第37話 深謀遠慮 しんぼうえんりょ
深謀遠慮 しんぼうえんりょ
深く考えを巡らし、のちのちの遠い先のことまで見通した周到綿密な計画を立てること。また、その計画
ジンは赤い砂塵のマリオネット生産を振り返った。様々なクランのマリオネットを生産してきた。通常基礎構造の魔動回路に導かれ円柱のポットにミスリルが液状で流れ出し部品を成形し、人型に組み上げられる。
その後アタッカーの深層意識が繁栄され、得意な近接武器や今まで使用していた防具のイメージが実装されていく。ここまではほぼ透明だ。最後に二人の深層意識にある色に染まり、金属光沢を放ち終了する。
赤い砂塵の場合は違った。ポットに糸状のミスリルが溢れ出した。糸は紡ぎ合い織物へ変化した。織物は重なり合いマリオネットを成形していった。
あとで顕微観察したが、六つ目編みで織られているようだ。アタッカーの魔法は機体表面から増幅し発現させる。通常表面積を稼ぐため、成形時にその表面に細かい凹凸を付け、表面積を広げることが有効であることが最新の研究ではわかっている。
ジンの魔法回路は、表面積の拡大のため表面に細かく深いエンボス状になるように工夫されている。見た目金属調だが艶消しの外観だ。
糸が紡ぎ合った赤い砂塵のマリオネットはどれくらいの表面積が得られているのだろう。壱号機成形時にイブキとカグラもポットの前で終わるまで目を瞑り手を繋いで座っていた。プールの中の二人と同じ様に。あれも必要な儀式か何かだったのだろうか。
暴走ダンジョンから帰還した俺たちは、夕食をとった後、俺の小屋のベランダに集まり明日のアタックに関して話し合っていた。カグラが説明する。
『火口から入った内側は大きな空洞が続くんだ。火口付近に出没する魔物はタラスコンという地上型ドラゴンの1種だね。タラスコンは6本足で全長だいたい200m、火口の壁にへばりつき、壁をバンバン食べてるんだよ。サイクロプスのでかい版だよ。ヤモリにみたいに壁にへばりついているんだけど、マリオネットに気付いたら背の部分から光線を出して攻撃してくる。特に尻尾はぐにゃぐにゃ動いてどの位置も光線の射線に捉えることができるんだ』
『めんどくさいことにこのタラスコン含め、暴走ダンジョンの魔物は受けたダメージは火口内の濃い魔力を取り込み直ぐ回復してしまう。光線をさけながら火力を短時間に集中して魔石を抜かなきゃならないんだ』
『ゲンジもイブキもあの機動性であれば、光線はさけられると思うんだ。問題は火力なんだ。光漸も火弾も飛斬も強いけど、地表のワイバーンやワームみたいに軟らかくないんだ。ドラゴンなんで硬いんだ』
『弱点は裏側だけど、壁にへばりついてるんで狙いにくい。裏も弱いとはいえ、鱗で覆われている。魔石は首の部分なんだけど大きすぎて首を切り飛ばすなんてできないよ。明日は僕たちの火力がどれくらい通じるか、試してみて、サイクロプスと同じように単位時間当たりの火力がどうしても足りないときは撤退しようね』
『カグラ!タラちゃんの攻略はわかったけど、なにこの尻尾は私の体をまさぐってんねん。兄さんと姉さんの手前、討伐の話の手前、カグラの分析の手前、気にしないようにしてたけど、人前でまさぐりおって、兄さん砂塵の探知でわかりますよね、この人痴漢です!痴漢です!姉さん、ギルドの倫理委員会はいつでしょう、兄さん、か弱き可愛い処女の妹が痴漢されました。さあ、そのお怒りを爆発させるときです、タラちゃんに向けた新技を試すときです、どう・・・』
『大丈夫だよ。イブキ。僕は並列思考できること知ってるよね。どっちもちゃんとやってるよ。イブキが変化していないか心配だったんだ。ほら、今日もいっぱい魔力に晒されたから、イブキのことが心配なんだ』
『まあ、そうなの!ポッ。。ってなるかい!おみゃー八識あるやろがい!予知ばんばんしてくるやろがい!万歩譲ってそうならば、聞かんかい!あたしゃ耳あり口あり角まであるんじゃ!何回言わせんじゃー――!学べ、この結果を予知しろ、あたいの意識に同調しろ!』
『けど僕は、大事なイブキのことが本当に心配なんだ』
『まあ、カグラさんったらっ・・・って展開ないわい!だいたいな・・・・・・』
どこでも平常運転だ。
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