第41話 用意周到 よういしゅうとう

用意周到 よういしゅうとう

心遣いが隅々まで行き届いて、準備に手抜かりがないさま。



 新壱号機に乗り込む。最初に新壱号機に対面した時その大きさに驚いた。2倍か、それと多数の突起がありゴツイ。腕に盾もある。それとなんといってもマントなのか、背に白いマント、マントなのだろう、布が付いている。

 その後弐号機を見たが、同じように巨大化し、突起、盾と黒いマントを羽織っていた。さらに2本の角と尻尾がある。


 あの擬態の討伐を目標にする。第二領域の穴まで螺旋状でとにかく見つけたタラトラスを倒していく。

 もうイブキの陽動と俺の陰動を分けず、各々で見つけ次第突っ込む。一匹目、正面から入る。

 顔を伏せ、光線を撃とうとするが、その前に表の硬い側の皮膚を巨大な国行で切る。切ろうとした際に刃が伸びる感覚がある。そのまま首が落ちた。魔石を回収する。  

 奥に高速で進む。次のタラトラスはイブキが低空から接敵し薙刀“雪様”をふるう。首が落ちた。ここから見つけ次第一撃で倒す。

 火弾も多くの魔力を圧縮し高速自転させ細長く棘のような弾にし、打ち込むと内部まで食い込み首を吹き飛ばす。火力が段違いだ。奥に進みながら一匹も逃さず火弾で狩っていく。

 擬態する黒いタラトラスが増えてきた。数匹が纏まって擬態しているのを光漸で纏めて切断した。奥に穴が見えてきた。ユキの探知で擬態しているタラトラスが白く浮かぶ。

 イブキと左右に分かれ双方穴に向かい螺旋状に進むこととし、俺は左から進む。壁に低空飛行で飛ぶ。光線は水平方向からなので瞬移と盾で躱せる。

 火弾の射程距離に入った奴からユキが連続して無数の火弾を誘導しに消していく。纏まったタラトラスは光漸で切る。穴の外は見えないが、ドラゴン等、第二領域側の魔物の来ている気配はない。一日集中力は切れていない。魔力も切れていない。

 途中ワイバーンの群れが飛んできたが、火弾で全て撃ち落す。油断はしない。いつあの穴からこの戦闘の気配を感じ、とんでもない魔物が出てくるかわからない。

 第二領域に続く穴に到達する。探知できる擬態野郎はもういない。

 来た。同じ奴だ。第二領域にまだ距離があるが巨大な存在感が近づくのが判る。イブキが反応し、叫んでいる。黒いエネルギーを体に纏わせると黒いマントが弐号機を包んだ。そのまま穴に向け弐号機は巨大なドリルのような形状に変化した。

 穴の外に飛んだ。ドラゴンだ。不意をつけたのかまだブレスはこない。黒いドリルは一瞬でドラゴンの巨大な体内を突き抜けた。


『討伐です』


 新しい技、とくと見た。さすがだ。


『いやー新しい機体いいですね!カグラの予知と連動してるのか、意識した時には終わっている感じですね!一体感が半端ないっすよ!さすが弐号機、我が息子!ドラゴンの野郎絶対に許せないって思った時には自らが矛になり貫くって、なんでもありっすね!あの裏地が紫の黒いマント、最高っす!途中で分離して勝手に光線塞いだりしてましたよ。ドラゴン野郎の時は紫の世界が私を包みこんで白狐ちゃんとお手手繋いで鬼退治って感じですよ。持つべきものは友っすね!』


『ぼっ、僕は止めたんだからね』


『だねー!カグラの忠告を振り切ったのは悪かったよ、けど兄さんを傷つけた、あ奴がまだノウノウと息をしているなんて耐えられなかったんだ。ゴメンね・・・』


『イブキ!』


『な、なんで!なに泣いてんねん!なに抱き着こうとしてんねん!尻尾、尻尾が!!なに股から回しとんねん!』


『あの技はよかった』


『まあ、兄さん!そうでしたか!兄さんに認められるなんて夢のまた夢、今後も兄さん姉さんの盾となり、そこのけそこのけ兄さん通る、つゆ払いはこの不肖イブキとカグラにお任せください!』


