第35話 文質彬彬 ぶんしつひんぴん

 文質彬彬 ぶんしつひんぴん

 文明的なものと素朴なものとがうまく調和して備わっている様子。また、外見の美と実質とがよく調和している様子



 翌日、一人のマリオネット設計技師が紹介された。彼はカグラの紹介だ。


『俺はジンという。今回お前達のマリオネット製造を担当する。カグラとは前のクランで付き合いがあった。今回も担当できて光栄に思う。よろしくな』


『僕からも紹介するよ。ジンは信頼できる技師だよ。前のクランでもお世話になってたんだ。ジンはアタッカーとしての経験もあり、魔術回路の拡張性や実装適正の研究者として僕が知っている限りでは第一人者だよ。これから僕たちはどんどん奥に進むとしていろいろな経験をもつ彼が最適なんだ』


『ゲンジだ。俺のパートナーのユキ、妹のイブキだ』


『お初にお目にかかります。。。。あの、イブキ、イブキと申します』


変なモードのイブキがいた。


俺たちは巨大な球形ポットに複数の座席が繋がれた施設に案内された。


『じゃあ早速生産に取り掛かる。ゲンジとユキ、お前達はこのコクピットに入ってくれ。そこで魔力を流してくれ』


 コクピットに入った俺は呼吸を整え、瞑想を始める。何かに繋がっている感覚がある。そこに皆に根源を流したように最初は雫から少しずつ流す。蛇口を広げ、パイプを繋ぐと循環している感覚になる。巨大な海の中、その水流に身を任せる。しばらくすると循環が止まり、何かが閉じられた。目を開け、コクピットを出る。

 オペレーター室のジンが説明する。


『あそこに入っているのはお前達が持ってきたミスリルの半分だ。ミスリルをお前たちに同調させた。分からないかもしれないが、今はお前たちの魔力により変質し液体化している。ここのミスリルをプールに送る。そこでお前たちのイメージとマリオネットの基礎構造データを組み合わせ成型する』


 ジンは巨大な円柱の構造物が並ぶ施設に連れてきた。それぞれの構造物の奥には球形のポットが設置されていた。一番奥に巨大な水槽と円柱が見えた。


『お前達はあれだ』


『あの水槽にはさっきの液体のミスリルが入っている。それに睡眠導入剤とマリオネットの基礎構造が入った多量の魔動回路が溶かされている。お前たちはあの中に入り眠る。呼吸はできるはずだ。何処までの深層に至るかはそれぞれだが、お前たちの意識が更に溶け込み円柱の中でマリオネットが成形される。この作業は通常は1時間だが、お前達は一日を覚悟してくれ。』


 ジンの指示に従い服を全て脱ぎ水槽の端から飛び込む。呼吸は一度ミスリルが気道に入ると問題なくできた。ユキが見える。距離はあるが裸で座禅を組んでいるのが見える。呼吸を整え座禅を組む。瞑想に入り根源に身を浸した。

 気が付くと何も入っていない水槽で座禅を組んでいた。いつの間にか瞑想鍛錬のようにユキと手を繋いで座禅を組んでいた。ユキはまだ目を覚ましていない。ユキも・・・裸で座禅を・・・ユキが目を覚ます。ぼおっとしていたが、意識が覚醒したようだ。俺たちは見つめ合う。


『・・・・・』


 ユキは手を離し、腕で隠し、片側の侵入口から無言で逃げるように出て行った。俺も出た。

 円柱のポットには約40mくらいだろうか、赤い巨大なマリオネットが見える。どこか前世の俺を看取った山県昌重の甲冑に似ている。イブキがそのそばでジッと見ている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る