第3話 ただ待っている幼なじみ
夜。
白の幼なじみである……
既に中学生にとってはそれなりに遅い時間帯だが、彼らは塾帰りの為仕方が無い。
「ふぅあ……しんど」
「確かに最近はね、高校受験だもの」
茶髪のイケメン、そしてチャラ男の蒼太がそうボヤくと、黒髪で巨乳、そして麗しい顔立ちを持つ愛葉がそれに答えた。
2人とも中学校では“天才”だとチヤホヤされ、人気者である。陽キャで、コミュニケーションも上手く、頭もよく、運動も出来る。人気が出ない方がおかしい話なのである。
巷では付き合っていると噂される2人だが、付き合ってはいない。なぜなら、2人には……
と。そんな2人は互いの愚痴を聞き合いながら、歩を進める。これが彼らにとっての日常で、幼なじみ同士だからこそ出来る話なのだ。
でも、2人ともどこか足りない“不満足感”からか、ついついもう1人の幼なじみの家の前まで足を進めてしまう。寂しさや悲しさにはもう慣れたと思ったけど……どうやら全然まだだったみたいだ。
「あ、そうだ。確か……まだ、志望校決まってないんだっけ?」
「──それは、あなたもでしょう?」
この場所に来て、互いにまさかな……と思ったのだろう。だが、結果は互いに予想通りで笑みを零し合う。
「マジか東雲。お前、確かいいとこからの推薦もらってたよなぁ?蹴ったのか?」
「そ、それは望月くんだって一緒でしょ?」
「うぐっ、まぁそうだけど」
高校受験をする中学生にとって、この時期で志望校が決まっていないのは絶望的な状況である。だが、これまでの実績と成績で2人には一定の免除が与えられていたのだ。
それに、推薦も必要なかった。自分の力で行こうと思えばどこへでも行けるはずだからだ。
──どうしてそこまでして、志望校を決めないのかって……?別に迷っているとかではない。ただ、待っているのである。幼なじみとして彼のことを。ギリギリまで。
「なんだか、嬉しいな」
「ふふ、それは当たり前ですよ!幼なじみなんですもの」
「あぁ、だな。またアイツが前を向いてくれたら。今度は一人ぼっちになんて意地でもさせてやんねぇー」
「同意見です!」
2人の決意は既に決まっていたのだ。
☆☆☆
「あ、でも、今日は特に明るい感じがする……」
愛葉は幼なじみの家をしれっと眺めながら、些細な変化に気付いた。それは、聞こえてくる家族団欒の声がいつもより大きいということ。
「確かに……言われてみればそうかも」
蒼太も感覚でこの変化に気付いたことで、この些細な気付きは恐らく本物なのだろう!?
だけどあの家族が喜ぶとしたら、それってなんなのだろう?改めて2人は考えてみる。
お姉さんがすごい人というのは2人とも周知の事実だ。だが、それはあの家族にとっては当たり前で『普通』なのである。
だから、違う。じゃあ、じゃあ……
彼自身とはそこまで接点を取れていた訳では無いが、その家族たちとはそれなりに接点を取れていた。だからその経験で、家族団欒がどうして明るくなったか何処と無く分かるが……
2人はその考えを、希望をすぐに破棄する。
なぜなら、2人は潰れゆく“彼”を助けることが出来なかったから。支えてあげられなかったから。幼なじみとして失格だから。
だから彼は戻って来てくれない。自分の殻に引きこもってしまった。今度こそは絶対に……助けるのに。支えるのに。
限界まで志望校を待つということも、蒼太と愛葉なりの謝罪のようなものであった。
「って……そんなに居てもしょうがないだろ?さっさと帰るぞ、東雲。補導される」
「え。う、うん。ごめんね、望月くん」
ここに居続けても、彼が会ってくれる訳でもない。ただ虚空の時間が過ぎるだけだ。だったら、少しでも勉強して彼の支えになれる努力をしようと思ったのだ。
だがそんな時、2人にとってまたとないチャンスが訪れる。
「──って、ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇ(;ω;)!?」
突然、聞き慣れない声の女の子が叫びながら、幼なじみの家から追い出されるようにして出て来たのだ。
「イテテ」と、可愛らしい声を漏らしながら立ち上がる美しい銀髪の子。その容姿はあまりにも非現実的で、一瞬にして心を奪われた蒼太と愛葉。
((か、かわいいッッ!?))
その子を見れば見るほど、可愛いだとか、美しいだとか、可憐だとか、ロリだとか……今までの価値観を全てぶち壊されるような新たな感覚に感動さえも覚えた。
「──え……(・д・。)」
すると、その子もジリジリと近付く蒼太と愛葉に気付いたようで、ギョッとした表情で驚いた。
「「あ……」」
互いに重なり合う視線。
これが蒼太、愛葉……そしての
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