『あの技にはもう名付けたのか』


『いえ、、まだです。ではワタクシめが、兄さん姉さんを傷つけたドラゴン野郎を許せないとの想いで発動した、名付けて“愛の矛”はいかが・・・』


『ま、待ってよ!あの技は僕も関わってるんだから、それと会ったことないけど白狐ちゃんもでしょう』


『あっ、そうか!カグラナイス!名付けて“白狐ちゃんの愛の矛”だったね!よ・・』


『だめだよ。イブキの想いはわかったよ。ここは僕につけさせてもらっていい?』


『なに!カグラはセンスないからなー。まあいいよ』


『僕は技なんでその技を一言で現わせるのがいいんじゃないかと思うんだ。名付けて“ドリル”はどうかな』


『こーら、カグラ、“愛の”はどこいったんじゃ!兄さん姉さん白狐ちゃんはどこ行ったんだ!この至上最高のパワーワード入れんって喧嘩売っとんのか!まあ関係各位に失礼して“愛のドリル”じゃ!』


『なんというか、僕は恥ずかしくていえないよ』


『・・・・・』


『“ドリル”でいい』


 弐号機が倒したドラゴンから魔石“アダマント”はジンに渡し、整備を含め第二領域に行く準備を優先した。Bステージでの朝の鍛錬の後、ジンとユキと共に機体の整備や改良を行い、昼から暴走ダンジョンで技を鍛錬する。まずイブキとカグラが見せたマントと一体化した“ドリル”を取得が目標だ。

 暴走ダンジョンの火口に移動する。マントに魔力を流しながら考えた。あの技は白狐とマントの裏が紫であることからスミレのスキルが絡んでいると思う。

 白狐との戦闘では突然消える、空間から爪を出し攻撃する、スミレは異空間に移動する、このあたりがヒントになると考えた。マントを外し、前に拡げる。裏が紫で表が白、裏を見ていると呼ばれているように感じた。

 マントに入る。入れた。変な感覚だが、おれがマントになったような感覚だ。マントを動かす。落ちずに動く。今度はユキが動かす。ユキは動かしながらマントの形状を変える。

 四方を結んだり、折りたたんだり自由自在だ。ユキと一緒にイブキとカグラの技“ドリル”を再現してみる。マントの白い表の中央先端でドリルを作る。自転させる、飛ばす、できた。ワームが探知されたので、土の中のワーム目掛けドリルを撃つ。一瞬で土とワームを切り裂き、火口内部に抜けた。これか、突破力は段違いだ。この大きさでこの速度、ドラゴンも貫けるな。

 今度はマントを元に戻し、背に羽織る。背にスミレを感じる。さっきまでいた火口付近のイメージを抱く。ふっと浮いた感覚でマントに吸収される感じがした。

 目の前は火口付近の地上だ。白狐の瞬間移動だ。第二領域の穴をイメージした。背に吸い込まれる。移動していた。

 数匹のタラスコンが光線を放つが、マントが弾く。火口付近をイメージした。元に戻れた。瞬移とは全く違う技だ。ユキが“転移”と名付けた。

 一旦帰還する。ジンに話して壱号機のマントの一部を俺とユキ用のマントに切り取ってもらった。そのマントを着て小屋に帰った。

 小屋の前のビーチで俺たちは転移を試す。ユキが消えた。目の前にいて微笑んでいる。今度は俺が海の上を意識し背中のマントに入る。できた。

 横には既にユキも来ていた。今度はマントに入りドリルを試す。ユキがマントに消えた。

 マントは靡いたり、折れたり棒状に丸まったりした後、ドリルを作った。物凄い勢いで白く光りながら海に飛んでいった。触れた海水が一瞬で蒸発する。速度を落とし帰ってきた。ドリルが解けるとユキが出てきた。次は俺だ。マントに入りドリルになる。ドリルのまま空を飛ぶ。一瞬でかなりの距離に飛ぶ。速度を落とし、ユキの元に帰るとドリルを解く。二人で小屋を意識しマントの中から戻る。

 イブキとカグラがいた。唖然とした顔で俺たちを見たイブキとカグラは走っていった。しばらくして、黒いマントを羽織った二人は、ビーチで延々とユキと一緒に転移やドリルを鍛錬していた。

 俺はマントを利用した他の技の開発を続ける。今度はマントだけを動かせるかやってみる。マントの感覚は掴んでいるのでマントだけ飛ばしたり、形状を変えたり、マントを扱う鍛錬を続ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る