第31話 安居危思 あんきょきし
安居危思 あんきょきし
平和なときにでも、最悪な事態を想定して備えておくことが大切であるという戒めの言葉
イブキがユキに抱き着きながら俺に向かって話す。
『兄さん!今日で3日目ですよ、3日、わたしの清純な清く気高い精神世界に邪で真っ黒で触れるものみな色情させる禁断の液体を流し込むド変態スキルを持つ輩と過ごした時間ですよ!褒めて・・・』
『僕はそのスキルはもってないな』
『が――――! 例えやろがい!例え!、姉さんのように百は同時に智謀を駆け巡らせることができるようなお高貴でお美しいお方は、ダイレクトに言わんのじゃ!メタファーじゃ!メタファー!ありがたくも姉さんのモンモン背負わせていただいた第一舎弟の私は姉さんの一挙手、一頭足をコピーさせていただくんじゃ!』
『ぼくは5つ並行思考が可能で、百は無理だ』
『が――――!聞いてんのか!メタファーじゃ!例えじゃ!なに真面目に答えてんねん、セレブなお方はふんわりオブラートに包みこむ話術ちゅー上位のスキルをお持ちなんじゃ!私はそれを尊き姉さんから学んでるんじゃ!実戦でつかってるんじゃ!』
『さすがだね。コピー、イメージトレーニング、実戦、検証、このサイクル、イブキのことが益々好きになったよ』
『が――――!告白っすか告白!本人の親族の前で!さあ兄さん、愛しの妹が目の前で悪い狼に告られました。
“二度とこの家の敷居を跨ぐな”
“今から俺は殴る”
“イブキ、塩撒け!”
神々しいお言葉を言えるチャンスです!さあさあ、邪悪なこの世に現れた真っ黒な狼野郎に止めを刺してください!』
『え、僕はプロポーズしてないよ!』
『が――――!だから例えじゃ、例え!ボケるにしても方向が違うやろがい!でも・・なんかちょっぴり傷ついちゃった・・・ってなんでやねん!』
二人は息が合う。
俺は第四階層に潜っていた。デーモンを相手に魔法の研鑽を行っている。
ユキによるとデーモンは4つの手を持ち、それぞれ火、水、土、風の魔法を起こし、空中が得意という。
ボスエリアに立つ。文字が浮き上がりデーモンが出てくる。完全に顕在すると大体3mの黒い魔物だ。その後大きな翼を広げ飛ぶ。俺は瞬移で空中に跳ねながら突っ込む。奴は風魔法の渦巻きで俺の体勢を崩そうとするが、渦を避け駆けあがり上から頭から飛び込むように間合いに入る。
稲妻が来る。それを国行で切る。国行で相手の魔法が切れるようになった。更に踏み込み加速落下する。
やっと奴の目が追い付いた。しかし、既に俺の必殺の間合いの中だ。頭ごと両断する。
『右側の足の先に魔石が移動しています』
右側の手から炎が出てくるが、手ごと切断する。一旦奴を切断した際に減速したが、もう一弾砂塵で足場を作り空中で踏み込む。足から羽が生え逃げようとするが魔石を掴みとり剥がす。奴の体が黒い煙に変わる。
ここで30分程度ユキと話しながら待つ。また地面に文字が浮かび、デーモンが出た。
空中に飛ぶ。俺は鎖の分銅を放ち、デーモンを拘束し引きずり下ろした。“氷撃“ 鎖に俺の凍らすイメージが瞬時に伝い、デーモンが凍っていく、全身に炎を纏い対抗しようとするが直ぐに凍り付いた。それを引っ張り寄せた。
「ユキ、どういう状態だ」
『まだ死んでいません。動けないだけです。内部まで凍っています。デーモンからすれば、時間が止まったのと同じ感覚でしょう』
なるほど、芯まで凍らせると拘束できるのか。使える。名を付けよう。イブキの壊滅的な名付けセンスを想い出した。こんな時はユキだ。
「ユキ、今の凍らす技の名前をつけてくれ」
『・・・・。“氷葬”はいかがでしょう』
「いい名だ」
また30分後空中に飛んだデーモンに飛び込む。今度は奴の周囲を移動しながら砂塵でおれのダミーを残し、間合いに飛びこむ。
『右肩です』
一体目のダミーをまだ見ている奴の右肩を切り落とす。魔石も一緒に切った感触があった。
また30分待った。
デュラハンを倒してから発動できるようになった闇魔法も試す。文字の輪の黒い穴から奴が浮かび上がる。
俺の影が穴に重なっている。浮かび上がる傍から陰から触手を伸ばしデーモンを絡めていく。ゼロ距離で絡む俺の影の空間魔法の影響で、奴は魔法が封じられている。
芋虫のような状態で奴は転がっている。影の触手の先に火弾を纏わせ魔石を探知した腹に突き刺し魔石を抜く。
第四階層のデーモン、魔物部隊をいろいろな技を試しながら倒していく。初日の午後にはイブキ達が第四階層上がってきたので、俺は第三階層で一日中ユキと呼吸、瞑想の鍛錬を続ける。
今日も日が暮れてきたので施設に帰り、イブキ達とサロンで落ち合う。イブキとカグラはいつものようにじゃれ合う。本当に仲がいい。波長が合っている。明後日皆で第五階層に入ることを再確認し、俺たちは別れた。
自然と俺とユキ、イブキとカグラに分かれて帰った。明日イブキは学校に最後の挨拶に行くようだ。
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