引きこもりの俺を外に出したいからって、美少女にするのはどうかしていると思うんだが!?
かえるの歌🐸
第一章 俺が美少女になっちゃった件
第1話 神様(自称)はキレていた
冬が終わり、寒く厳しい季節から暖かい長閑な季節に移り変わろうとしていた頃──俺は1人、自分の部屋にあった小さな手鏡をじっと凝視していた。普段はこんなことなんて絶対にやらない。だって自分の情けないガリガリのやせ細った身体なんて見たくも無かったからだ。
でも、今、この時だけは例外的に違っていた。
「…………?」
俺は何度も、何度も、何度も、何度も、高速に頭を動かし、2度見、3度見、4度見、5度見を繰り返し、その鏡に映る自分の姿に見入ってしまう。
あ、先に言っておくが別に俺はナルシストではない。
ただ、普通ならいつもの俺が( ・́∀・̀)ヘヘヘとしけた笑い顔で映るはずのその手鏡に、映っているのがどこからどう見ても“俺”じゃ無かったってだけだ。
「な、な、な、美女……いや、美少女なのか?」
身長は140センチ程だろうか、髪の色は美しく艶のある銀髪。瞳はサファイアの宝石のように青く輝き、手足は肉付きが良く健康的で圧倒的な幼女体型。顔立ちもテレビとかじゃ滅多に見ないアニメやゲームよりの神秘的な可愛らしい顔立ちで、人間と言うよりかは銀髪のエルフと言った方が適切なのではないだろうか?
そう思える程の美少女だった。正直……自分自身で興奮してしまう程であった。
「な、な、な、な、な、なんで……って、あ!?」
声もいつもの声変わりした低い声ではなく、高く、明るい。まるで鳥の鳴くような、鈴のなるような透き通った声で永遠に子守唄のように聞いていられるような声であった。
でも、声を出したのは明らかに失敗だった。だって、より一層に俺の頭を不可解にさせるからだ
「──ど、ど、ど、どうしてこうなったんだぁぁぁぁぁぁっ!? 俺のバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
俺はあの時の自分を恨むように、ただただ叫ぶのであった!
☆☆☆
──俺がこんな美少女に変貌した原因は多分、アイツのせいだろう。俺は何故か鮮明に覚えている不可解な夢のことを思い出す。
俺は重度の引きこもりだった。引きこもる理由は追追説明するとして、そのせいで毎日家でゲーム、ゲーム、ゲームな生活を送っていた。そんなだらしないゲーム生活のせいで有名所のゲームで世界ランカーなんかも一時期やってたりもしてたけど……
って、そんなのはどうでも良くて、そんな俺のダラダラしたつまらない人生を見てどうやらその人はキレていたらしい。
俺の目の前には白髪に立派なあごひげを携え、威厳がありそうな老人が杖を着いて仁王立ちで立っていた。一般人以下の俺でもわかるぐらいにその老人は光り輝いていて、どこからどう見てもただならぬ存在だということは明白であった。
「──ワシは偉い神様じゃ! それで業務で貴様のことをずっと見て来たがッ、なんなのだ? 一体いつまで貴様は怠惰で自堕落な生活を送るつもりなのだ?」
「え?」
どうやら、俺の怠惰で自堕落な生活を見てキレているようだった。
(´Д`)ハァ…、めんど。俺の人生だし、別にどうでもいいじゃん。てか、この人神様(自称)って面白い冗談を言う老人だな。
「で、で、でも。しょうがないじゃないですか?」
心の中で面倒だと思っても、俺が人とコミュニケーションを取るのは約1年ぶりと言っても過言では無い。だから……まぁ、神様(自称)でもまともに喋ることは出来ないよね。
目と目を見ながら話すことも、まともに出来ないしな。
「どうしてなのだ?貴様は別におかしな所など────いや、訂正する、十分過ぎるほどに貴様はおかしかったな」
神様(自称)は俺に気を使ってくれようとしたのだろうけど、俺の圧倒的コミュ障を見て、言いかけの言葉に急いで蓋をした。
うん、地味に傷付くなぁ。
まぁ、いいけど。(`ーωー´)イラッ!
