第21話 磨励自彊 まれいじきょう

磨励自彊 まれいじきょう

大いに修行して、みずから努めはげむこと



『ゲンジさんのステータス、スキルはだいぶ変化しました。ステータスはなんとかこちらの数値化が可能でしたが、スキルの一部の数値は解読不能になりました。その意味するところも未解読です』


『今回新たに回復魔法、雷魔法、水魔法が発生しています。引き続き解析しますが、もう、スキルxの寄与が高いゲンジさんの通常スキルやステータス値はあまり意味がないかもしれません』


レベル:60

ステータス:攻撃力:86→94、守備力:21→24、身体活性:54→59、精神力:103→118、魔力:21→24

スキル:アイテムボックス:α, 身体強化:α, 剣術:α, 薙刀術:α, 投擲術:α, 火魔法:α, 土魔法:25→45, 耐魔法:10→29, 風魔法:8→32, 回復魔法:1→17, 雷魔法:1, 水魔法:1

スキルX:"覇気"χ→Ψ、"合気"χ→Ψ、"操気"σ→φ、"根源力"ρ→ω、"呼吸"Ψ→ω、"瞑想"Ψ→ω、"意識"σ→φ"武術"ω、"間合い"σ→φ、"空間支配"τ→χ、"物理支配"τ→κ


 とうとう壊れ始めたか。まあ、気にせず一つずつ確認していくしかないか。回復魔法から始める。癒すイメージで魔力を体に循環させると、体中の古傷が熱くなりその感覚がなくなった。


 ゲンジが多くの刃を左腕で受けてできた切り傷は消えており、顔を触るが吹き出ものがなくなっているようだ。内臓も熱くなっていたが、なんか病を患っていたのか。こわ、脳も熱くなっていたな・・・。こんな使い方なのだろうか。


 今度負傷したときに使ってみよう。交流戦で全身焼け焦げた時に掛けてくれた回復魔法は元の状態への再現だったが、自分で使えば自分の不調を治せるのか。


 雷魔法を試す。10m先の岩に稲妻を飛ばすイメージを作るが具現化しない。

 魔力の形態は掴んだ感覚はある。今度は両手を出してオーガが角の間で発生させた稲光をイメージする。

 両手の間に稲妻が一瞬走った。これか。この稲妻の維持時間を延ばす鍛錬を続ける。

 最初は1本の稲妻が一瞬発生する程度であったが、維持時間が延び、2本、3本と増えてくる。指と指の間に移し、慣れてくると指から掌、腕、上半身、下半身と全身に拡げる。なんとなく制御の方法が掴めた。


