第5話 やっちまったなぁ、母ッ ヾ(๑`Д´๑)ノ!!!


「うっ……うぇぇぇぇぇーんっっっ‪( ;ᯅ; )!!!‬」


 なにか、気に触ることでも言ったのだろうか?それとも無理に引き止め続けてしまったからだろうか?中学生という圧をこの子(小学生低学年ぐらいの子)に与え過ぎてしまったのだろうか?


 蒼太と愛葉は互いに冷や汗を垂らしながら目を見合せ、少し前のことから振り返ってみる。

 蒼太も愛葉もこんなにも可愛い子に出会ったのは生まれて初めてだったので興奮してしまったのかもしれない。だからいつもよりアプローチが激しかったのかもしれない。


 でも、しょうがないのだ。理性が、本能が、この子のことを支えてあげたいと感じてしまったのだから。無性に助けてあげたくなったのだから。


 この子の容姿は特に関係なく、単純に雰囲気からそう思えたのだ。それぐらい彼女の存在は大きく、そしてか弱く見えた。そう……まるで、2人の幼なじみのように。


 って。


 とにかく、突然この子が泣き出してしまった理由が分からず、ただただ混乱する2人。慌ててその子に謝り、泣き止んでもらおうと頼むも、それもどうやら無理そうで、この子の大きな美しい泣き声は深夜の静まり返った住宅街に響いた。


 こんなにも透き通り、癒される泣き声は初めてだったが、そんなことを堪能している場合では無い。今、2人は逆境に立たされているのである。


「や、ヤバいぞ東雲。こんな子を泣かせちゃ警察案件になる!」

「そ、そ、そうですね。一旦、白の家に戻りましょう!」


 ──騒音問題。児童虐待。深夜徘徊。今の所全てがダメだ。しかも小さな女の子が泣いているのだ。通報する人が出てくるのも時間の問題だ。


 ということで、流石に警察沙汰にはしたくない2人は小さなロリっ子を引き連れすぐにその場から離れた。



「ぜぇ、ぜぇ、」

「はぁ、はぁ、」


 蒼太と愛葉は焦りながらこの子を連れ、来た道を戻り、幼なじみの家のドアを叩いた。この子の知り合いなら何とかしてくれると思ったのだ。


 というか、この子についての情報が今の所何一つ無いので幼なじみを頼るしか考えられなかったのだ。


 すると白のお母さんは待ってましたかのようにすぐに出迎えてくれた。うん……っ?妙におかしな気もするが、とりあえず何とかなりそうだったので蒼太と愛葉はほっと一安心するのであった。


 ☆☆☆


「うぐっ、ひぐっ」


 ようやく嬉しさの涙が止まった俺は母、そして姉に挟まれて机に座っていた。父は邪魔なのでどっかに行ってもらって、幼なじみの2人……蒼太と愛葉は俺の迎えに座ってもらった。


 幼なじみの蒼太と愛葉は状況の判断が全く出来ておらず、周りをキョロキョロと見渡しながらモジモジし、落ち着かない様子だ。


 気持ちもまぁ、分かる。

 だって他人の親と他人の姉、そして全くの他人(俺)がいる中なのにも関わらず、家に招かれ、同じ空間にいるのだから。


 俺だったら息が詰まって死んでる所だな。(;´∀`)

 って、そもそもそういう場所には絶対に行かないけど。


「それで……あの、……っ!?」


 愛葉が俺の泣き止む頃を見計らってか、声を出そうとしたが……


「──あ?」


 姉の力強い眼力に阻まれ、急いで口を紡いだ。


 姉は珍しくブチ切れていた。何故って?そりゃあ……


「で?誰なの、私の最推しを泣かせたのは?言っとくけど、許さないし、ただじゃ済まさないからね?」


 最推し=俺のことだろう。

 泣いて帰ってきた俺を見て、姉はとにかく驚愕したのと同時に怒りを顕にさせた。多分母が止めなければとてもヤバいことになっていたのは確実だろう。


 姉は高校生。更に“天才”。認知度はかなり高く、姉が出る大会やコンクールでは全てにおいてトップクラスの結果で“勝利”を収めて来た。


 なので、生まれた時から強者である姉(高校生)に威圧された幼なじみの2人(中学生)が怯んでしまうのも仕方がないことだった。


 姉は激おこ。母はニコニコと笑顔で見守る観測者に徹し、俺はコミュ障……幼なじみの2人は姉のせいで縮こまり。状況は無難にカオス。誰も何も意味を理解できずにいた。


 だけど、ここで誰かが動かなければこの状況はいつまで経っても膠着状態のままだ。


 まぁ、俺はね。動けないから人任せなんですけどね(´>∀<`)ゝ!


 だって俺、幼なじみのことは何にも知らないもん。何故か俺が大切に思われていたのは嬉しかったけど、真実を全て打ち明かす程の仲では無いと判断していた。


 すると、


「あの……」「それで……」


 蒼太と愛葉が協力し、言葉を2人で繋げながら姉の眼力を掻い潜ると、流れに乗って言葉を言い切った。


「すみません、ずっと気になってたんっすけど、」「この子は……一体誰なんですか?御家族……じゃ、ありませんよね?」


 2人は視線を俺に向けながら言ってきた。


 確かに、うちの家族構成は父、母、姉、弟の4人家族で“妹”と言うポジションは元から存在していない。まぁ、そもそもこんな銀髪のロリっ子が日本人夫婦の間に産まれる訳が無いけどね。


「あら、まだ事情の説明をしてなかったの、?」

「う、うん……だって。しょうがないじゃん」


 なんだかんだ言って、この2人とは良くも悪くも不干渉だったし。


 なんて冷や汗を垂らした俺は改めて幼なじみの顔を見ると……


「え……?」


 2人ともΣ(゚ロ゚;)の顔を浮かべ、俺を凝視していた。

 ど、ど、どうしたんだ、な、な、何か問題発言でもしたのか……?


 なんて数秒前の会話を振り返ってみると……母がとんでもないことを言っていた。


「え、今──“白”って言ってませんでしたか?」

「そ、そうっすよ。言い間違いか、何かですよね?」


 や、やっちまったなぁ、母。なんで俺の名前を言っちゃうんだよぉぉぉぉぉ!!!ヾ(๑`Д´๑)ノ


 自分の考えではまだ言わない予定だったのに。

 信頼もまだまだ全然出来ていないのに。


 2人はヨロヨロと震えた動きで、何度も俺を見てくる。

 多分、イメージの俺(男)と今の俺(女)を比べているのだろう。


 そして“ありえない”という表情を浮かべた。

 当然の一般的な反応である。


「いいえ、違うわ。蒼太くん、愛葉ちゃん。彼……いや、今は“彼女”ね。この彼女が“一宮 白”なのよ!色々あってね、女の子になっちゃったのよ!!!」


 まだ冗談で済ませられたのに。ダメ押しは行けないよぉぉぉ……







「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!????( ゚Д ゚ )」」


 俺がため息を吐くのと同時に、驚愕の声が家中に響き渡るのであった。騒音問題、大丈夫かな……( ̄▽ ̄;;)??







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