第49話 一陽来復 いちようらいふく
一陽来復 いちようらいふく
冬が終わり春が来ること。新年が来ること。また、悪いことが続いた後で幸運に向かうこと。陰の気がきわまって陽の気にかえる意から
俺は夢を見た。
“かごめかごめ
かごのなかの とりは いついつ でやる
よあけのばんに
つるとかめと すべった
うしろのしょうめん だあれ”
カグラとイブキと少女が手を繋いで歌っていた。夢の中で俺は目覚めた。少女の肩に不死鳥が止まっていた。
『おはよう』
ユキが俺を起こす。イブキはカグラと少女とじゃれ合っている。
少女は四つ身を着ていた。白狐。また会ったな。
境内を散歩し皆で御手洗団子を食べた。食べ終わった白狐、イブキ、カグラの口をユキが拭いていく。
白狐が手を伸ばす。俺は白狐を肩にのせ、皆で神殿に向かう。不死鳥は俺の頭に止まっている。
本殿に至る道はスミレが咲き乱れていた。カグラが一本抜いてイブキの耳飾りにする。イブキも二本抜いてカグラの耳飾りにして笑っていた。
俺は白狐と不死鳥を乗せ、ユキと手を繋いでいる。階段を登る。神殿が見えた。一対の狛犬が見える。
奥に進む。神殿の前には一本の矛と二つの玉鋼、一つの木箱があった。白狐は矛をイブキに、二つの玉鋼をユキとカグラに、木箱を俺に渡した。そこで4人とも目が覚めた。
俺たちは第二領域の下空に転移する。白狐が俺たちを呼んでいるような気がする。俺たちは飛ぶ。途中の魔物は切り飛ばしていく。
どれくらい飛んだのだろう。遥かに神殿らしきものを探知した。白狐が呼んでいる。夢と同じ神殿だ。鳥居から入る。
途端に魔物が探知されなくなった。階段を登ると神殿が見える。一対の狛犬も見える。神殿の前には白い狐がいた。白狐だ。
奥に進む。白狐は二つの玉鋼を壱号機、弐号機に渡す。玉鋼が糸状に分解しそれぞれの機体に入っていった。矛を弐号機に渡した。壱号機に木箱を渡した。
白狐が神殿から出る。俺たちは付いて行く。鳥居をくぐると暴走ダンジョンの地表だ。魔物達が蠢いている。
弐号機が矛を地表に刺した。神殿からの巨大な二匹の狛犬が俺の前に控えた。
“源次郎、種をあげて”
俺は木箱から茶色い種を二粒取り出し、屈んでいる二匹の狛犬にあげた。俺たちのマリオネットの倍はある、巨大な狛犬たちは地表を駆ける。
狛犬の踏みしめた足跡からスミレが花咲く。スミレは魔物を吸収し、咲き乱れ広がっていく。かなりの速度で広がる。狛犬たちは更に奥に駆けていく。
しばらく、その光景に見とれていた。
広がるスミレの大地
一切の穢れが感じられないスミレの大地
振り向くと少女の姿をした白狐がいた
そして鳥居の中に消えた
俺たちはゆっくり飛んでいく。スミレの大地の上を飛んでいく。地表は緑と紫や青に染められている。それをもっと見続けたくて、飛び続ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます