第12話 雲外蒼天 うんがいそうてん

 雲外蒼天 うんがいそうてん

 試練を乗り越えていけば、素晴らしい結果が待っている



『第各階層にはボスという存在がおり、第一階層のボスはオーガです。このボスを倒すと第二階層に行けます。第二階層に痕跡を残ることができれば、次は二階層から入れます。今日はこの第一階層のオーガ1体の討伐を推奨させていただきます』


『オーガは全身を鉄のような筋肉で覆っている人型の魔物で、弱点は同じく心臓、首、脳です。また、角が1本のタイプは火魔法、二本は雷魔法、三本は風魔法を使います。オーガへの物理攻撃は難しく、武具に魔法を纏う等が必要です。魔法を纏えるミスリスの武具はまだですが、ゲンジさんの火弾であればオーガを貫けると判断しました』


 ダンジョン一階層のボスエリアは洞窟の奥にある。ボスエリアの洞窟は強力な核からの魔力が張り巡らされており入り口に結界が張られている。

 しかし、ボスが生存している場合は、ボスからの加算される魔力で洞窟内の魔力が飽和し洞窟外に溢れる。この状態は結界が破れ、入り口が開放されるらしい。そこに冒険者が入った場合、ボスの魔力が冒険者に集中し部屋全体の魔力不足になり、再び結界がかかる。ボスが冒険者を倒す、或いはボスが倒された場合は次のボスが沸くまで誰も入れなくなる。

 ボスエリア洞窟前は、ボス戦に挑む冒険者が溜まる場所でもあり、皆おとなしく順番を待っていた。周りは10名程度のクランで纏まっている。大抵ボス戦への緊張でクランごとに静かにしている。


『よう、あんたソロかい』


 一人の男が話しかけてきた。


『ソロでここまで来たのか』


「まあ、そうだ」


『あんたみたいな奴は久しぶりだな。若い奴らはクラン入って安全圏でレベリングしてもらう、これが常識となってきた。今の俺達も新しくリーダーの推薦でクランに入ったあのお嬢ちゃんのレベリング中だ。まったく。もしボス戦を生き残った場合、俺たちのクランにちょっと遊びにこないか。俺はクラン”サーティーン”のマサってもんだ』


「俺はゲンジだ。誘ってくれて悪いが、無理だな。組めるような奴なら、ここにソロでいるわけがない。声を掛けてくれたことには礼をいう」


『まあ、だろうな。けどクランは別として、なんかあったらお前に声をかけた奴がいたってことを思い出してくれ』


 そういってマサは手を差し出した。握手し、お嬢様がいるチームに戻った。

 俺の番になった。中に入る。オークよりでかい。角三本、当たりだ。オークの角の辺りに渦ができる。

 俺は飛びのいた。何かが俺を掠める。同時にオーガも俺も動いていた。奴は真っすぐ俺に向かってくる。俺は火弾5発を一気にオーガに撃った。

 数発当たったが急所は外した。奴の右腕とでかい剣が爆発で吹っ飛ぶが構わず突っ込んでくる。土魔法で足場を押し出しその勢いを乗せた剣を抜き撃った。

 十分引いたが剣は途中で折れた。横を抜けながら地面に砂を作り下げヤツの目を目掛け足で蹴り上げた。奴は目が開けられず、目をつぶりながらも俺のいたところにケリを入れてきたが、俺はもうそこにはいない。

 もう一度砂を蹴り上げたが、全て横に流された。風魔法か。お互い間合いから外れ、奴の風のナイフと火弾の打ち合いになる。火弾と風のナイフは触れ合うと双方消えるようだ。

 魔法の打ち合いになった中距離戦数では魔力が尽きず、魔法生成速度の速い俺が優勢だ。また俺の動きは瞬移で高速移動しており、奴は捉えられない。

 オーガは魔力が尽きたのか、こっちに踏み込んできた。しかし火弾をまともにくらい爆発した。終わりだ。

 風魔法は恐ろしい。目に見えない。おれが瞬移なしに挑んでいればやられていたかもしれない。


『レアの三本角相手に初見で風魔法を打ち破る、見事です。既に魔石とドロップは受け取りました。その奥に階段があります。その階段を降り、第二階層の出口ゲートから戻ってください』 


 第二階層に転送門が設置されてあった。そこを潜るといつものダンジョン入り口に戻った。これで次から第二階層から入れる。いつものように施設の外のシャワーを浴びて服を着替え出た。そこで施設の中からマサ達のチームが出できた。マサは俺を見て目で会釈した。俺も目で会釈を返す。

 まだ昼の時間のギルドは空いており、ユキの前には誰もいなかった。


『これで登竜門は抜けましたね。まずはゲンジさんのステータスです』


 レベル:22

 ステータス:攻撃力:31→34、守備力:8→9、身体活性:20→21、精神力:39→43、魔力:8→9

 スキル:アイテムボックス:80→85, 身体強化:22→28, 剣術:45→51, 薙刀術33→49, 投擲術:10→32, 火魔法:1→21, 土魔法:1→8, 耐魔法:1→3, 風魔法:1

 スキルX:"覇気"υ→φ、"合気"ε→φ、"操気"κ→π、"根源力"ι→ο、"呼吸"ο→χ、"瞑想"ο→χ、"意識"μ→π"武術"ψ→ω、"間合い"μ→π、"空間支配"α→α、"物理支配"α→μ

 

『現在の資金は1099万Gです。前回に回収いただいた武具とアイテムの査定はまだ終わっていません。もう少しお待ちください。それと、ゲンジさんに嬉しい知らせです。ミスリルでの武具が出来上がりました。剣二振りと鎖です。あなたのボックスから取り出せます。その太刀はミスリルインゴットを3本、小剣は2本、鎖は1本鋳つぶして造られています。それらの武具は成長します。あなたの魔力を受け、あなたに馴染み、あなたを表現します』


 俺の気は高ぶり、早速確かめたいが何とか我慢する。


「わかった、じゃあユキ、明後日な」





 今日も私は彼の背中を見送る。魔法スキルを吸収し、その原理を基にした技を創造している。規格外ということなのだろう。

 通常、火魔法Lv.1ではトーチ、Lv.2でファイヤーボール等、ランクに応じた術が身につく。これは各魔法の習熟度と魔力量の関係から導かれた最適な技が、このレベルではこの技、と常識となり固定化したものだ。

 ゲンジはその常識に全く囚われていない。ファイヤーボールを圧縮し1点に集まった火魔法のエネルギーを着弾と共に開放、爆発させる。それを自転させ、どんなものも貫通させる。

 本来の燃やす、とは全く違う使い方をしている。あのミスリス武具を手に入れた彼は更に成長するのだろう。

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