第2話 服がダボダボって歩くのが阻害されてツラい
俺が俺じゃなくなって、女になったというのは理解した。もちろん納得はしていないけどな。
でも、これからどうしようか。このまま引きこもりを続けていたい気持ちもあるが、家で家族と鉢合わせた瞬間にアウトだ。
引きこもりと言ってもトイレはするし、お風呂にも入る。家族と会うのはそれなりの確率であるのだ。
多分すぐにでも、カミングアウトするべきなのだろう。事情を話して力になってもらうべきだろう。だけど……今さら家族とコミュニケーションを取れる気はしなかった。だってもう既に俺と家族との間には深い深い溝が出来てしまっているのだから。
「…………それにしても、」
──服がダボダボ過ぎる。これじゃあ、阻害されて上手く行動が出来ない。だからトイレにも行けてないし、その……俺が本当に女の子で女の子なのか?と、男の子の男の子はまだあるのか?の確認が出来ない。まぁ、感覚的に結果は見えてるけど。
取り敢えず、履いていたズボンは見捨てた。こんなダボダボなズボンを履いていたら常にズボンを持っていなければならなく、両手を犠牲にしていると言っても過言ではないからだ。
一緒にパンツも脱げたが……ズボンと同じ理由で見捨てた。
そうしてブカブカの上着だけが残るが、今の俺の低身長ならばワンチャンワンピースのようになるので結果オーライだと思う!( ̄▽ ̄)ニヤリッ
「よし……」
これで準備は完了、恐る恐る自分の部屋から出る。
もう少し引きこもって完全に深夜になってから移動したかったが、尿意がそろそろ限界だったからしょうがない。
うぅ~いつもの引きこもり堕落生活ならば、こんな失態を犯すことはないのに。
昨日は昼頃から酷い眠気に襲われてすぐに寝てしまい、昼に目覚めて気付けばこんな姿で……って、全部全部、神様(自称)のせいじゃんか!
俺は若干ピリつきながら、ゆっくりと音を立てずに階段を降りる。時間的には親や姉は居ないはず、だが……もしもがあるかもしれない。俺の姿も姿だし、細心の注意を払うのは当たり前だろう?
☆☆☆
今は平日の昼の2時ぐらい、父母は仕事。姉も高校。だから問題は無い……はずだ。
コソコソと音を最小限に抑えながら移動する。
「ぐっ……」
今更気づいたが、長い銀髪が邪魔でかなり歩きづらい。それに、この身体にもまだまだ慣れていないからバランスも地味に取りづらい。服はさっき改善したから良かったが、もし服を改善していなかったら大惨事になっていたのは見るまでもないだろう。
あっ……でも、そろそろ限界だから、急がないとな。
男と女ではどうやら我慢の仕方が違うらしい、だから今の俺の我慢の限界値は限りなく低いのだ。
階段をゆっくりと降り、トイレまでは残り数メートル。数秒ほどの移動、瞬き数回程の移動……だが、ここで俺の耳が何かを察知してしまう。
~~♪
「──ッッ!?」
俺はすかさず距離を取り、物陰からリビングを見つめると同時に耳を澄ます。すると……リビングの方向からテレビの音がうっすらと聞こえて来ることが分かった。
どうしてこんな時間に家族がいるんだ?
理由が一切分からず、ただただ唖然と口を開ける俺……って、今はそんなことを考えている余裕は無いんだって!
そろそろ本当に漏らしてしまうっ(;_;)!
うぅっ……でも、陰キャでコミュ障の俺にはいつリビングから家族が出てくるかが怖くて、前に進めない。
「でも、でもっ!」
行け!漏らしたらもっと大変だし、人間として終わる。家族にも確定でバレる。全てがおじゃんになる!
俺はトイレへ向かって走り出した。気を抜いたら今にも決壊しそうだったからだ。久しぶりの全力疾走……ドタドタと音を立てるが、今の俺の頭の中には“トイレ”しか無く、気にする余裕は無かった。
だが、俺は忘れていたことがある。
──それは俺が美少女になって、まだこの身体に慣れていないということ。それと、単純に運動不足だということに。
「あ!?」
俺は数歩の全力疾走で、足が上手く動かず、絡まり、勢いよく転んでしまった。
そしてそのお腹への衝撃で……今まで踏ん張っていた力がゆるりと抜け落ちた。
「──ああっ……( ;ᯅ; )」
そうして等々、決壊してしまった。
「──な、何ごとよ!?」
そして不運にも、リビングにいた家族にも聞こえてしまったようだった。 声で分かったが、リビングにいた家族の正体は俺の姉であった。
確か姉は……って、て、もう!?
「あ!待っ──!」
「誰よ、もう………………えっ…………?」
すかさず呼び止めようとするも数秒遅く、久しぶりの姉との再会は、俺が大惨事を起こして泣いている状況……という最悪な形となった。
はい──終わっちゃった、人間として。( ´∀`)ハハハ
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