第2話 思い至ったらすぐ行動!……が基本らしい

 俺と母は姉を完全に無視し、真剣に話をしていた。


「それで、どうするの白?あなたはまだまだ若いんだから、沢山失敗したっていいのよ。むしろ、いっぱい失敗していっぱい経験を積んでおけば今後の人生にきっと役立つと母さんは思うけど?」

「そうだと、俺も思うけど……」


 姿が姿だし、性別も違うし……なにより、コミュ障だし(。_。)


「それに……“中学校”に戻ってみるつもりは無いの?」

「えっ……」


 ……母から唐突に言われたその言葉。“中学校”……そこは、俺が一度諦めた場所。俺の居場所なんて無い場所。通称、“禁足地”なのである。


 俺は目に見えて分かるぐらい、嫌な空気を漂わせて話を止めせようと試みるが、


「別に人間関係は悪くなかったんでしょ?」


 母も譲らないらしい。


「……確かに、そうだけど」


 コミュ障で、誰かと話すことを拒絶していたから、そもそもの人間関係とかの善し悪しは無いのけども。

 ……つらたん_( _´ω`)_


 自分の情けなさに心がグチャグチャになりながらも何とか正気を保つ。多分前までの俺なら発狂しちゃったかもな。


「あ、でも。たしか、いるじゃない。白にも幼なじみの2人が」


 母が言う、“幼なじみ”という聞き慣れない言葉に対象する人物に……俺は心当たりがある。


「だけど、アイツらは……」


 ただ家が近いというだけで、話したこともない2人だ。ただ幼稚園から一緒ってだけで、別に友達でも無いし、幼なじみ……?と言える間柄でもない。


 それにその2人は互いに付き合ってると噂で聞いたことがあるし、俺がその2人の関係に入り込む隙間なんて1ミリも無いんだよねぇ。


「別にアイツらは俺のことをなんて知らないだろ……」


 だから俺に幼なじみに大した興味は示さない。


 一応説明をすると、幼なじみの2人はうちの家族に匹敵するような美男美女で、頭も良いし、性格も良い……らしい。まぁ、別に関係の無い話だけど。


「え!?そんな訳……な」「──とにかく、俺は今更中学校になんて行かないよ!」


「でも……それじゃあ、高校はどうするの?言っておくけど、行かないって選択肢は絶対に無いからね?」


 っ……行かないという選択肢も少しは俺の中にあったが、母に強く釘を刺されたことでその選択肢はすぐに消失した。


「うっ……じゃあ、通信制とかは?」


 それだったら、これからも家に引き込もれそうだし……他人とあまりコミュニケーションを取らなくて済むし。この姿にも苦労が少なそうだし。


「ダメよ、ちゃんと普通の高校へ行きなさい」

「……うっ、うん。分かったよ」


 俺だって自分の人生を全て投げ出した訳じゃない。

 それにたまには自分の意志とは真逆のことをしたっていい頃合いなのかもしれない。せっかく、自分が変われるきっかけが目の前に転がって来ているのだから。


「言質とったからね!約束だからね!」

「う、うん。いいけど」


 どうせ後で後悔して泣くことになるのだろうけど、母の喜ぶ顔と自分から1歩前に踏み出せた決意に溺れ、俺は嫌な感情を後回しにした。


「でも、一応自分の気持ちと少しだけ相談してみるよ」

「──なら近々の目標を今すぐに宣言してもらうわ」


 う、それだと時間稼ぎは難しいかも。

 流石母だ。決心しつつある俺をとことん追い込むつもりらしい。


「えーっと…………じゃあまずは1人でコンビニとかに行ってみようかな」


 あまり人が居ない夜で、“出来たら”に限るけど。


「うんうん。1歩1歩前進する姿勢は素晴らしいわ。コンビニ……ね。じゃあ、今日のうちに行ってきなさいな。丁度買ってきて欲しいものがあったのよ」

「ゲ……ッ( ̄▽ ̄;)」

「日時指定をしないあたり……この場を乗り切ろうとするための口実でしょう?そんな甘い作戦分かり切ってるからね?」

「だ、だからって、今日なの?いきなり?」

「思い至ったらすぐ行動!基本中の基本よ!」

「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっΣ(゚ロ゚;)!?」




 と……そんなこんなで俺は早速今日の夜にコンビニへ行くこととなったとさ。








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