第30話 和衷協同 わちゅうきょうどう

和衷協同 わちゅうきょうどう

心を合わせて協力して物事を行うこと



 今日から兄さん、姉さんと離れカグラと二人。遠隔意識共有ではなくカグラは傍にいる。カグラは八識だけではなく戦闘用スキルも持ち、最前線で生き残った者だ。

 このダンジョンレベルの魔物であれば魔力を無効化できるスキルを持っている。暗黙の共通認識として、私の判断で自由に動き、カグラが必要と思うサポートする、お互い許可や確認は必要ない。

 この階の魔物は魔法も判断も遅い。個対集団、個対個の戦闘基礎の改善を目指す。 

 私とカグラは兄さん姉さんと同じく、双方、或いは一方が繋げたいと思った時、意識は繋がる。ボックスも接続済みだ。私は戦闘に集中できる。


レベル:65

ステータス:攻撃力:86、守備力:21、身体活性:54、精神力:107、魔力:21

スキル:"覇気"φ→χ、"合気"φ→χ、"操気"π→σ、"根源力"ο→ρ、"呼吸"χ→Ψ、"瞑想"χ→Ψ、"意識"π→σ"武術"ω、"間合い"π→σ、"空間支配"α→τ、"物理支配"μ→τ


 カグラによると、既にスキルは兄さん同様統合され読めなくなっていると言う。感覚としてまだ兄さんに追いついてない。

 カグラを背負い瞬移で移動する。約100規模の群れを見つけた。私版の砂塵“水兄さん”の探知ではゴブリン、オーク、オーガ、指揮は上位のオーガだ。

 連携している部隊はなく孤立している。警戒の必要はない。

 カグラを100mの距離に降ろし突っ込む。気づいていない。手刀でゴブリン、オークの首を落とし、心臓を突く。遅い。

 魔物達は動いていないように見える。足場と体制は瞬移を意識せずとも勝手に発動する。兄さんが言っていたように、雷魔法を吸収してから魔法は各段に速くなった。

 意識と同時に発動できる。魔物の急所だけ突いていく。

 進行方向は指揮のオーガだ。目線だけこちらに動いてくるが捉えていない。心臓を突き魔石を掴みだす。

 1,2,3,4魔石が消えた。5,6,7オーガが煙になる。4秒、実際とカグラの回収速度誤差は4秒だ。

 昨日は6秒であったのでカグラも慣れてきた、そういうことか。

 残った魔物は薙刀の光漸で殲滅する。次だ。カグラを背負って城を目指す。

 兄さんはボスエリアで百弧と交戦し死ぬ一歩手前となった。姉さんから聞いた時、私の世界が止まった。兄さんあってこその世界だ。

 逆に兄さんを支えられる、そういう存在になることが私の望みだ。

 “砂塵”で私はミノタウルスの位置を掴んだ。私の砂塵は主に砂の代わりに水を使う。兄さんの砂塵のコピーだが砂ではなく水の粒を周囲に纏わせている。

 技への敬意をこめて名前をつけたほうがいいと兄さんがいうので“水兄さん”とした。いつも私を包み幸せを守ってくれる存在、その意味を込めて名付けた。

 兄さんはあきれていた。“水兄さん”は範囲の拡張と収縮が速い。目の前に巨大な氷のレンズを作り出し、気配を感じたあたりを拡大する。ミノタウルスを見つけた。黒だ、狩ろう。

 カグラを50mの距離に置く。奴は私とカグラを見て涎を垂らしている。突っ込む。 

 巨大な斧を振りかぶる最中にガントレットに火弾を纏い心臓を貫く。魔石を抜く。少し硬く感じた。いつもは手刀の形状で刺し、魔石を掴み抜く、これを人差し指で刺し、魔石を弾き出す、これを試した。

 結局肘の辺りまで差し込み指で弾くので一緒だった。手刀の方がいいのだろう。カグラを背負い城に向かう。カグラが離れたがらなかったので背負ったまま城に突っ込む。

 カグラは背中で私の瞬移の動き理解し次を読み、尻尾を私に巻き重心を合わせられる、全く問題ない。火弾と鉄火弾、無数の氷の円盤が舞う“水兄さん”で城門を破壊し魔物も同時に切り裂く。

 あらかた魔物がいなくなったところで、カグラを降ろす。愛刀、ミスリスの薙刀を取り出す。

 愛刀の名は“雪様”。ユキ姉さんの許しをもらい一字いただいた。ユキ姉さんといつも一緒にいたい、そう思い名付けた。“雪様”の光漸を私は振りぬく。連発する。輝く白い線は巨大な城を両断した。

 土魔法で埋まったボス部屋への道を作る。扉をけ破る。石造2体。今日も百弧に会えなかった。2体の石造がカーゴイルとして具現化する瞬間に胸を手刀で突き魔石を抜く。カグラと第四階層に向かった。

 第四階層で兄さんの気配を感じ、カグラを背負って全速移動した。“水兄さん”の感覚では私の進行方向とは反対に移動している。円を描くように移動する兄さんと私とゲート出口の距離が正三角形を描いた時、兄さんが捉えられなくなった。

 逃がした!

 ゲートから出たのがわかった。さすがに全速の瞬移がきつかったのか、カグラが少し疲れているように感じた。

 カグラを降ろし涼風を起こし、土魔法で座れる土台をつくり、火魔法で少し温めたお茶を渡した。10分後、状態を聞くと大丈夫とのことなので、第四階層の魔物を殲滅していく。

 ボスのデーモン戦はあっけない。カグラが示した場所から文字が浮かびデーモンが出てくるが、出てきた部位から薙刀“雪様”でみじん切りにした。なんでこうもボスたちは無抵抗の時間を敵に与えるのだろう。こうして三日が過ぎた。

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