第13話
「ぐあっ!!」
目を開けると、そこは見知らぬ天上だった。ファンタジー世界には似合わぬ和室。畳の匂いが祖母の家を思い出させる。
埃臭い布団をどかして、俺は上半身を起こした。
「あ、起きた?」
眠っていた俺の隣で
どことなく、その目は哀れみを含んでいた。
「……。俺はどうなった?」
「一撃で
記憶を無くした俺と違いアカネは一部始終を目撃していたようだ。
俺が意識を失う前に何が起こったのか説明してくれる。
「外に出ようとしたら、銅次の動きがいきなり止まったのよ。そのまま、何分間も動かなくて……。声も聞こえてないみたいだし。で、痺れを切らした
「……
あの人、色々とキャラが合ってないな。
と、そんなことはどうでもいいか。
今重要なのは――、
「時間貯蓄すると、その間は俺は意識を失うってことか」
当然か。今まで、当たり前のように時間を貯蓄していたが、貯蓄はあくまでも貯蓄。本来、俺が過ごすはずの時間を切り取って貯めているだけのこと。
切り取った時間分、俺は動きが止まってるらしい。
「みたいね。つまり、勝負の最中に貯蓄は出来ない」
「……」
なんだろう。
時間を操れるなんて、ラスボスみたいで最強じゃんと密かに思っていたけど、全然、そんなことない気がしてきた。
色々と不便すぎるだろ……。
「でも、一応、貯蓄は出来てるみたいだから良かったよ」
俺の視界の隅に浮かぶ数字は、
1:00:00
一時間、俺は貯蓄に成功していた。……勝負には負けてるので、成功と呼べるかどうかは不明なのだが。
「ともかく! 俺はもう一度、
俺は戸を開き、部屋を飛び出す。どうやら、俺が眠っていた場所はビルの三階。
レジのような場所で椅子に座っていた。
「目が覚めたのか。なら、早く立ち去ってくれ。銀の
俺に視線を向けずに
「……。もう一度。もう一度、俺と戦ってはくれないか!」
「勝者が敗者のリベンジマッチを受けるメリットはどこにもないさ。それくらい、君でも分かりそうなものだけど」
もう一度。
それを望むのは敗者だけ。勝者はもう一度、戦うメリットはないのだ。ならば、戦わせる気にしてやる。
俺は【魔能力】を発動し、動きを加速させる。読んでいた絵本を奪い取り、パタパタと振って見せた。
手にしていた
「……いつの間に。それが君の【魔能力】という訳か」
「そういうこと。今度こそ本気で戦おうじゃないか」
どうだ。
俺の力を見たら戦いたくなるだろう?
だが――。
「……断る。なんで、わざわざ、厄介だと分かった君と戦わなければいけないんだ。私は普通に勝ち逃げを選ぶよ」
「……」
凄い心が虚しくなった。自信満々で
そもそも
「まあ、どうしてもというのであれば――」
「お願いの仕方ってモノがあるんじゃないのかな?」
……50年後の未来。
変わらぬ文化もあるようだった。だから、
未だに把握できぬ
「……土下座」
土下座するだけでチャンスが貰えると考えるべきか……。
俺はどうするのが正解なのか悩んでいると――。
「きゃああ!」
外から悲鳴が聞こえてきた。何事かと俺は扉から顔を出して外を覗き込む。舗装された地面の中央。そこには赤い制服を着た二人の男が立っていた。
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