第22話 危機一髪 ききいっぱつ

危機一髪 ききいっぱつ

ひとつ間違えば、非常な危険に陥ろうとする瀬戸際。髪の毛一本ほどのわずかな違いで、危険や困難に陥るかどうかのきわめて危ない瀬戸際



 朝の鍛錬をイブキと行った。瞑想でようやく根源の力を蛇口全開レベルまで繋げられるようになった。イブキの打ち込みは正確無比でもう型稽古は必要ないレベルだ。

 鍛錬の後、イブキとサロンで朝ごはんを食っているとユキが来た。ここに移ったのは本当のようだ。朝ごはんを一緒に食べる。

 ユキは俺たちの鍛錬に興味があり、明日から一緒に参加したいようだ。イブキを学校に送り出し、早速第三階層に向かう。鍛錬のため雷を纏いながら奥に移動するが、瞬移をつかわなくてもかなりの速度で移動できる。

 ユキは昨日残した核エリアとは別のポイントに誘導した。規模はでかい。城だ。これは城だ。


『ここが第三階層のボスが守る核エリアです。今回は殲滅ではなくボス討伐、第四階層への移動を優先でお願いします』


『ボスはカーゴイルでボス部屋に祭られた石造です。冒険者が入ると動き出します。このカーゴイルは背中の羽を用い飛びます。空中戦がこなせない者は挑むこともできません。石の表皮であらゆる魔法は通じません。通常、空中のカーゴイルを叩き落し、地上戦に持ち込み、物理で刻む、そういう倒し方になります』


『ゲンジさんは空中戦もでき、昨日のミスリル武具と魔法の混合技であれば十分通じるのではと判断し選択しました。注意点はブレスです。昨日経験したトロールとは違い、属性に応じたブレスです。確認されているのは炎、氷柱、竜巻です。更にボス戦において石造は通常1体、稀に2体設置されていることがあります』


 俺は空中の足場を瞬移し、高くそびえる城の屋根に移動した。見下ろすと、かなりの数の魔物が守っているのが見えた。1000以上か、殲滅は確かに効率悪い。ボス戦の後に考えてみよう。

 ユキから得た城の構造情報ではこの城の地下にカーゴイルは祭られている。そこには天守から祭壇に通じた抜け道が最も接敵しないルートだそうだ。その天守のオーガは決まった時間に自ら外に見回りに出る。それは今だ。早速探知で魔物のいないことを確認して天守に入り、空気の流れがある棚を傾けると開いた。


 中を探知で確認すると、螺旋階段で地下に繋がっているようだ。一気に降りる。そこにはローソクで照らされた石扉があった。


 呼吸を整え扉を開く。3体だ。2体のカーゴイルと狐?の石造が見えた。石造が動き出す、表面の石を割って赤と青のカーゴイル、白い狐が出た。


『逃げて!』


 ユキの声が聞こえたような気がした。

 扉が閉った。3体は同時に後ろに飛びのき、2体のカーゴイルが飛び上がる。上空から炎と氷のブレスが来た。ダミーを残し、俺も空中に跳ぶ。

 挟み込むように移動したカーゴイルは次のブレスを吐いた。更に上空に跳んだが、炎と氷のブレスが交わり爆発した、細かく砕けた氷が全方向に爆ぜ散る。俺は砂塵で氷をはじくが、突き抜けた一部が向かってくる。

 雷を全身に纏い近づく氷を稲妻を走らせ蒸発させたが3つ俺に突き刺さった。俺は砂塵で覆いながら氷の方に跳ぶ。

 雷飛斬を放ち、避けたところに鎖を飛ばす。目論見通り鎖の分銅には対処できなかった。当たった瞬間電撃を流す。カーゴイルは爆発した。

 爆発の光の裏から狐が突っ込んできた。俺の体から稲妻が走ったはずだが、吹っ飛ばされた。


“コンッ”


 背中の激しい痛みに振り返ると、一瞬狐の爪だけ見えた。吹っ飛ばされた先に炎のブレスが来ていた。瞬時に氷の壁を作るが、当たった瞬間爆発した。

 悪手だ。俺も一緒に吹っ飛びながら敵を目視したが、赤いカーゴイルしかいない。


“コンッ”


 俺が吹っ飛ぶ先で白狐は俺の背中を切り裂いた爪を振りかぶっていた。雷飛漸を放ちその反動と前に足場を作りそれを踏み込み反対に跳ぶ。跳んだ先のカーゴイルに鎖を放つ。分銅が食い込む。今度は氷弾を分銅の先から内部に打ち込む。赤いカーゴイルは内部から爆ぜた。


 狐の位置を掴めない。地上に降りた俺は、慎重に探索しながら、回復に努めるが、背中からの血は止まらない。回復薬も念のため飲む。朧気な目線の先に奥の祭壇前に座っている白狐が見えた。奴は優しく微笑んでいるように見えた。


“コンッ”


 一瞬で周りは白い空間に変わった。

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