミリも物事を妥協していなかったから。一つ一つを全力に、真剣に、高い目標に向かって挑戦し続けていたから。
蒼太は呆気に取られたのと同時に感心した。だって、小学生なのにここまで人間性が出来ているやつを見たことが無かったからだ。
どうやらそんなスゴい彼が蒼太の“幼なじみ”という存在だと知ったのは、それからすぐ後のことである。親同士が何やら同級生同士だとかで、家も近く、度々交流もあったらしいが蒼太は彼のことを知らなかった。多分その頃はゲームばっかりしていたからだろうけど。
──はぁ、本当に最悪だ。だって、幼い彼を蒼太の瞼のフィルムに写せていないのだから。永久保存していなかったのだから。
☆☆☆
少し無鉄砲そうにも見える彼の小さな背中。だがそんな背中からは多大な責任と重責を背負っているように見えた。だからか、いつも余裕が無いと言えばいいのだろうか?何処か弱く、脆さというものを薄々感じ取っていた。
だけど、そんな彼だからこそ蒼太は興味を持ち、無意識に“ライバル”だと認識してしまったのかもしれない。こういうやつには負けられないという謎の意地なのか?
いつも心ここに在らずのはずの蒼太に久しぶりに活力が溢れた。
それからは、戦いが始まった。まぁ、1位争いとかでは無く3位とか4位とかの中途半端な戦いだったけど。でも蒼太にはそれが面白くて楽しくて、やりがいのある日々だった。常に彼のことだけを考え、対策を立て、日々努力し、彼と共に切磋琢磨した。
──そして一宮 白を本当のライバルだと認めた時、唐突に彼は蒼太の前から姿を消した。理由は全くの不明。まるで元から居なかったように、煙のように消え去ったのである。
困惑した。どうしてなんだと!?
来週には剣道の試合が迫っているというのに。
まだまだ決着がついていないというのに。
逃げ出した?いや、そんな訳が無い。彼に限ってそんなこと、ある筈がない!
悩み、苦しみ、疲弊、ストレス。
彼がいないだけなのに、それだけで蒼太は嫌悪感に陥った。それほどまでに蒼太にとって彼……“一宮 白”は大切な存在だった。依存する存在だったのだ。
──もう彼のことしか考えらない。蒼太は今まであった対抗心が違うものに変わっていくことを肌で感じ取っていた。普通はここで踏み留まる気持ちのはずなのだが……突然居なくなった彼を探したいという気持ちがその踏み留まろうという感情を打ち消した。
そのため、この気持ちが変な方向の。熱い気持ちへと変わることを止めることが出来なかった。
☆☆☆
今、ここで断言しよう。蒼太は
蒼太は1度好めば、とことん愛して尽くすタイプである。そのため、既に白はライバルなどではなく、好意を向ける対象に変わっていた。
更に蒼太は特殊で、快楽主義者でもあった。そのため新たなる快感に酷く興奮し、 挑戦を拒まなかった。そのため……白と、互いに…………
ぶっちゃけ言えば、〇って〇〇れての関係になりたかった。そして、互いに〇〇〇〇合いたかった。
別に受け攻めはどちらでも構わない。ただ、そういう関係に初めてなりたいと思えた相手なのである。
──男?
は?関係ない。
それに、蒼太は男が好きという訳では無い。もちろん男よりも女の方が好きに決まっている。ただ、白という人間。存在そのものが好きになったのだ。だから性別は構わなかった。
──────────が。
久しぶりに出会った
これでやっと。ようやく…………愛し合える。心からの肉体関係を築ける。
あぁ、それにしても可愛すぎる。性癖が抜群にドストライクで、初めて彼を……彼女を見た時は腰を抜かしそうになった。自我を失いそうになった。それぐらいの可愛さと迫力が茉白にはあったのだ。
あぁ、茉白ッ。茉白ッ!!!
大好きだ、大好きだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
☆☆☆
──蒼太の自室にて。
暗闇の中、蒼太はぼぉーっと隠し撮りした茉白の写真を眺めていた。ついつい、夢中で動いてしまう右手を無理には止めようとはせず、思うがままじっくりと堪能する。
愛葉同様、蒼太も自慰にふけっていたのである。
「うっ……あぁ、」
そして…………
数分後。
よしよしよぉーし。
やる気は十分、後は今後の頑張り次第だ。
蒼太は変わった。今は落ちこぼれなんかじゃない。
全ては彼女の為に、磨いたステータスと気持ちがある。
だから、負けられない。新たなライバルには。
絶対に、絶対に茉白は俺の“妻”にする。
これは確定事項だ!
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