 この状態で瞬移してみると速度が段違いに速くなった気がする。火弾、砂塵、瞬移全て速度とパワーが各段にあがった。これが雷の力か。

 オーガは稲妻を飛ばしていたな。いずれできるようになるのか。今度はミスリル武器と併せてみた。鎖、刀、両方に雷が伝わる。


 鎖分銅を岩に飛ばし、着弾と同時に稲妻を送る。岩が破裂した。魔法がレジストされた状況でも物理の鎖を通じて魔法が送り込めるのは有利だ。

 この技を“電撃”と名付ける。


 しばらく、刀では最終的に飛斬に雷を乗せることができた。速度と威力が大幅に上がった。新技 “雷飛斬” 完成。今日の鍛錬に満足し、施設に帰る。



------------------



『 “俺を切れ” ってなんですかそれは? とうとうそっちの性癖に目覚めたんですか? なんちゅうスキルが芽生えたのですか、しかも妹にそれを頼むって、どういうプレイですか、兄さんなんか沸きましたか、寄生型の魔物が脳を攻撃中ですか、精神攻撃が継続中ですか、これはお注射の時間ですよ、ユキ姉さんの出番ですよ、知っていますか、ユキ姉さんは私が心配で心配でギルドからこの施設に移動されたんですよ、今日から一つ屋根の下です。あれ?、兄さん、知ってますね! なんで? 情報過疎の兄さんが? キャーー――! 今日夜這いですか、なんかのアリバイ工作ですか、ここに連れ込み3ピーですか、何なんですか、とにかく危険な虫が湧いているようです、病が進行中です、ユキ姉さんに見ていただきましょう、・・・“その必要はない” なんですか、7文字ですか、熟年爺降臨ですか、こんなに心配している妹に対して、7文字ですか、わ、わかりましたよ兄さん、ただし、“切れ“ とかはなしですよ、まず鎖で縛って、鞭で打っ、うが!』


 俺は今日も平常運転のイブキの口にお握りを突っ込んだ。コクコク頷いている。多分ユキから事情を聞いているのであろう。


『それならそうと説明してくださいよ、“俺を切れ”、“その必要はない”4+7で11ですか、いくら愛しの妹と赤い糸で繋がってても4+7はないでしょう、 “回復魔法を試したい“ この一言、この9文字でいいんですよ、11-9は3ですよ、3文字お得なんですよ、これは何かの鍛錬ですか、もっと俺を知ってほしいとかですか、えっ!私に甘えたいってことですか! とうとうこの時がきましたか、さあ兄さん愛しの私の胸に飛び込んでください、クッションは発達中ですが、全身全霊で受け止めますよ、全身でお世話いたしますよ、なにジト目なんですか、恥ずかしがらずに!さあ、さあ、そっちが来ないならこっちからですよ、お兄さっ、うが!』


 再びイブキにボックスから出したお握りを口に突っ込む。俺にとってお握りが最強の武器になりつつある。イブキはおとなしくお握りを味わっている。お握りを食べ終え、お茶を飲んだ妹は、


『そうそう、お兄さん、エスワットさんをご存じでしょうか、“知らん” はい、3文字頂戴しました、これは私の説明不足ですね、人のことは言えませんね。腰までの輝く銀髪の美少女ですよ、誰もが一目で目に焼き付く方ですよ、男性共の卑しい魂を浄化される聖女ですよ、しらばっくれてもだめですよ、証拠は挙がっていますからね、ユキ姉さんというパートナーがいながら、わたしという可愛い妹がいながら、なんちゅーことをしているんですか、言葉少なく乙女の魂をうばうスキルを何に使ってるんですか、ダンジョンに魔物を倒しに行っているんだと思ってましたよ、聖女の心を奪いに行ってるなんて思いもしなかったですよ、日ごろの鍛錬の成果ですか、なに白い歯をキラリと光らせてるんですか、なにが “もう大丈夫だ” ですか、なにが “君のことはおれが守る” ですか、合計14文字もくれてやってるんですか、なに夜が明けるまでお手て握って頭なでなでですか、愛しの私にもやってくれてないことをやってるんですか、ユキ姉さん知ってるんですか、浮気ですよ浮気!少女の心奪取罪ですよ、懲役10年はかたいですよ、相手は聖女ですよ無期懲役ですよ、“私はゲンジさんのモノです” って何ですか?さあさあ、自主しに行きましょう、情状酌量の余地なしです、むち打ちです、エスワットさんはご侯爵のご令嬢ですよ、なにモノにしてるんですか、一緒に帰りましょうって、バカでかい魔動車に拉致されそうになったんですからね、儚くか弱い私って鍛錬を積み重ね、重考した私のキャラは初日に打ち砕かれたんですからね、こんな荒くれ共の根城で弱肉強食を生き抜く私をしっている職員や冒険者の皆さんにエスワットさんが会ったとたんお里が割れるんですからね、兄さ・・・・・』


 だいたい判った。あの子は無事回復し、イブキと同じクラスか、よかった。俺からは情報もらしてないから大丈夫か、あの子が広めたんだから、責任ないよな。

 あの金は大丈夫だよな。あれから優に30分以上しゃべり続けたイブキを寝かせ、俺も眠った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る