第36話 実践躬行 じっせんきゅうこう
実践躬行 じっせんきゅうこう
理論や信条などを、自身の力で実際に踏み行うこと。「躬」は自ら、自分での意。口だけでなく、実際に踏み行うことの大切さをいう語
今日から暴走ダンジョンに行き、マリオネットの稼働確認を行う。
俺たちのマリオネット2機が並べられていた。俺の機体は赤と白に染まる“赤い砂塵壱号機”、イブキの機体は赤と黒に染まる”赤い砂塵弐号機“だ。細かい造形は違うが形は似ている。
壱号機に乗り込むとジンの声が聞こえる。
『ゲンジ、ユキ、魔力を循環させてくれ』
ゲート傍のコクピットに入っているユキからの魔力を感じる。壱号機を掌握できたことがわかる。
『よし。そのままゲートに移動してくれ』
格納庫から中央のゲート入り口の扉の前に立つ。扉が開く。白い空間に入った。転移する。
そこは魔動機に囲まれた筒の中だった。
『俺の声は聞こえるか。いまから射出する』
床がせり上がる。結界なのか、粘度のある空間を抜け外に飛び出した。
瞬移を意識すると生身と同じように空間に足場が作れる。それを踏み込みながら地上まで移動する。
しばらくするとイブキの弐号機が出てきた。弐号機も空中瞬移で何回か跳躍していたが、そのうちに飛んでいた。上下左右に飛行しながら地面に降り立つ。
今日は暴走ダンジョンの火口付近に生息する“ワイバーン”と呼ばれる魔物を狩りながら機体の制御精度を高めることが目的だ。ミスリルによる砂塵での探知で上空にそれらしき群れが確認できる。
『イブキ、行くぞ』
『了解っす』
声が返ってきた。まず火弾を作る。巨大な白く光る弾が5発できる。ワイバーンの群れに放ち跳び上がる。何回か瞬移での足場を踏んだが、ここの溢れる魔力に満たされた空気と同化できる感覚があり、それに乗ることで俺も空中を飛べた。
制御を試すため左右上下に移動してみるが、違和感はない。イブキの火弾含め10発がワイバーンに向かうが、既に奴らは初期軌道から避けていた。しかしユキが火弾の軌道を曲げ2発が挟み撃ちする形で1匹撃ち落した。
『討伐です』
ユキの声が聞こえる。ワイバーンは目視体長40mくらいか、炎のブレスを吐く。前に足場を作り更に上空に跳び、避けた。左腕から巨大な国行を模した刀を取り出し、光漸で薙ぐ。2体を切断した。
『2体討伐です』
群れに近づく。群れの一匹ごとの正確な位置が見える。背後、下部のワイバーンも見えている。国行で間合いに入った奴を直接切る。
『討伐です』
ブレスが四方から来たので、瞬移で軌道外に跳ぶ。
移動しながら遠距離には火弾を放ち、間合いに入ったワイバーンは国行で切る。火弾はユキが軌道を変え追撃し、ワイバーンを落とす。
『5体討伐です』
爪が3方から飛んできた。国行で爪を流す。返す刃で飛斬を放ち一匹を切断する。
『討伐です』
右腕から鎖分銅を出し、飛ばす。ワイバーンに当たった瞬間電撃を送る。落ちる。落ちたところで弐号機が薙刀で切断した。火弾を四方に飛ばす。全てユキが制御しているのがわかる。
『10匹討伐です』
残るワイバーンが逃げようとしていたので光漸で落としていく。
『4匹討伐です』
群れの討伐完了だ。この後、探知できた4つの群れを、いままでの技を試しながら討伐し地上に降りた。弐号機も続く。
地中から巨大なミミズ“ワーム”が口を開けて出てきた。壱号機、弐号機がそのまま入る大きさだ。その口に火弾を撃ち込みながら跳び上がる。口の射線外に瞬移で移動し、飛斬を5連撃放ちぶつ切りにする。弐号機は後ろに跳び火弾を撃ち続けていた。切れたその奥の地中で爆圧の衝撃が伝わった。
『討伐です』
10匹程度の討伐でワームの気配も消えたので、帰還することにした。
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