第48話 断崖絶壁 だんがいぜっぺき

断崖絶壁 だんがいぜっぺき

切り立ったがけ。非常に危機的な状況のたとえ



 キリがない。

 今で一週間続けている。

 魔物は尽きない。

 ゴールが見えない。

 違う何かが必要なのか。


 ヒイロカネは集まっている。ヒイロカネによるマリオネットの更新、その上での殲滅力なのか。僕はイブキが心配だ。僕は大丈夫。壱号機も弐号機も機動、魔法ともに日々成長している。それは判る。

 この一週間、帰って食べて皆で瞑想訓練して皆で寝る。皆それぞれ急激な変化があるのは感じる。けどその先に答えはあるのか。

 ゲンジはこの先に答えがあると判断しているのか。



 イブキの高揚感がビンビン伝わってくる。ツタが伸びてくる。弐号機の全身に炎を纏わす。ツタが燃える。本体を見つけた。火弾を連射する。ヒイロカネを回収した。


 壱号機との距離は100m、壱号機を2匹目のカメレオン型魔物が狙っている。鎖を撃ち、引き寄せ、踏みつぶした。壱号機に合わせ、平原に移動した。弐号機と同程度の恐竜のようなトカゲの群れがいた。イブキは迷わずその群れに跳びこんで、殴り殺す、心臓に手を突っ込み魔石を抜く、倒し踏みつぶす、逃げようとする奴を鎖で引き寄せ頭を拳で吹き飛ばす。2本の角がバチバチ言っている。ヒイロカネを回収した。


 黒いワームが恐竜を飲み込みに出てきた。弐号機は地上に出た首?を掴み、瞬移で空中に飛び上がる。ワームの全体が空中に放り出される。鎌の魔剣をぐるぐる回しながら胴体を空中でぶつ切りにしていく。ヒイロカネを回収した。


 そのまま鎌を投げた。地上にいる三つ首の何かの首を三つとも切断した。ヒイロカネを回収した。


 遠くから巨大な目玉が光った。周りの空間がガラスの様に凍り付き時間が止まる。


“▼&QdZ%!!!!”


 イブキが叫ぶ、イブキの怒りを感じる。弐号機はその空間のガラスを粉々に砕きながら目玉に向かって走る。壱号機が空間を溶かし目玉の傍に転移していた。壱号機が魔漸で目玉を切る。弐号機は切れた端を手でつかみ肉を削りながら魔石を抜く。ヒイロカネを手に入れた。


“N×%Ys!!!”


 イブキがまた叫ぶ。言葉になっていない。弐号機の手に巨大な爪が生えた。黒い霧に変わる前の目玉の胴体を爪で細切れにする。また恐竜の群れを見つけた。全身バチバチ稲妻が奔る弐号機をみて逃げ出した。弐号機は追いかけ、1匹ずつ爪で切り裂く。ヒイロカネを回収した。


 更に逃げる恐竜に弐号機の口から火炎を吐き、焼き尽くす。ヒイロカネを回収した。


 角から稲妻が奔り、上空の飛竜を落とす。ヒイロカネを回収した。


 サイの様な魔物の突進に弐号機が四つ足で駆け迎え撃つ。


 二本の角が巨大化する。


 弐号機の尻尾も反って伸び、サイを貫く。


 角を振りサイを空中に投げ飛ばし、落ちてくるのを爪で刺し貫く。

 

 ヒイロカネを回収した。



 なんで僕は泣いているんだろう。イブキ!イブキ!次の魔物にマントを飛ばす、風車に弐号機は飛び乗り、大きな人型の魔物に突っ込む。胴体を切断する。ヒイロカネを回収した。


 イブキ!回収したよ!弐号機は消える前の人型魔物の上半身を噛み首を捩じりきる。

 イブキ!  イブキ!


 弐号機が首から滴る血を飲もうとする。


 イブキ!


 僕の涙が止まらない。


“イブキ!!!”


 僕は弐号機に行く。コクピットからの無数の糸で僕が具現化する。イブキが見える。イブキを包み抱き、イブキの背中をさする。


『イブキ、囚われてはダメだ、僕が見える?僕はここだ。そっちに行ってはダメなんだ。そっちには朝日は来ない。瞑想での君を照らす朝日を思い出すんだ! 深淵に囚われてはいけない、奴らも僕たちをみている。奴らも僕たちを引きずり込もうとしている!ダメだ、ダメだ、ゲンジはこっちだよ!ユキもこっちだよ!僕もここにいるよ! 戻ってこいイブキ!僕はここだ!僕の元に戻ってこい!』


 暴れるが、絶対に離さない。僕はイブキのことだけに集中する。それ以外はゲンジとユキが守ってくれている。


 イブキが僕を見た。光が戻った。


『カグラ・・・』


 僕らはそばに来ていた壱号機のマントに入る。一緒に帰還ゲートに転移した。小屋に帰った。イブキがずっとユキにすがって泣いていた。4人一緒にゲンジの部屋に還る。4人一緒にベットに倒れ込むように眠った。

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