「っ、だが、単純に理由が気になるのだ。どうして貴様は他の者と同じことが出来ない?どうして家に引きこもる?どうして1人になりたがるのだ!?」
──そんなの……決まってるじゃないか。俺には自信が無い、それは昔から。だって、俺の家族は……いや、家系は天才なんだから。その中で俺だけが天才じゃない。それだけで劣等感だった。
それに俺に男としての魅力は無かった。俺の父、母、姉はすごい美男美女なのにだ。俺は平凡。いや、平凡以下のゴミだった。
だからよく比べられた。出来る姉と不出来な弟。頼りがいのある姉と頼りがいのない弟。運動が出来る姉と運動が出来ない弟。力のある姉と非力な弟。カッコイイ姉とカッコ悪い弟……などと。
もう、だから。疲れたんだ。俺がどんなに家族に褒められたくて頑張っても、努力しても……姉や家族が残して行く経歴は越えられないのだから。
「…………っ!」
( -᷄ ω -᷅ )情けない。このコミュ障だって、自分に自信が持てなくて発症したものだ。頭の中で言葉は選べる。だがその全ては言葉として出て行かない。上手く言葉が使えない。それだけで外の世界では生きにくいのだ。
だから、俺は全てを投げ打って殻に籠った。誰も近付かせなかった。自分の存在をこの世から抹消したかった。
……逃げた、逃げた、逃げた。
そしてまたいつか、俺の存在を忘れた世界が出来て、また新たな自分に生まれ変われるって信じていたから。
「だけど、」
そんなのはただの幻想。俺の頭の中で結論づけられた理想でしかない。だけど、引きこもり始めてしまったら止められない。身体が、脳が、本能が外の世界を拒絶したのだ。
「──でも、外には出たいのじゃろう?」
「そ、そんなの当たり前じゃないですか!」
……あれ、言葉が出た?相手のことを考えず、自分の、自分だけの本心の言葉だったからだろうか?
「だけど、俺は男なのに情けなくて、ダサくて、おかしくて、陰キャで、コミュ障で、運動音痴で……本当にどうしようもないんです!俺はっ……一体どうすればいいんですか?」
もう既に神様を信じ込み、願った。救われたいと、変わりたいと。
「ふむふむ。なるほど、なるほど。ならば────可愛くて、クールで、陽キャで、運動神経抜群な“女”になれば、貴様は変われるのじゃな?性格的なことは、これからの貴様次第じゃが……」
「はい( 'ω')?」
「なんだ、そういう事じゃないのか?つまりは、女になりたいということなのだろう?」
どうやらこの神様………いや、この神様(自称)は、俺の願いをまるっきり逆転させれば俺が変われると思っているのだろう。そんなのハッキリ言って間違ってるのに。
「ちが──」
すぐに訂正しようと声を出そうとするも……
「なるほどのぉ、これまで貴様を見ていたがそういう理由じゃったのか……あいわかった。任かせろ、絶対に失望はさせんぞい!」
何の?いやいや、違うからね!俺は別に女にはなりたくないんだ。単純に心が変わりたいって言うか……生まれ変わりたいって言うか…………
「じゃあの。もう会うことは無いと思うがの!」
そう神様(自称)が笑顔で手を振ると、視界が徐々に狭まり、急激な眠気に襲われる。
「ちょ、ちょっと、人の話をちゃんと聞けやぁぁぁぁぁぁぁー」
そう叫んだが、どうやらもう遅かったらしい。俺の言葉は虚空へと沈んだ。
☆☆☆
数年に渡り、引きこもりを続けていた怠惰の少年の意識を元の身体に戻した神様(本物)は、久しぶりの願いに頭を抱えていた。
「うーむ、女にすると言ってしまったが、どういう顔の女になりたいかは聞いておらんかったのぅ」
運動神経や記憶力とかは適当にイジれるのじゃが……顔はどうにも難しい。神と人間では価値基準がまるっきり違うからじゃ。
だが、もうあやつを呼び戻して聞き直すのも、中々に面倒じゃし……
「そうじゃ!あやつのやっていた“げーむ”とやらの女の“きゃらくたー”にまるっきり似せてやればあやつもきっと喜ぶはずじゃろう! お、ちょうど名前も似ている“きゃらくたー”もいたしの!ワシ、相変わらずの天才、ゴッドの中のゴッドじゃな!」
(`▽´)ガハハ
──そう、神様(本物)の勘違いにより、彼の人生はこれから大きく変貌することになる。それが、幸運へと変わるのか?不運へと変わるのか?それはこれからの彼次第である。
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