第43話 慎重居士 しんちょうこじ

慎重居士 しんちょうこじ

準備怠りなく、物事を少しずつ丁寧に進めていく人や性格のこと


 次の日、俺たちは火口内のタラスコンの殲滅に出る。火口内にいる全てのタラスコンを討伐する。安定化のための魔動機は多くのオリハルコンも必要だ。

 俺たちのは既に提供しているが、まだ足らない。探知で見つけ次第転移で移動し首を狩る。

 イブキと対に螺旋を描きながら進む。三日掛けて、全てのタラスコンを討伐した。カグラによると安定化のためのオリハルコンはこれで足りたそうだ。

 明日は第二領域に入る。


『僕が知っている限りでは空間とその奥に地面がある。空は上空、中空、下空と別れ、ドラゴンが制空しているよ。ドラゴンの強さは首の数で決まってるんだ。最も強いのが下空に出る3本首なんだ。3本同時に飛びながらブレス放つんだ。しかも知能が高いんだ。複雑な魔法も使ってくる。このドラゴンより強力な魔物も地面にはいるっていわれてる』


『だからドラゴンは空に行くしかないんだ。地面には近づいてはいけないよ。もうちょっと待とうね。ドラゴンの魔石はアダマントって言うんだ。下空のドラゴンと地上の魔物の魔石はヒヒイロカネって言うんだ。種類が変わるんだ。それくらい上空、中空のドラゴンと地上の魔物は違うんだ』


『ドラゴンはドリルで確かにいける。けど地上はステージが違う。ちゃんと準備していこう。その空中だけど、穴に近い上空は一本首なんだ。この一本首を討伐してアダマントを集めてマリオネットを生み直そう』


『そして、地上に近づき二本首、三本首、その後で地上に行くんだ。僕たちは人間視点では規格外だよ。けど、ただでさえ段違いの魔物がいきなり現れるんだ。段違いと接敵したら、準備なく接敵したら、僕たちでも危ないのはもう学んだことなんだ。僕たちは誰か一人でも欠けることが許されないクランなんだ。皆で赤い砂塵なんだから』


 第二領域に入った。広大な空間だ。地面や壁が見えない。ここでの天井である火口側の壁に沿って移動する。

 ドラゴン、一本首、まだ遠い。しかし巨大な気配を感じた。ドラゴンも俺たちを感じた。距離あるなかでブレスを吐く。俺たちは転移で接近し俺が正面で首に光漸を放ち、イブキが背後からそれ目掛けてドリルで突っ込む。

 ドラゴンはブレスのカウンター気味で来る光漸もドリルを躱せない。首が飛び、体に大穴が開けられた。しかし、魔石の位置は首根っこ付近であったようで、穴は塞がれ、首が再生を始める。国行を抜きマントを巻き付ける。マントと国行が溶け合い、白く長い柄と白い刃を持つ巨大な薙刀に変化した。

 振り抜く。ドラゴンは二つにズレる。そのまま縦横斜めと斬撃を重ね、ドラゴン細切れした。


『討伐です』


 マントと国行を合体させる技を魔剣、この魔剣による光漸を魔漸と名付けている。次のドラゴン探知まで穴から天井に沿って螺旋状に進む。次のドラゴンを探知した。一本首だ。

 イブキが転移と同時に魔剣を顕在させる。イブキの魔剣は薙刀“雪様”に黒いマントが合体し、巨大な禍々しい黒い鎌になる。魔漸でドラゴンを切る。

 次のドラゴンで俺はマントを持ち投げる。マントは巨大な手裏剣として自転しドラゴンの首を切る。マントはそのまま戻ってきて俺の背を包む。“風車”と名付けている。

 ビーチで開発したマントとのコラボ技をドラゴンで試していき、ドラゴンを討伐していく。

 今日だけでもかなりのアダントを得られた。これを続けていく。

 

 地上の安定化は進んでいるようだ。パイプラインも伸びている。Aステージの冒険者もAステージ側からのパイプラインの延長作業の護衛に当たっているようだ。意外なのがエスワットがパイプライン延長作業に参加しているという。イブキが教えてくれた。

 ヘーゲル卿の自分の娘を前線に置くという、身を切る鼓舞のやり方で作業者や冒険者たちの士気も上がっていると聞く。

 火口には既にオリハルコンを一部組み込んだ複雑な魔動機器による結界で覆われ、火口内へは魔動ゲートで移動するようになっていた。

 火口からの魔力の濃縮装置も設置されておりパイプラインへの接続作業が進行している。安定化が粛々と進んでいる。既に火口付近には安定ダンジョン第一階層として火口を分離した空間が出来ており、現在第二階層を設営中らしい。

 俺たちがドラゴンを倒すことで魔力はドラゴンの生成に流れ、火口の魔物生成に行き渡らない。もしタラスコンが発見されれば、他のアタッカークランが討伐している。

 カグラが言うにはクラーク卿やギルドは、このまま俺たちには第二領域のドラゴン討伐を進めて欲しいとのことだ。

 

 朝の鍛錬、食事、第二領域での討伐、帰還後ビーチで技の開発、こんな毎日を送っている。自らマントを羽織り、マントでの技を開発していく、この安全圏での試行錯誤が効いている。

 ユキやイブキやカグラといった俺とは違う発想をもつ仲間により日々新しい技が生まれる。それを共有し、それぞれモノにする。

 マリオネットでは二人で一つだが、今は個人で使いこなしていく鍛錬をする。それがマリオネットでの技としての精度を上げている。

 マリオネットでの技を向上するには、自身の身体での鍛錬が重要だと理解した俺たちは、アダマントでの個人装備を先行製造し身に着けている。

 ユキと俺は壱号機に似た赤と白のフルアーマー防具、太刀“国行”の大小に壱号機の白いマントを羽織っている。

 ユキとカグラは弐号機に似た赤と黒のフルアーマー防具と薙刀“雪様”を背に背負い、黒いマントを羽織っている。鎖鎌やクナイ等の暗器もアダマントで生産し、ボックスに入れている。それと、アダマントで砂塵用の多量の粒子も生産しボックスに入れている。

 アダマントの粒子で瞬時にイメージを成型できる。俺たちの鉄火弾の鉄はアダマント弾に置き換わっており、カグラが“メタ火弾“と名付けた。第二領域の魔物は基本強い魔法レジストを持つが、今のところ貫けないものはない。

 技の鍛錬の時はボックスからフルアーマーセットに一瞬で着替え、Bステージの街では普段着とマントと、俺とユキは国行の大小を腰に差し、イブキは薙刀の雪様。カグラは大鎌を背負う。

 ナバラから俺たちは見た目若いので、余計な諍いを避けるため武器は見せた方がいいと言われている。

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