第33話
「は……?」
能力を持たない人間って……。
それはつまり、兄貴のように普通に暮らしている人々のことではないのか?
混乱する俺と対照的に素子さんは平然としていた。
「対象は殺さないとポイントは手に入らないから注意するように……って、書いてあるの」
「見せてください!」
そんな内容が書いてあるとは到底信じられない。
俺は素子さんが持つ巻物を奪おうとするが――、
「自分のを見ればいいの」
するりと身体を捻って、躱されてしまった。
ここで能力を使って奪おうと考えたが、
「何をする気だ? 私も持ってるから、一緒に見よう」
能力が書いてあるだけの巻物に、ルール確認という用途があったとは考えも付かなかった。
「本当なのかよ……」
力を持たない人間を殺すように仕組まれたルール。
これもまた――魔族が決めているのか。
決して逆らえぬ俺達を使って遊ぶ魔族。優越感に満ちた扱いに満足してそのことに気付かぬ【魔能力】を持つ人々。
良く出来た仕組みだ――。
怒りで拳を握る俺に、
「より多くポイントを稼ぐためには……バラバラで行動したほうが良いと思うの」
どうやれば、この勝負を勝てるか指示をする
「素子さん!」
「どうしたの?」
「
「……? 魔族が決めたルールなの。逆らったら私たちが殺されるかもしれないの」
【魔能力】を持つ俺達は、魔族には逆らえない。
それは俺も知っている。
でも、だからって、そう簡単に割り切れるわけがない。
素子さんを説得しようと、詰め寄る俺を再び
「ここで言い合っていても、埒が明かないですよ。ルールで決められている以上、仕方がないことです」
「
このルールに何も思わないのか。
そう告げようとした俺の口に人差し指を当てると、俺に顔を近付けた。
「君が何を言いたいのかは分かっている。だからこそ、ここで文句を言っても仕方がないですよ。止めるならば身体を使わないと」
「
言葉が通じないのであれば、一線を超えぬ拳で語り合う。
それは兄貴の話を聞いて俺が辿り着いた答えだった。
「それに、この時代では素子さんの考えが当たり前。そこを認めるところから、君は始めるべきだと私は思うよ」
ウィンクと共に俺から離れる
自分が常識だと思うことを一方的に相手に押し付けるのではなく、理解したうえで話をした方が良いか。
死を前にして、俺はそんなことも分からなくなっていたのか。
「そうだよな。ありがとな、
「礼には及ばないさ。それより、『ハント戦』は全員がバラバラの場所からスタートするようだ。なるべく早めに合流したほうがいいだろう」
「……だな」
ルールを俺達が確認し終えると、天からの声が響く。
「よっしゃー! それじゃあ、試合始めるぜ? よーい、ドン!!」
弱者を殺すゲームが、運動会のような楽し気な声で始まった。
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