第4話 家族の奇行って、普通にドン引きしちゃうよね……
大惨事を姉に見られ、人生を終了した俺。
「うわわわぁぁぁぁぁぁぁんーっっっ( •̥ ˍ •̥ )!!!!!」
羞恥と絶望、失望……そして男としての尊厳を全て失ったという負の感情が俺を襲い、元から貧弱でボロボロな俺の心は一瞬にして崩壊した。
──男なのにわんわん泣いて情けないだろうか?
でも、今の状況的にはしょうがないよね?
流石に許してくれるよね?
味方になってくれるよね?
はは、普通にトラウマもんだよね( ゜д ゜)
今の俺はほとんど放心状態で……姉との久しぶりの再会、俺の大惨事、美少女化。もう、心のキャパは限界であった。
姉は俺の哀れな姿を見てか、硬直していた。当たり前だ。だって見知らぬ女の子が廊下で泣きながら大惨事を起こしてしまっているのだから。警察を呼ばれて、保健所に連れていかれる未来も目に見えていた。
だが姉は普通とは何かが違い、目や顔を高速に動かし、顔や手、髪などの至る所を舐め回すかのようなしっとりとした視線で俺を見て来た。
「っっ……!?」
全身に嫌な悪寒が走った。本能的におぞましい危機感を覚えた為であろう。
そして数秒後……謎の涙で顔をぐちゃぐちゃにさせた姉が、
「琥珀ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁんんっっっ!!!!!!!」
……っと、俺の知る姉から聞いた事のないような甘い声&奇声を上げながら、抱き着こうと飛び込んで来たのだ。
「ひゃ、ちょ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
もう訳が分からないよ。今日は本当に。(´Д`)ハァ…
そこからの記憶はね……ほぼ無いよ。だってもう、ね。男として本当に人生終了してしまったのだから。
あ、ちゃんと、男の子の部分は無くなってて女の子になってたよ。ってことは報告しとくわ、(`・ω・´)キリッ!
☆☆☆
取り敢えず、俺はお風呂に入り、大惨事の処理もやった。
なぜかは分からないけど、姉が積極的に処理を手伝おうとして来たり、お風呂に乱入してきそうになったりと……余計に大変だった。
そうして、色々と苦労しながらお風呂から上がった俺は、姉が用意した背中に白い羽が付いた可愛いらしい純白のワンピースを着た。俺の服はどれも大きく、まともに着れる服が無かった……って、ほぼほぼ無理やりだったけど。
でも、この服って……新品かもしれない。何となくだけどそれが分かった。
普通さ……姉が昔に使っていた服とかを貸してくれるんじゃないのかな?
この服って謎に動きづらいし、高級そうだし……とにかく恥ずかしいや(/// ^ 〜^ ///)
──えっとね、ふと思ったけど。もしかして俺の姉は……ロリコンなのではないだろうか。そう思えば思うほど、その事実は俺の理想だった姉の像を崩して行く。
そうして今に至るが……どうしてだろう。どうして俺は姉の膝の上で、この長い銀髪をドライヤーで乾かしてもらっているのだろう?
それに──
「琥珀ちゃーん、琥珀ちゃーん、わったしの大好きな琥珀ちゃーん♪」
姉は俺の知らない名前を連呼しながら、高テンションのようだ。
あれれっ……?((゜ㅇ゜)
やっぱり、俺の知る姉とは何か違うんだけど……?
もしかして偽物か何かなのか……?と強く疑ってしまう。
そ、そうだ。俺が姉の“弟”であるって言わなきゃ。家族の奇行でドン引きしてたからついつい伝え忘れてたや。
しっかりと姉に、この超常現象について説明しなければならない。
「そ、そ、その……」
だけど、やはり、コミュ障モードが発動してしまったようだ。
「そのオドオドした態度。とってもキュートだよ!もっとこっち見てー」
そう言いながら、姉はスマホのカメラを連射する。
「だ、だから!」
「あー、本当に最高ぉぉぉー、どうしてか分からないけど、今はどうでもぃぃぃぃぃぃのぉぉぉ!!!!!!!!だって、だって今は人生で最も最高の日なんだからぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
うん────どうやら、姉には“頭がおかしな人”という俺からの認定書をあげなくちゃならないかもな。
「はぁ……」
だから、姉に対して俺から説明するのは何も無い。
どうせ、今の姉には話しが通じないだろうしな。
まぁ、本音を言うのなら──
そうすれば……父や母と一緒にまとめて伝えられてコミュ障的には割がいいのだ。
ということで、俺はもうしばらくの間、姉のおもちゃになっておこう。
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