第3話 姉は推し活がしたい
俺の姉の
運動神経は男子よりも遥かに良く、頭脳では学年でトップを維持するのは当たり前。顔立ちは可愛さよりもカッコ良さが際立ち、話し方も荒々しい。
そんな男勝りな性格は、とにかく女子にモテる。更に、+αで絶対に人を見捨てず、必ず手を差し出すという心優しい性格も兼ね備えているということもあり、とにかく完璧で学校の人気者なのである。
俺と姉では全てが逆だ。性格も、才能も、全て全て……
憧れの存在でもあるが、弟の俺には自ずと嫉妬も芽生える。劣等感も多く芽生える。俺が引きこもりになった大半の原因は姉のせいなのかもしれない。
でも、姉が悪い訳じゃない。悪いのは、全部俺なんだから。
そして今日も赤髪の艶のあるショートカットを風にたなびかせながら、俺の姉は学校の女子共をきゃきゃ(*´>д<)言わせているのだろう……な。
☆☆☆
「はひゅぅ……」
そんな凛花は心地の良いため息を家のリビングで零しながら、テレビの画面をうっとり、じっくり、しっとり見つめる。
すると……
『──私がいるよ!お姉ちゃんっ!』
愛おしい声がリビングいっぱいに広がり、テレビ画面で銀髪ロリっ子の美少女が舞い踊る。
「ふぉぉぉぉぉ\( 'ω')/オオオオオ!!!!」
凛花は大興奮しながら彼女を見守る。手にはハンカチ、だがそれはもう涙でぐちゃぐちゃである。
──いつも気を張り、誰にも油断せず、気を許さず、完璧を装い、天才であり続ける凛花には1つの隠し事があった。
それは……“美少女恋愛攻略ゲームのキャラクターの1人を推す”ことであった。つまり、ガチガチのオタクなのである。
だが、凛花のことをただのオタクと括らないで貰いたい。凛花は1つのゲームだけを愛し、1人の女の子だけを愛している。
その子の名前は『
☆☆☆
凛花が琥珀ちゃんと出会う事となったきっかけは、弟が風呂に入っている時にこっそり部屋に入った時だ。引きこもりの弟とはもう長いこと喋っていない。
弟はそれなりに好きだ、家族として。だから、どうして引きこもったのか……事情を話して貰いたかった。自分に出来ることがあるのなら、率先して助けになりたかった。だから弟の部屋に勝手に侵入し、弟と何か話すきっかけを探していた。
まぁ……その行動のせいで梨花は別の物に目覚めてしまうのだが──
「あれ……?」
引きこもり生活を送っている割には案外キレイだった弟の部屋。でも、その“ゲーム”だけは乱雑に地面に置かれていた。多分、これは弟の好みには合わなかったのだろう。
どうしてあの時、そのゲームを自分の部屋まで持ち帰ってしまったのかは分からない。多分、あの時は部活も、生徒会の仕事も色々と溜まり、疲れていて、とにかく癒されたかったのだと思う。
でも、これは凛花にとって最高の出会いとなった。
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ(⊃゚ Д)゚ ⊃≡ァァァ!!!!!!」
初めて彼女と出会った時、初めて彼女と目が合った時、いつも引き締めていた心にキューピットの恋の矢が突き刺さった感覚が凛花を襲った。
「な、な、な、な、何よコレっ!!!!」
あの高揚感、開放感、感動感は永久に忘れることはないだろう。
「琥珀ちゃん、ほんとぉぉぉぉにっ!可愛いいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃ!!!!!!愛おしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」
もちろん、ゲームも最高に面白かった。だがそれよりも、凛花は琥珀ちゃんに恋をした。“好き”とか、そんな甘ったるい感情では無い。ただただその子に“アイ・ラブ・ユー”だったのだ!!!身も心も財も全てを捧げ、一生推していこうと決めたのだ。
☆☆☆
「──な、何ごとよ!?」
今日は琥珀ちゃんの誕生日。だから学校を早退しても特設サイトにへばり付き、涙を流して推し活中だった凛花。だから廊下からの大きな物音にかなりの苛立ちを覚えた。
「誰よ、もう………………えっ…………?」
そして声を大きめに出しながら廊下へ飛び出すと……
目の前にいたのは──
銀髪のロリっ子美少女。でも、その容姿は明らかに…………
「──あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???Σ(゚Д゚)」
大量の涙が無意識に一瞬で溢れてくる。だって、だって、目の前にいたのは正真正銘の……琥珀ちゃんだったからだ!!
これは奇跡だ。神様が奇跡を起こして凛花と琥珀ちゃんを出会わせてくれたのだ!!!!!!
「琥珀ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁんんっっっ!!!!!!!」
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